裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

30日

火曜日

トキソプラズマ雨がしたしる五月かな

 もうこの病気ダジャレもあとちょっとだから苦しくたっていいんだ。朝8時半、起床。セミ時雨すでにしきり。朝食、今朝からクレソンに変えて某社の“おいしい”青汁というものを飲み始めたが、いや、飲みにくいこと。なまじ“おいしい”だけにいやらしい味になっている。思えばキューサイの、“まずい”ものにどうこうという手を加えなかった決断は大したものなのだな、と思う。もともとの醜男、醜女が変におしゃれをしたり化粧をしたりすると余計見苦しくなるのと同じだろう。生(き)のままの醜さはかえって頼もしく思えたりするものだ。

 日記つけ。11時に掃除の人が来る。雑用がかたづいていないので、風呂は掃除が済んだ後とする。お好み焼き屋にゆうべ入って、髪などが油でベトベトしていて気持が悪いが午前中は我慢する。ネット連絡いくつか。と学会には奥平くん発見・保護というニュースを。美好沖野さんと共著の話、文芸社が興味を持って、急かしてきたというので予定を見て木曜に設定。早川書房から、新刊の内容の確認とスケジュールの件、これも返事。

 1時、掃除終わり、おばさん(Kさん)は仕事場の方の掃除に回る。シャワー浴びて、カレーライスで昼飯。昨日録音した朗読テープの時間を計る。ぴったり予定通りの30分に納まっていたのは我ながら会心であるが、ただA面B面と分けるとき、A面が14分、B面が16分なのがちとまずいかな、と思う。コピーサービス業者で、A面の方が長くなるようにと指示しているところがあるからだ。2時、ビジネスキングのサービス係の人、来宅。コピー機がベタのところ、かすれるので、トナーを点検してもらう。単純にトナーの汚れかと思ったらそうでもないらしく、あっちこっちを いろいろいじくって一時間弱、かかる。

 この数日、コミケ関係作業に追われている。自分のブースを出すというのがこんなに忙しいとは思わなかった。テープのコピーサービス、ネットで検索した各社の料金を比較。最初、思いこみで“都内の業者より地方の業者の方が安いだろう”と考え、名古屋だ博多だといったところの業者中心に調べた。ところが、コレハというところがなかったので、仕方なく都内の方ものぞいてみると、こちらの方がはるかに安くてサービスもいい。絞り込んだ数カ所に電話をかけ、最終的に見積もりを出してもらって決めたのは、なんと私の住居する区内の業者だった。歩いていける距離である。一番高い業者との値段差は三分の一。しかもラベル印刷・張り付け込み(高い方は別料金)である。おまけに、コピーにかかる日数が高い方は一週間から十日、決めた方は4日(休日除く)というスピーディさであった。やはり競争原理にさらされているところの業者の方が、万事サービスがいい。業者に限らないことではあるけれど。

 4時、時間割にてアスペクトの対談、村崎百郎氏と。いろいろと今回もネタ満載であったが、札幌清田区で起こった、77歳の姑による嫁の殺人事件の話が印象的だった。嫁が姑をずっといびり続けていて、姑が反撃に転じて殺人となった。この39歳の嫁、村崎さんによると“創作料理の得意な、いい嫁だということなんだが”と言うので、“いや、創作料理、ってのがポイントだな。創作、ってことは要するに、お袋の味、みたいな伝統料理をバカにしていたってことだよ。姑のつくるお煮染めだのキンピラだのを古くさい料理、と言って家族にも食べさせなかったんだと思う。そのウラミが日頃の折り合いの悪さにつながって、殺人にまでなったんじゃねえかな”と話す。あと、ワールドカップのあまりの盛り上がりで、終わったあとの韓国では祭の後の虚脱状態で、労働効率がすさまじく落ちているそうである。W杯効果もへったくれもない。日本もやはり落ちているらしいがそれほどでもないのは、早々と負けたために、さっさとヨソの国の応援に切り替えたファンが多かったからではないか、とされているという。そう言えば今朝だったか昨日だったかの読売朝刊で山崎正和が、日本のサポーターたちが日本チームばかりではなくイングランドやドイツを応援していたのは、日本が国際化社会になってきた証拠、などとノンキなことを言っていた。節操がないのが国際化なのかね。第一、日本のファンたちはイングランドやドイツという国を応援していたのではない。ベッカムだの、カーンだのといったスターにミーハーなファンがついてキャアキャア言っていただけの話である。

 6時まで鬼畜なことをえんえん話す。最近は村崎さんも体力が続かなくなったか、“まあ、この件はこれ以上話しても絶対活字にならないから”と、セーブするようになってきた。前の本(『社会派くんがいく!』)が出たとき、“この程度なら自分たちの酒飲みばなしの方が凄い”と感想を言っていた人たちがいたが、一般書籍になって流通するのに、どれだけわれわれの話が削られたか、ということを考慮してモノを言ってもらいたいと思う。当初はことに、ブレーキがまるで効いていなかった。

 家に帰り、電話など数件。石原さんから、K出版と縁を切ったとの電話。一筆とらせたそうである。それでOK。買い物に出かけ、夕食の用意。金沢のS氏(もう長男が大学生で、コミケに親子で上京するとのこと)からのハチバン冷麺に具(貝柱の煮たの、ミョウガ、ワカメ、茄子の煮たの、錦糸卵)をのせたもの、桜エビの湯豆腐、ゴーヤチャンプル。K子と、フランス製のモンドドキュメント『禁断の世界』を見ながら。いかにもヤラセっぽい女性用売春宿のシーンなど大笑い。缶ビール小2ツ、焼酎梅干し割り2ハイ。

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