裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

12日

火曜日

ボイジャーさまでも草津の湯でも

 宇宙の神秘はコリャ、わかりゃせぬよ、チョイナチョイナ。朝8時起床。朝食は肉だんごサンド、ポンカン。テレビでは北朝鮮遺骨問題でワイワイ。こないだ、報道関係者からちとシャレにならん話をいろいろ聞いた。やはり単純ではない、この問題。

 早川書房A氏から電話、図版用ブツで新たに撮りおろすものの算段。夕方に受け渡しと決める。さっそく書庫にもぐってアレコレ物色。探せばいろいろと出てくるのに半ば呆れる。ついでに散らばった本の整理なども。本の山があぶなっかしいほどの高さにフルヘッヘンドしているので、入ってあちこち移動するたびに体に触れてそれが崩れ、原稿書きかけで急いでいるとそのままにしてしまうので、すでにして足の踏み場のほとんどない、人外魔境的な状態になってしまっている。仕事場もさらに整理続ける。

 12時半、外出して、家にはなかった分の図版ブツを買う。豹柄のもので何か面白いものを、と探したら、中華雑貨屋に“豹柄の縄跳び(の縄)”というのがあった。こういうものがすぐ見つかるのが渋谷という街の便利なところだ。買って、昼は江戸一で回転寿司。それから銀行に立ち寄り、カード会社に振り込み。古書店などひやかして、帰宅。宝島社のI氏とお仕事関係のメールやりとり。Iさんと仕事するのは数年ぶりになるか。

 2時、東武ホテルで日本文芸社Hさん。美好沖野さん本について、どう企画を通したらいいかの打ち合わせ。企画会議でも、“唐沢さんがこれだけ推薦するのだから、(この著者が)面白いのだろうということはわかる。あとはウリだ”と言われているという。しかしながら、内容の面白さ以外にどうウリを作るか、というくらい、本にとって難しいことはない。取り上げる対象を派手にするしかないのだろうが、そうすると“何気ない日常から面白さをすくい上げる”という沖野さんの特長が薄れてしまう。ジレンマである。

 なんとかこの線で行きましょう、というところまでまとめて、帰宅。と学会の例会も近づいているので、その発表用の本も選定しないといけない。雑用に追われて、なかなか原稿にかかれぬ。初冬の陽はすぐ暮れて、6時。また東武ホテルで、今度は早川書房Aさんに図版ブツ渡し。ボーイ・ジョージ人形とか、アリのカレー風味缶詰とか、ディヴァインの母親が書いたディヴァインの伝記とか、アヤシゲなものをいろいろと渡す。

 その足で7時、恵比寿。阿部能丸さん、小椋事務所のKさんと、飲み会。お仕事と直接関係なく、業界のいろんな情報を交換しようという集まりである。阿部さんはうわの空の名古屋公演から帰ってきたばかり。『中年ジャンプ』の話題になる。うわの空の来年以降の公演予定などを聞く。うーん、凄い、どんどんメジャーになっていくではないか。そのすれすれのところで知っておいてホントによかったな、と思う。その反面、あまり多くの人が褒め出すのはクヤシイのだが、しかし甘いものにはアリがたかるのが正しい世の中。今の出版界なんかはどんなに甘いものを用意しても、アリも寄ってこないような状況だ。思い出したが、今朝うわの空のホームページを読んだら、島優子の芝居は益岡徹を念頭においてやってる、という話が出ていて、ああ、あの眉根を寄せた表情はアレ、益岡徹か、と想像して、大笑いした。しかし、女優で、益岡徹の演技をモデルにするとはいい根性である。美人が美人であることを捨てたときというのは確かに強い。まあ、『中年ジャンプ』の芝居の中でも言われていたように、微妙な線で美人の範疇、な人なのだが。

 Kさんからはいろいろ興味深い業界情報を聞く。金というのはしかし、あるところにはあって動くところでは動いているんだなあ、と呆れる。本というのはあれ、安く作れすぎるところがよくないんじゃないか、と思う。一冊一億円とかかる、ということになれば、売る方も徹底して売りにかかるだろう。あと、某監督の嫌われ話とか、某女優のプロダクションはあれ、イカンですよというような話。出てくる人名が、何かみんな、どこかで私の知人関係とリンクしていて、世界の狭さに呆れ合うことしきりである。Kさん、『トリビアの泉』の話を持ち出して、最近の番組の中ではダントツに面白い、こういうやり方があったかと感心した、と言う。あれ、私がスーパーバイザーなんですが、と言ったら驚いていた。これも世界の狭さの例だが、やはり最後のスタッフロールなんか見てないよなあ、みんな。

 9時半までそのような話。そこで別れて、フィン語終えたK子と渋谷で待ち合わせて、こないだ開店したというイタリア料理店に行く。実はKさんたちと話ながら食べていたのもイタリア居酒屋だった。まあ、イタリアンのハシゴもネタになるかと思って行く。カウンターのみの10席ほどの店内に、オーナーとシェフ、助手、それに女の子と、四人もスタッフがいるのが贅沢である。オーナーは梅さんという人で、船山の店長と知り合いらしい。しゃれたサングラスなどかけたおじさんだが、料理に対するこだわりはかなりあるらしい。しゃべる雰囲気などは長野の末廣庵の親父に似ている。小エビの唐揚げ、茄子のピザ風、車エビロースト、パスタなど。さっきKさんと二人で(阿部さんは飲まないので)ワインを二本空けたところに、さらに一本。もう最後はベロベロになる。

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