裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

21日

日曜日

ポパイとポリープ

 直腸に? なんてこったい。朝4時ころ目が覚めてしまい、K子も同じくで、共に本を読んだりしていたら、起き出したのが9時近くになる。朝食はK子にトウモロコシとジャガイモの炒め物。私はいつもの。食事中に母から電話。支店営業で豪貴も苦しんでいるという話。とはいえまだ20代、苦しみも失敗も十分に自分の肥やしになる年齢だ。最近つくづく、自分に残された時間の少なさを思う。

 朝、日記をつけるがやけに長くなり、今日のうちのアップはあきらめて、明日、二日ぶん一度に出すことにする。外は相変わらずの暑さ。今日は特に凶暴である。エル ニーニョで冷夏、という予報は前回に続き今回もハズレか。

 〆切をやたら過ぎてから催促が来た週刊読書人の書評原稿、書き出す。書きながら作家と読者の関係を思う。作家というのはSとMでいけばSの役割で、まずとにかく読者を引きずり回し、いいようにもてあそばなければMの読者は満足させられない。しかし、その引きずり回し方を選ぶのは読者の方なのだ。ここらの呼吸を、こないだ二見のYさんと、“要するにSMプレイの女王様なんだよねえ”と話し合った。あの女王様というのは、Mに対し君臨しているように見えながら、実は常にMのご機嫌をとり、その要望をカンを働かせてキャッチして、お気にいるようにいじめてやらねばならない、極めて難しいサービス業なのだ。M役にいちいち指図を受けるようでは失格、常に一歩先を読んで、彼の望むことを前もってわかっていなくてはダメなのである。それをわからず、ただむやみに威張っているだけの女王様はすぐ読者に見放される。サービスの精神がなく、Mは奉仕をするもの、などと心得ている書き手は決してプロの物書きにはなれない。最近、ただ威張りたいだけの女王様が増えてきていて、M側は不満をかこちているのである。

 昼2時過ぎ、パックのご飯を温め、お中元のフグの干物でお茶漬け。『砂払』を読みながらちょっと横になったら二時間も爆睡(この言い方は好きではないが、本当に爆発的に寝入ってしまった)。目が覚めて、やや涼しくなったようなので買い物に出る。西武デパート地下で夕食の材料を買い込む。

 8時、食事の支度。ジンギスカン用のラム肉薄切り(200グラム360円)を、ニンジン1/3本、タマネギ1/4かけ、トマト半個、マッシュルームと共にフードプロセッサーにかけ、ガーリックソルト、ケチャップ、オイスターソース、ウスターソースそれぞれ少々で味付け。パイ皿に敷き、上にマッシュポテトを蓋のようにかぶせて、マヨネーズを×字型に絞って、オーブンで30分ほど焼く。“羊飼いのパイ”というやつである。それと、甘唐辛子と冷凍庫の中の鶏挽肉を煮て、冷やし中華のタレにぶちこみ、ソウメンを茹でて中華風冷やしソウメン。

 ビデオで『ザ・ガードマン 東京忍者部隊』を見る。映画化第二作(1966)だが、今回はガードマンは脇で、むしろ2億円の金塊を狙う悪人一味の、それぞれの思惑をからめて複雑に進行していく犯罪ものとして描き、脚本に不備は多々あるもののまず、成功している。犯罪から足を洗って惚れた女と暮らすために、その女の薦めで犯罪に足を踏み入れてしまう悲劇のギャングに成田三樹夫、組織での地位を成田に奪われるのを恐れて、手柄を横取りしようとする卑劣な役で戸浦六宏。この二人が真の主役。最初は明朗な旅館の若い女中役で出てきて、途中、戸浦に犯され、それ以降、そのショックで幽霊みたいな暗ぁい表情で、ただボーッと突っ立ってるだけになる明星雅子の役が凄くヘン。

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