25日
木曜日
そんなあたしの
朝キャベツスープキャベツ入り。昨日届いた本の整理というか、拾い読み。国家地方警察大阪府本部鑑識課長黒田進著『犯罪の手口』(昭和26年刊)というのが、おっそろしく通俗な挿絵が百葉近く入っていて、なかなかいい味である。犯罪の手口のひとつに傷痍軍人があるのに大笑い。「同情詐欺」に属するそうだ。
昨日の新宿「小便横町」(思い出横町という名前は気取りすぎ)の火事の記事を読む。「かぶと」も「朝起」(“あさおき”ではなく“あさだち”)も全焼とか。街の生態には必ずあのような場所が必要なのだが、これで再開発とかでキレイになってしまうんだろうな。
昼は昨日の残りの煮物とイカの塩辛で冷飯。この塩辛、いつも来る掃除のおばさんに貰ったものだが、甘塩で噛みしめるとしみじみ風味があり、おいしい。食い終わって、ナンプレファンと創のゲラチェックをやり、ちょっと横になったら1時間ほど爆睡してしまう。宅配便のチャイムで目が覚める。M社『トンデモ本 女の世界』(結局こういうタイトルになった)見本刷り。編集者が勝手に手を入れすぎて問題になった稗田オンまゆらさんの原稿、確かにゴチャついた文章に見えるが、これが彼女の味なんで、直したら意味がなくなってしまう。それにしても今回は原稿のほとんどを植木不等式・立川談之助の両氏が執筆し、それがまた面白い。植木氏はサラリーマン、談之助は落語家、その二人がこうウマくてはわれわれプロパーのモノカキは困ってしまうがな。
6時、雑用片付けに新宿へ。銀行で家賃おろし、小田急三省堂で買い物。及川光博のヌード写真集が出ていたので買う。その悪趣味ナルシズム爆発の裸体は、さっぱり“実用に適さない”江角マキ子の芸術風裸体写真より正道を行っているのかもしれない。しかし裸体はいいが、添えられているポエムがまるでダメ。女学生の三文ポエムである。これなら昔のビニ本に添えられていたポエムの方が笑えるだけいいぞ。
「気分はブルー&センチュリー
チャーリー・ノーマンのブギウギをターンテーブルに乗せて。
黒いお皿が回っているのを見つめていたら、
電話のベルがなったよ。
7回で切れたから、いつものアイツ。
窓から風が吹き込んでくる。
変わらない日常への埋没。
変わらない愛の言葉、変わらない別れの言葉。
また7回なったベルを遠くで聞きながら、
昨日と同じ朝、そして昨日と同じ夜を待ち続けてる・・・・・・。
そんなあたしの、ウ・ン・コ」
・・・・・・高校生のとき、これに死ぬほど笑ってから、ポエムを読むといつも最後に、“そんなあたしのウ・ン・コ”とつけてみる習慣がついた。根岸の里の詫びずまいとかそれにつけても金の欲しさよではないが、どんなポエムにもちゃんと会うんだ、これ。
タクシーで帰宅。運ちゃん、世の中の乱れを憂い、日本という国のタガのゆるみを悲憤す。彼に言わせると、今の日本がダメになった原因はハッキリしているそうで、70年安保に鯛する企業の態度にあるという。その当時、一流企業に入社できた学生は安保紛争にも参加せず、ノンポリで就職活動にセイを出していた連中で、ものごとを突き詰めて考えようとせず、表面を糊塗してごまかすことで人生を渡ってきた。
「今トップに立っているのはそういう時期に入社した連中だからね。神奈川県警の不祥事、H2ロケットの打ち上げ失敗、東海村の臨界事故、みんなあの世代の連中がやらかしたことなんだよ」
彼の世界を見通す目によれば、しかし21世紀の日本は再び世界のトップに踊り出るそうで、それは二つの技術、液体窒素燃料の開発とロボット技術によるという。そもそもこの二つの研究でなぜ日本が世界に懸絶しているかというと、というところで無念にも目的地に到達し、21世紀のビジョンを聞き損ねた。
家で昨日の残りメシを炒めてチャーハンにし、冷凍する。7時半、いきつけの和食屋、『船山』。開田あやさんに、こないだの札幌の結婚式のドレスを女房が借りたお礼で、裕治さんと共にご馳走。毛ガニの丸茹で、三杯酢もなにもつけずそのまま味わうが、その甘味、愉絶快絶。あと生ガキ、さより刺身、くるみ入りかきあげなど。こういうものを食うと日本はいい国だ、と心から思ってしまう。