15日
月曜日
胃炎高ドル安
胃が痛いよ(輸入業者)。朝8時まで寝る。天気よし。朝食、パンとコーヒー。リンゴ(昨日大久保で買ったもの)を切ったら、中が真っ茶色に変色していた。林美雄氏死去の報、58歳。私の高校時代は当然のことながら深夜放送が受験勉強の友で、クラスはだいたいニッポン放送オールナイトニッポン派とTBSのパックインミュージック派に別れていて、私はタモリを擁するオールナイトニッポン派の切込隊長的な立場だったが、それでもときどきこっそりとTBSも聞いており、野沢那智と白石冬美、小島一慶などと並んで、林美雄の声から東京の香りを雪深い北海道で受け取っていた。彼ら四人の歌っている“ヤバド、ヤバドヤバドバ、たまんないな〜”という歌『赤頭巾ちゃん気をつけろ』の録音テープ、まだ押入のどこかにあるはずだ、探してみよう。
ゲラチェックいくつか。母から電話。近くのビデオ屋で『打撃王』と『アフリカの女王』のビデオを見つけたそうで“これで当分は幸せでいられる”そうである。『アフリカの女王』の原作はフォーンブロワー・シリーズのC・S・フォレスターなのだが、母はこれは絶対サマセット・モームの何とかという短編がネタになっている、と言って譲らない。ほとんどキャサリン・ヘップバーンとハンフリー・ボガートしか出てこない映画だが、チョイ役で英国のいい演技派を使っていて、冒頭に出てきてすぐ死んでしまうヘップバーンの兄役がロバート・モーレー、ラストに出てくるドイツ軍戦艦の艦長が『博士の異常な愛情』のソ連大使役のピーター・ブル。母はビデオを送るからすぐ見て感想を聞かせろという。この二人を確認するために見てみるか。
昼はパックご飯にサバの味噌煮で。仕事していると窓の外にロープが下がり、清掃のお兄さんがガラス掃除をする。私をどういう仕事している人間と思っているだろうか。1時からSFマガジン原稿。S編集長から“いかがですか”と電話が入る。アガり予定を伝えて、SF大会の食事の確認。ステーキはかなりうまかったそうで、それが松の湯にはつかなかった、というと“エッ、それはひどい”と口走る。そこをとらえて“ネ、ひどいでしょう。こりゃね、××あたりが裏でこっそり手を回したんですぜ”とか意地悪くつつくと、困ったようにぐにゅぐにゅと口を濁す。あまり立場の弱い人をからかっちゃいけないですな。
6時、原稿完成、メール。7時過ぎに図版ブツをアルバイトさんが取りに来るというので、その間に、と思い、買い物に出る。表参道の銀行によるが6時過ぎで記帳等出来ず。azuma、ナチュラルハウス、紀ノ国屋と回って買い物。青山らしく外人のお姉ちゃんがおしゃれなノーブラ姿で歩いている。日本人がノーブラで歩くとだらしなく見えるのに、ガイジンはオシャレなのである。これはそもそも、胸の美というものがアチラの美の範疇のものだからである。美の基準を明治以降、西洋に合わせて規定したおかげで、その基準線ある以上、永遠に日本人は白人にコンプレックスを感じなくてはならなくなったのである。襟足や柳腰に美の基準のあった江戸時代の感覚はすでに失われて久しい。・・・・・・じゃあ、お前はノーブラを見られてうれしくないの か、と言われればそれはうれしいのであるが。
7時ギリギリに帰宅、S編集長から留守電が入っていて、これからバイトさんを向かわせるとのこと。夕食の支度をしながら待つ。8時半ころ、取りにきた。これから吉祥寺の井の頭こうすけ氏のところへ届ける。今朝と学会MLにアップした、次回トンデモ本大賞に関する提案の返答、会長や植木不等式氏から返ってくる。ほぼ賛成。
9時、K子帰ってきて、晩飯。鮎そうめんにチクワと青菜の煮物、モヤシと豚肉の蒸しもの。ビデオで『ライフ・オブ・ブライアン』。K子に見せて反応をうかがうがユダヤ人の地下組織たちに対する無茶苦茶な皮肉はウケたよう。もっとも、一番ウけたのはブライアン(グレアム・チャップマン)が全裸で窓を開けたとたん、大群衆が集まって歓声をあげているのに驚くシーンだったが。私が好きなのは地下組織の会議の模様のところ。
「同士諸君、ローマ人支配はわれわれから全てを奪ったのだ!」
「水道は? 水道はあいつらが敷いてくれたんだぞ」
「……ああ、水道はそうだな」
「道路も彼らが来てから舗装されて立派になった」
「・・・・・・道路もそうかもしれない」
「街灯もそうだな。昔は夜道は暗くて物騒で仕方なかった」
「病院も」
「学校もそうだよ」
「……わかったわかった。ローマ人支配はわれわれから、水道、道路、街灯、病院、学校を除いて全てを奪った! これでいいだろ!」