裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

17日

水曜日

やっと完成

 朝、G書房のHくん、新著『カラサワ堂怪書目録』の見本刷り持って来宅。紙質ぜいたくで、なかなか結構な造本である。イラストが唐沢なをき、帯及び別丁表紙の著者写真撮影がソルボンヌK子。一族総出、という感じですな。サイン会の打ち合わせなど。

 昼飯は茶漬けですませE社原稿、いよいよ最後の付記部分、昼1時から夜7時半まで、その間に喫茶店での取材仕事はさんで、ジャキジャキ書き進み、やっとアゲ。枚数的に言えば20数枚なんだが、なにしろ本数が47本。一本ごとにネタを変えて書くのが実に大変。Kくん7時に取りにきたのを喫茶店で待たせて書き、全部完成。本数確認して、おほーっ、と息をつく。Kくんの方がおほーっ、だったろうが。

 これで本年度の予定の本の原稿は全てアゲたことになる、と書くとここをのぞいてるF書房のYさんが目を剥くだろう。書きます々々(笑)。ともあれこれまでの今年の仕事、並べると1『トンデモ本1999』、2『B級学マンガ編』、3『快楽特許許可局』、4『世界の猟奇ショー』、5『トンデモ創世紀2000』、6『トンデモ怪書録』、7『ZORO−ZORO』、8『近未来馬鹿』、9『B級裏モノ探偵団』10『知的B級生活のススメ』、11『カラサワ堂怪書目録』、12『トンデモレディース本の世界(仮題)』、13『原子水母』、14『裏モノの神様』。
 ・・・・・・ううん、やはり後半にどっと固まってるな。

 1、9、10、12は共著、3は監訳(と言ってもほとんど訳したが)、5は対談集、6、13は旧著の文庫化、7、8は改訂新刊。だから、“カラサワは達成度の低い本を量産している”という批判をする人もいるが、そう書きなぐってはおらんのよ。この日記に毎日記載されているような、地道なお仕事の積み重ねの結果なのです。

 資料でワニの本『漢方薬は効かない』を読む。著者は左翼系らしいが、化学薬品は効かない派に比べると漢方は効かない派はいささか地味でカワイソウである。私は今月はじめ、秋の雑草の花粉による花粉症と思われるアレルギー性鼻炎に悩まされ、クシャミを連発していたが、そうだ、酒の後のむくみ抜きにいつものんでいた小青竜湯が切れていた、と思い出し、また買ってのみはじめたとたん、ウソのようにおさまった。合えば漢方もこのような達効をあらわすことがある。

 しかし、クシャミが連発するのは社会的には困ったことではあるが、案外快感ではある。クシャミというのはセックスの快感に最も近い感覚なのだそうで、オナニーを覚える前、コヨリを鼻につっこんでクシャミをするのが私のひそかな趣味だった。知り合いの某女性ライターは、小学6年のとき、裏庭に密生していたセイタカアワダチソウの中で遊んでいて、花粉でクシャミの百連発に見舞われ、しだいに頭がボーッとして、生まれて初めてのエクスタシーに達したという。それはセイタカアワダチソウではなくイカセタアワダチソウだなあ、というのは親父ギャグか。

 3時から1時間半ほど、喫茶店で日経ヘルスから取材受ける。この時期お定まりの風邪特集で、医者のセンセイたちに取材した話がどうもショボいので、読者の目を引けるような話を、と依頼され(だいたい医薬誌から私への依頼はそういう感じのものである)、風邪対策の裏ワザ、というような話をする。要は風邪というのはひきはじめたらもう終わりで、ひく前の徴候を察知した段階でクスリをガッとのんで治すのが秘訣、こういう徴候は人でそれぞれ違うから自分のソレをちゃんと覚えておかねばならない、例えば背中がゾクゾクするとか、肩が妙なこわばり方をするとか、変な寒気を腋の下に感じるとか、などと話す。ところがそういう話をしている最中に背中がゾクゾクし、肩がこわばり、寒気がしてくる。芸、神に入ったかなどと感心している場合ではない。取材終わってすぐに家で定番薬の麻黄附子細辛湯とアリナミンをガッとのみ、コトナキを得る。体力、落ちてるなあ。

 原稿ラストスパートのあたりで鶴岡法斎から電話。いったん切って、書き上げてからかけなおし、しばらく話す。共通でのぞいている、某女性編集者の日記掲示板の悪口。二十代でたかだか一晩徹夜だったとか休日出勤だったとかでつらいの泣きたいの言ってんじゃねえよ、出版業てのは体力仕事なんだよ、カッケ持ちがマラソン選手になれないのと同じで、そういうのはハナから適性がねえんだよ、やめっちまえよイヤならよう、楽な仕事がよけれあ風俗行け、フロで働け、などと。二人とも仕事アケで神経高ぶってるから、日栄の社員みたいな口調になる(笑)。

 学研6年の科学から次回内容打ち合わせの電話。学年誌なので、ここの連載も3月で終わり。今年、大きい連載が何本かなくなった。そろそろどこかで新連載を取らねばなあ。新聞の日曜版あたりでやりたいんだが、裏モノではダメか。

 今日もメシ作る時間なし、外食。待ち合わせて渋谷の沖縄料理屋。ソーキ骨、ミミガー、クープイリチィなど。オリオンビールと泡盛の古酒。トーフヨウを肴に43度の泡盛で気持ちよく酔った。このトーフヨウとか腐乳の食べ方の説明で、あるエッセイに“箸の先に歯クソほどつけて味わう”とあった、という話をしたらK子が世にもイヤ、てな顔をした。死体にわいたウジ、とかの話は大好きなくせに(笑)。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa