裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

8日

月曜日

ときに破傷風のように

 馬鹿馬鹿しい人生より馬鹿馬鹿しいダジャレがうれしい。人間には二通りあって、スッキリまとまったシャレを好むタイプと、いかにも苦しいダジャレを好むタイプがある。私の交友関係にはなぜか後者が圧倒的に多い。朝8時起床。3時間半睡眠にもかかわらず、まあ元気。脳内にまだ昨日のアドレナリンが分解されずに残っている感じ。こういう日は午後にがっくりオチる。朝食、トウモロコシ、サツマイモ、クレソンそれぞれ蒸して。冷コンソメ。果物は佐藤錦。最近はそこらのスーパーで買ったサクランボでも甘い々々。

 ロフト斎藤さんから昨日のお礼メール。昨日、ではない今朝、私が帰ったあたりからフィストファックコーナーになだれ込んでいったようだ。例のエロライター(私のファンだったとか)さんがまろんちゃんにアナル調教されて、いきなりのご使命だったので腸内洗浄をしていなかったらしく、出てきたうんこをラリってるまろんが客席に向けちぎってはなげ、ちぎってはなげという有様で、凄まじい状況になったとか。私はあそこで帰って、ラッキーだった。以前、アップリンクの佐川一政ライブで、私のトークの後で出たパフォーマンス女優さんが、洗面器と水鉄砲を用意したあたりで不安を感じ、佐藤寿保監督と逃げ出したら、後ろで満席の観客の異様な悲鳴があがったことがあった(女優さんが自分のゲロを水鉄砲に詰めて客席に乱射した)が、本能的にそういう危険を避ける感覚を有しているらしい。

 開田さんの同人誌原稿、書きあげたものを削りに削り、なんとか400字詰め原稿用紙17枚程度にする。メール。昼はチャーリーハウスで定食。まだ牛肉うま煮を復活させない。食って時間割。二見書房Yさん。一人、新しい編集さんを連れてくる。E社から移った人だそうで、ここで今日はまた後でE社と打ち合わせです、と言ったら大笑いしていた。例の書き下ろし小説、しきり直し。本格的に取り組むので、と、スケジュール予定を組む。ミステリや娯楽小説ならまだしも、純文となると時間をきちんととらないと。その他、いつものように業界や同業のうわさばなし。岩波の某書に私の本が引用されていた話だとか、最近の現代思想関係者のダメさ加減とか。Yくんは吉本隆明のところに押しかけていた人なので、最近の若い現代思想関係者などはゴミのようにしか見えないらしい。

 一旦帰宅、電話、メールなど整理。斎藤さんから電話、昨日(今朝)がかなりスゴかったので、例の深夜朗読会、ぜひやろうという話。宇多まろんに斎藤さんも感心したらしい。ベギラマと斎藤さんは同い年なのだが、“彼女にはどうやってもかなわないと思いました〜”と言うので、“かなってどうする”と答える。やはり現代において、ああいう人生送った子が、なまじな向上心持った子より同世代の尊敬を集めると見える。面白いような、困ったような。

 3時、また時間割。元E社のFくん(先日退社)から、引き継ぎの編集さんを紹介される。感じが川井豪山くんに似ている人である。Fくんと、これまた業界ばなし。姫野カオルコのこと、内田春菊のこと、彼女のところに一時いた美人編集(元ベネッセ)のMさんのこと。彼女と最後にあったのはまだ数年前だが、その間に結婚して離婚して再婚して、子供を作ったそうである。かなり忙しい数年であったようだ。Fくんに、今度移る出版社(聞いて笑う。せまいところで人がスライドゲームのように入れ替わり立ち替わりしている)で、以前から温めていた企画をぜひやりましょう、と言われる。ちょうどそれに使える原稿を書き上げたところなのでうれしい。

 帰宅、今度は立川流同人誌の仕事にかかるが、やはり体力限界、ストンとオチそうになる。背中もゴム板のようなので、急いで新宿のマッサージへ。ついてくれた女性マッサージ師さん、“今日は日本人客はカラサワさんがはじめてです”という。そう言えばロビー近辺に、髪を派手に結い上げた真っ赤なドレスの外人女性と、女物の和服をコートみたいに羽織ってご機嫌の黒人男性がいた。“なんか派手な人たちがここ一週間、毎日来てるんです”“普通の観光客じゃないよね、何してる人たち?”“音楽関係らしいです。NHKホールから迎えのバスとか来ていたようですから”“へえNHKから”“オップラというグループだとか言ってました”“オップラ? それ、オペラだよ。ワシントンオペラのメンバーじゃない?”“あ、オペラですか”というやりとり。セブンシーズのMさんから先週誘われた、ワシントンオペラの連中がここを気に入って通っているらしい。

 サウナも使ったが、今日のような暑さの中では失敗。体中が火照って、夜までノドが乾いて往生した。終わって駅まで歩き、小田急線下北沢。虎の子でK子と食事。次のUA!ライブラリーの打ち合わせなどする。鰺のバジルソース焼き、地鶏の寝後焼きなど。こないだも来ていた映画の照明の先輩後輩のホモチックな二人連れ、今日も来て仲良く酒を飲んでいた。11時帰宅、すぐにひっくり返って寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa