24日
水曜日
マルファン赤いきつねと緑のたぬき症候群
すいません、マルファン症候群で検索してここに来てしまった真面目な方、悪意も何もない単なるバカダジャレですので。朝、7時半起床。寝汗はさすがにかくがまず目覚め、さわやか。朝食、ピタパンと燻製ニシン、燻製卵、クレソン。果物は長野から到来の桃。まだ固いが、甘さとジューシーさは抜群。齧ると果汁がぼたぼたと垂れる。テレビでひさびさにSMAPの五人が揃って本日、ニューアルバム発売と出ていた。昨日、渋谷駅前でキャンペーンやっていたのは先行発売か?
メール通信、いろいろ。夏コミに例のゑびす秘宝館本も出すのだが、これが現在、伊奈浩太郎さんのところから平塚くんの事務所に百数十冊、届いているという。今回はグッズやペーパーなど雑物も多く、われわれで運ぶわけにもいかないので宅配搬入をしなければならぬ。これが前から“実に細かい規則があってメンド臭い”と聞いているので、ややおっくうであった。私は自分の個人ブースを出すのは今回が初めてであり、以前はずっとと学会ブースにへばりついていた。と学会はまあ、評論では大手なので、会誌は当然印刷所から直送、売れ残りは滅多に出ず、宅配搬入には無縁の身分だった。細かい作業には慣れていないのである。初めて飯を炊けと言われたお姫様みたいな心境になったが、まあ、そうも言ってられない。コミケットアピールの中の説明文を読んでみる。ほう、今はペリカン便が専属なのか。昔、フットワークが専属だった頃、これが“犬”と略称されていて、そのてきぱきとプロらしく働くお兄ちゃんたちの姿は好評で、彼らを主人公にしたやおい本まで出ていた(“犬本”と呼ばれていた)ものであった。フットワークが倒産したのはコミケに縁切りされたからだ、という噂は限りなく信憑性を持って聞こえたものだが、真相はどうなのだろう。ちなみにペリカン便のコミケ呼称は“鳥”である。“猫”や“人”は参入しないのか。
で、読んでみると、思ったほどややこしくもない。だがいくつか不明の点がある。配送票に書き込む“コミックマーケット○日”の○日というのは日付なのか、またはコミケ何日目、ということなのか。配送票はコミケ限定のものなのか、それは説明文にあるam/pmやポプラにはどこでも配備してあるものなのか。私はこういうときは“多分これでいいだろう”でどんどんものごとを進めてしまう(それであまりこれまでの人生、致命的な失敗もなかった)人間なのだが、さすがに今回はと、鳥の会社に電話して訊く。最初は受付のお姉さん、え、はあ、あの、コミケ……? という、世界の違うことを質問されているという感じでオドオドした感じだったが、途中からいきなり、いかにもオタク女声、という女性に代わり、“なんでも訊いてください”という感じでてきぱきと答える。コミケ搬送に関しては出来ればコンビニでなく、集配にコミケ運搬物であることを注げて渡してもらいたいこと、コミケ○日、のところには日付を書くこと、集配票は一般のものだが、その隣りに日替わりの色紙(三日目はピンク)を貼って、そこに団体名とブースナンバーを書く。その紙は個々で用意しろということ等を教わる。あまりに何でも明確に教えてくれるので、この姉ェさん、絶対に自分で同人誌売ってたことがあるな、と邪推する。それにしても、ピンクの用紙(B6)を、このためだけに一枚、用意しなくてはならぬということに悩む。一般 家庭にそういう色紙ってあるものか?
