裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

26日

金曜日

あなたなんて

 朝8時起床。昨日小田急で買ったリゾットコロッケで朝飯。お受験がらみの殺人事件でワイドショー大喜び。薬局新聞一本。

 肩、相変わらず凝っているが、パソコンを叩いていると案外楽。ではナニが原因なのかいな。実家から料理がいろいろ届く。粕汁などは北海道ならではのものでうれしいが、シャケの塩焼、卵焼きなんてものまで届く。世の母親というものは、子供たちが常に家庭の味に飢えてないと不満なものらしい。

 昼飯、昨日作ったチャーハンで軽くすます。それからだだだ、とH書房『とても変なまんが』の、書き下ろし分原稿11枚。3時に喫茶店『時間割』にて、編集のAさんと打ち合わせ。文字使いに関して、校正部からかなり赤が入った原稿が戻ってきている。初歩的な誤字は恥ずかしいが、“エキゾチズム”を“エキゾチシズム”に、などという、どーでもいーじゃねーか的なものもある。Aさんとムダ話しばし。ユダヤに聞かれたらマズいようなことなど(笑)。私が能天気でなく“脳天気”を使うのは中学生のときハマっていた平井和正の影響、と言うと、Aさん「僕も電話をかけることを“架電”というんですけど、ある人に“それは筒井康隆が原稿で使っている語で、今はもうSFファンにしか通じない”と言われました」

『カラサワ堂怪書目録』3000部増刷。早い! ただしこの出版社、増刷分の印税は毎年4月と10月にまとめて支払うことになっているので、入金はだいぶ先。あと、光文社『怪体新書』7刷通知。もうそんなに行っていたか?

 夕食は実家からの粕汁、芋煮、卵焼きなどに、角煮、煮卵、ムツ粕漬などを大皿に並べ、卓袱料理風にして食べる。『おにいさまへ・・・・・・』続きLDで。ソロリティーに選ばれなかった新入生が、選ばれた子に“あなたなんて、いやらしい小説書いている作家の娘じゃないの!”とののしるシーンで女房と二人、大爆笑。われわれも娘をつくってエリート女子校入れて、“あなたなんて、オタクなエッセイ書いている作家の娘じゃないの!”とののしられさせたいものである。焼酎梅干し割2ハイ。

 以前のこの日記にも書いたが、私は原稿を書くときは原則としてテンション上げて書く派、である。書いているうちにアドレナリンがどんどん分泌されてきておうおうおう、とか言いながら書き進むのが理想である。書いていての快感がとにかくある。しかし、この方法でいくと、テンションが肉体的に上がらなくなったが最後、一枚も書けなくなる可能性がある。今日聞いた話では女流作家のKは徹底したテンション下げ派のようだ。それだから一日何十枚というノルマを淡々とこなせるし、書いた原稿にまず、ゲラ段階で手を入れるとか単行本にする時点で書き直すということもないという。誤字脱字もほとんどないとか。テンションを低く保っているから、書きながらチェックができるのだろう。テンション下げて原稿を書く技術も、そろそろマスターせねばならないトシかも知れない。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa