1日
月曜日
専念して食え
ゆうべなかなか寝つけず、ちくま学芸文庫『日本霊異記』(多田一臣校中)読んであかす。このちくま文庫版、現代語訳のセンスが学者らしくイモだが、解説でそれぞれの話が説話文学上、及び民俗学上どのような位置づけにあるのか、をいちいち指摘しているところが面白い。
9時半離床。雨がかなり強く降っている。ホテルクリオコート、10時チェックアウト。ゲラ原稿とワープロなど以外の荷物を宅急便で東京に送る。
このホテルの朝飯に失望していたので、どこか他所で食べようと思って街を歩くがいろいろと雑用に時間をとられ、食いゾコナイとなる。11時半に、天神の博多とんこつラーメン『一蘭』(24時間営業)で“朝飯”。
ここは創業者が、最もおいしくラーメンを食べてもらうには、食べることに専念してもらうことだ、と考えついたのだそうで、全ての席と席のあいだについたてを置いて“気が散らないように”し、カウンターの向こうも見えないように、赤いのれん幕を下げている。まず席につくと、記入用紙に“麺は固ゆで・やや固め・通常・やや柔らかめ・柔らかめのどれか”“スープはあっさり・ふつう・やや濃いめ・濃いめのどれか”“ニンニクの分量はどの程度がいいか”“入れるネギは青ネギか白ネギか”など七項目について記入し、し終わるとボタンを押して店員を呼ぶ。まるで落語の『ぜんざい公社』だ。
秘伝のトウガラシだれをぜひ試してもらいたいが、子供とわけて食べるので、辛いたれを入れられないお母さんのために、特別注文システム(子供に取り分けてからたれを注文できる)があるのでそれを利用しろ、というハリガミもある。たかだかラーメンでここまでシステマチックな方式を考案・採用するところとか、のれんに書いてある注意書きの“当店のなま麺はスープに入れると一秒単位で味が変わるから来たら連れのを待たずすぐ食え”とかいう文句に、創業者のファナティックな性格が見えていてオモシロイ。左右のついたてには他にもハリガミだらけで、当店の水はミネラル成分豊富な天然水であるとか、ゆで卵には栄養分の他に口の中をさっぱりさせる効果があるとか、とにかく店にあるもの全てにいちいち注釈がつくのも強迫神経症っぽくていい。
ラーメンじたいは確かにまことにうまかったが、少し気疲れした。・博多ラーメン一行知識 本場ではラーメンにメンタイコなど入れない。
博多駅の地下街をウロつくが面白そうな店なし。1時過ぎに福岡空港。東京の天候不良で、到着・発着がのきなみ後れている。出張族の親父どもが携帯で「しとうや」「なかけん」「しよっとたい」などと連絡とってる。15分後れ程度で発。売店で買った博多名物いわし寿司で機内で昼飯。空港の書店で買った神坂次郎『サムライたちの小遣帳』、森浩一『食の体験文化史』などを読んでるうちに1時間半で羽田着。福岡は近い。草津や長野よりずっと早いぞ。
帰ると〆切催促の電話バンバン。疲れているので全部無視。産経新聞から新著についてインタビュー依頼。こないだ朝日に載り、今回産経に載って、うん、これで左右制覇(笑)。
中野貴雄から“元気です〜”という電話。このHPを読んだ吉田チホたちから“中野さん、死ぬんですか?”と電話がかかってくるとか。“七年も会っていない友達からいきなり「糖尿病になったんだって?」と電話がきました”などと言っている。案外読まれているのね、このHP。糖尿のダルさというのが尋常でないことを知った、と言っていたが、例のマシンガン駄ジャレは変わらず。こっちも『宇宙人に糖尿があらわる』などとわけのわからんギャグを返す。
帰ってすぐ原稿を各編集部に送ろうとしたらジーザス・クライスト、@ニフティがハードのトラブルだとかで、まるで使えんではないか。何をやっておるのか。あきらめてオミヤゲの辛子メンタイ持って、女房と新宿ラブホテル街の行き着けの寿司屋で夕食。超満員。アワビ、赤貝など貝類絶妙。回りのホテルでは生き赤貝をみんな食べてるんだんべえなあ、とかいう親父ギャグはまあ、お約束で。