22日
金曜日
コンビショーネンサラダ
やおい作家のいい間違い。朝8時15分起床。外がかなり暗い。寒々とした、本格的な冬空である。朝食、スープスパゲッティ。K子にはジャガイモとキノコのバジル炒め。ロシア語でプーシキンのスペルを習うが、こんな名前を実際に書く機会は一生あるまい。中学生のころ、英語のテストで“ヘンリエッタ”という女性の名前(教科書の中の登場人物)のスペルを間違えて怒られたことがあるが、“こんな人名のスペル覚えたってなんになるのか”と非常に不満であった。
最近は『今朝の北朝鮮』になりつつあるテレ朝『スーパーモーニング』、今日は北朝鮮のコメディ番組というのを紹介していた。面白いのは、舞台劇なのだが正面にマイクが二本立っており、登場人物たちの会話はみな、マイク前で行われる。ピンマイクというようなものはないのであろう。以前は思想宣伝番組ばかりであったのが、最近は国民感情を和らげるためにコメディが盛んに放送されているという。日本でも戦時中、当初は喜劇は不真面目で非常時にふさわしくない、と弾圧されていたのが、戦局が不利になり、国民の生活状態がひどくなってくると、手のひらを返したように喜劇を演じるよう指導してきた、と古川ロッパが日記に書いている。政府が国策でコメディを作らせはじめたら、その国も長くないと見ていい。
昨日風俗嬢作家の菜摘ひかるがこの4日に死去したというニュースを知って驚いたところ(まだ29歳)であったが、今朝の新聞に高円宮殿下急逝の報。皇族で逆縁となる(父親は三笠宮崇仁親王)のは珍しいのではないか。菜摘ひかると並べては不敬かとも思うが、しかし、こちらも47歳という若さの突然死である。菜摘よりも年齢差がないだけに、人ごとじゃない。カナダ大使館で死んだ、と聞き、一瞬、アタマの中にサウスパークの『BLAME CANADA』のメロディーが響くが、あちらの大使とスカッシュ競技の最中に心臓発作(心室細動)で突然倒れて死去した、と報道にはある。心室細動は調べてみると、全身の状態が極度に悪化しているときに起こる症状であるとか。疲れや、それに関係するストレスが相当あったのではないか。
現代の皇族の人々というのは、調べてみるとこりゃ早死にもするわ、と納得するくらいの過密スケジュールである。アサヒ・コムで検索したら、この宮様は、当日も午前中は国際交流基金を訪れて挨拶をしており、この2週間でも、9日から12日まで日本スポーツマスターズや京都賞授賞式、障害者スポーツ大会のため神奈川県、京都府、高知県を回り、14日から16日には東京で高円宮杯全日本中学校英語弁論大会に出席。18、19日はノルディック・ジャパン環境会議で長野県へ出張……と、売れっ子タレントなみの忙しさである。まして日本サッカー協会の名誉総裁として、今年はWカップで体がいくつあっても足りなかったろう(自分でチームまで率いて、あちこちで親善試合をしていたらしい)。疲れていたんならスポーツなんぞせずに寝ころんで過ごせばいいにと思うが、皇族として他国の大使館でのプレイは、まあ公務みたいなもんだったと思われる。労災と認定してあげたいくらいのもんである。
昨日の日記に書いた『おれはカミカゼ』、ネット古書店で探してみたら揃いが売り出されているのを発見。さっそく注文する。日記と言えばこないだ、『サインはV』の主題歌を作曲した三沢郷がアメリカで役者になったと書いたが、さて、どんな役をやっているのかとちょっと調べてみたら、『トムとジェリー』のLDボックス用の吹き替え(この吹き替えはハナ&バーベラ側の意向でアメリカで行われた)に出演しているのがわかった。ブルドッグのスパイクの声が三沢郷なのである。活躍中、と言っていいものかどうか……。
石原さんのインタビューが載っている『アサヒ芸能』を買いに近くのコンビニへ行くが、置いてない。私のインタビュー(怪獣映画のヒロインについて)が載っている『FLASH』はあった。カコミ記事用にまとめているため、だいぶ舌足らずなものになってしまっている。原稿チェックくらいさせてくれればいいのに。
昼は冷や飯をレンジで温め、納豆飯。うまくてうまくて、二パック買ってきた納豆を全部食ってしまった。私の家では、親父がご飯茶碗を汚すのが嫌い、というやや潔癖性気味のところがあったため、子供時代、納豆は一切食べなかった。大人になってから、というより三十過ぎてから、その旨さに目覚めたのである。
同人誌翻訳続き。4時にタクシーで新宿へ出る。紀伊國屋前でエロの冒険者ことHさんと待ち合わせ。博多からの上京。連れだってビデオマーケットへと案内。案内と言っても、私がこの月末の静岡講演に使う、アメリカでの反ドラッグ教育用のフィルム集のビデオを買うので(教育委員会での講演にサムシングウィアードビデオを使うのも私くらいなものだろう)、おつきあい願ったのだが。お目当てのものは3階のモンドビデオ売場で見つかり、それから4階のアニメ売場でも少し買い物。今夜の食事の予定を、新しい携帯でK子に電話。初めて電話の用に使えて、喜んでいた。
その後、東口に戻り、喫茶『凡』で一時間ほど雑談。HさんはB級、Z級ホラーのDVDのレビューをずっとオタクアミーゴス会議室でやっており、あれを何とか本にまとめられないか、と算段する。50、60年代のホラーをずっと見続けていると、その背後に冷戦問題、特にアメリカという国がいかに重度の共産主義恐怖症に陥っていたかがわかるとHさん言う。いまのアメリカはその代わりとなる敵を国民に与えるのに一生懸命なのだな。おみやげで、アメリカでやったピンクレディのテレビ番組のビデオをいただく。
そこからHさん連れて移動、幡ヶ谷に。新宿からの京王線はあまり乗らないので、間違えて笹塚まで行ってしまって引き返す。『チャイナハウス』、金曜だけあってかなりの混み様。カウンター席の角にK子と三人でつく。混んでいるのはダブルブッキングがあったせいもあるようだ。マスター“まあ、こういうのウチではよくあるからネー”と、まるであわてず。大人的風格というのか、単に大雑把な性格なのか知らないけど。いつものジューシーなチャーチィー、金針菜とホタテの炒め物のまろやかな甘味、、菜の花と干しエビの炒め物のほろ苦さ、いずれも結構。続いてスッポンの煮込み。コラーゲンたっぷりのねっとりとした美味、謂うあたわず。そして季節まっさかりの酔蟹。まだ漬け込んでそんなに時間も立っていないと思われる物で、紹興酒の風味よりカニの風味がかっていて、さわやか。カニやエビをフランスでは“海のくだもの”と呼ぶというが、まさに身はそんな感じの風味。そして黄金色のミソと、真っ黒なペースト状になった脂肪のねっとりとした味わい。脳を直撃して正常な思考を麻痺させる。何かそんな成分を含んでいるのではないかと思える。おかわりを頼んでしまった。中毒である。今月中にもう一回、食べに来よう。Hさんはここで煙草を一服すいに通路へ出る。わかるわかる、一服やりたくなる満足感というのは。
〆はいつも通り、里麺。麺のシコシコ感がなんとも言えぬ。博多のうまいもの談義少し。酢モツと赤福(馬の杯を焼いて食うもの)のことなど。Hさん、スッポンと酔蟹を口にしたのは今日が生まれて初めてということだが、初体験で感激のうまさだったと言って、旺盛な食欲を示してくれた。こういうのはうれしい。10時過ぎ、改札までHさん送って、われわれはタクシーで帰宅。明日があるので早めに寝る。