ところで、こういうことがあったので改めてコミケットアピール(コミケの重要通達事項申し継ぎ印刷物)を隅から隅まで読んだら、性的描写についての注意事項で、
(6)SM・スカトロといった変態描写については、エロチシズムを目的とし、ワイセツではないよう心がける。
という一項があって、思わず笑ってしまった。エロチシズムとワイセツの線引きというのはどこにあるのか。大体、スカトロでワイセツでないというのはどういうものなのか。もっとも、コミケという大イベント運営には、こういうことを細かに突っついて論じようなどという輩はバグでしかないだろう。この一文が入っている、ということが(上下さまざまなところに対して)大事。
昼は外に出て、どこかよさげなところもがなと思ったが、すでに2時で、ランチは終了のところ多く、『すき屋』の牛丼とキムチで安直にすます。食後、ドトールコーヒーで西川魯介『SMフェチスナッチャー2』読む。今朝、マンガ書庫でひさしぶりに抜き出してぱらぱら読んだら、昔(95年)、少年キャプテンに載っていて何故か好きだった『強襲ミドガルド蛇』が再々読くらいでもやっぱり面白く、ゆっくりと読もうと持ち出してきたのだった。ありとあらゆるコマにぶちこまれたオタク的雑知識とどうしようもないギャグがこちらの脳細胞を刺激する。
帰宅、廣済堂原稿。精神病のことでちょっと調べたいことがあり、手近にあった春日武彦・著『先生教えてシリーズ2・ノイローゼ うつ病・心身症』(テンタクル)を読む。調べたかったことはすぐわかり、その余のページをぱらぱら読んでいたら、“妄想着想”の症状説明に“突如として「自分は三島由紀夫の生まれ変わりである」などと確信し”とあり、それに続けて“しかも書いた小説は赤川次郎の亜流だったりします”とある。笑ってしまったが、考えてみればずいぶんと赤川次郎に失礼な書き方だ。この人は『顔面考』(紀伊國屋書店)でも、博覧強記にしてユニークな考察をしていたが、貸本ホラーをステロタイプな話ばかりで退屈、と切って捨てており、どうも底辺大衆文化はお嫌いであるらしい。
官能倶楽部ネットで堪能倶楽部の献本のことなど。グルメライターを欲しがっている編集部で(単に食い物の記事が好きな編集者の多い編集部でも)、読みたいというところがあればお送りするので私の方にご一報を。なお、睦月さんは官能倶楽部同人誌をコミケに送る際、白紙を貼ってその上からピンクの色鉛筆を塗ったそうな。これは盲点をついた方法、と感心。献本と言えば、今月末発売の志水さんとの対談集『トンデモ創世記』(扶桑社文庫、『トンデモ創世記2000』改題)が届いた。第三章の語り下ろし対談では、案外周辺関係にも歯に衣着せずに話している。児ポ法とか著作権など、昨今の話題についても意見表明しているので、興味のある方はそこだけでも読んでください。
台風近づいているとかで気圧乱調、やや眠くなったので横になり、一時間ほど熟睡する。病的な眠りとは違って、肉体が本当に眠りを欲している、という感じ。起き出して遅れているWeb現代、品田さんのくもちゅうフィギュア考。朝から何遍も、書き出しては気に食わず廃棄していたもの。6時までかけて、なんとか10枚、完成させる。それから買い物がてら青山へ。晩の食事は、母がお盆進行で忙しいだろうと、いろいろ作って送ってくれたのでいいのだが、酒類、調味料類を買い出し。重い荷物をウンコラサと抱えて帰る。
夕食、9時。札幌から送ってもらった大根と鶏肉の煮物、ロールキャベツ、山菜と鮭のアラの煮物など。それとご飯を炊いて、シソの大葉の刻んだのと、木の芽の山椒煮を混ぜ込み、握り飯にしたもの。いずれもわれわれ夫婦に合わせて作ってくれたか薄味であり(母の家庭の味はもう少し濃いめ)、うまい。NHK『その時歴史は動いた』で本能寺の変。光秀の謀反は突発的なものでなく、周囲の大名や公家たちとも気脈を通じた計画的なものであった、という説を、資料を基に検証。その動機が、旧体制の温存にあった、というのは別に新しい学説ではなく、司馬遼太郎などの言ってることと同じ。京の朝廷とも以前から信長謀殺をはかっていた、というのは、いかにもありそうなことと思われる。ただし、実際に本能寺の変があった直後の周辺大名の動きが、あまりに鈍いところがイマイチ。実際に謀議があったとすれば、細川藤孝や上杉景勝が信長死亡と同時に軍を動かさなかった(動かす準備をしていなかった)のが戦国大名として考えられない不手際だし、中国地方の毛利も、何があっても秀吉と和 解などせず、彼を釘付けにしていたはずではあるまいか。
開田さんの弟子のOくんや金沢のIさんのいる伝言板に、K子が乱入して傍若無人な発言をして暴れているようである。まことに申し訳ない(まあ、みなさんその暴れぶりを楽しんでいるようだが)。どんなもんかと思い、こっそりのぞいてみたら、なんと私が20日の日記で批判した青山智樹氏が書き込んでいる。酔っぱらっているとみえ、“一億くれれば俺の理想のSF大会をやってみせる”などとラチもないことを言っている。……あのねえ、理想の大会というのは参加者がさまざまな企画を自分で選んで組み合わせて楽しみ方を考え、それぞれにとって理想を満足させる大会のことなのですよ。主催者一人の理想にみんなが合わせる大会などというのは、ヒトラー主催のナチス党大会だけで十分ある。考え方も嗜好も雑多な参加者たち誰もが、本当に楽しめる、理想の大会に近づけるためには企画をバラエティに富ませ、充実させることが第一。そのためには、企画案と実行力を持ったゲストに、アゴアシ含めて十分な待遇を約束し、多彩な企画を準備させること。これしかない。主催者がペイを考えない会は必ずモメる、というのがイベントの原則。“SFを愛するものみんなが一般参加者として協力しあい”、などと変なボランティア精神を強要するから、後で不満や苦情が続出するのだ。