裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

28日

水曜日

掟アプリの逆サソリ

お〜っと、虫に混じってサソリを投入したッ!

※眼底検査 台本書き

ウツラウツラしながら夢を見た。
主人公の名はヨリコ。十七才のお下げ髪の女の子。
ヨリコはお屋敷につとめる女中である。田舎から出てきて4年、
野暮ったさは今も残っているが一生懸命働き、お屋敷の子供たちにも
なつかれ、旦那様奥様にも信頼を得ている。
やがて戦争が起り、お屋敷のみんなも夜逃げ同様に田舎へ引っ越す
ことになった。荷物を満載した木炭トラックに家族全員が乗り込むと
ヨリコの居場所がなく、彼女は仕方なく荷台の後ろにしがみつく
ようにぶら下がっていた。敵が迫ってくる中を必死にトラックは
走るが、なにしろ頼りない木炭エンジン、ときどきエンストを
起す。少しだけ荷物を減らせばヨリコも荷台の上に上がれるのだが
奥様も旦那様も、ぶら下がっているヨリコのことなど眼中に入れよう
ともせず、運転手を急かしている。運転手は
「もうこのエンジンでは駄目です。重量を減らさないと」
と言う。それを聞いて奥様がこともなげに言う。
「ヨリコ、お前お降り」
「でも奥様、ここで降りたら私は敵につかまります。殺されるかも
しれません」
「お前が降りなければうちの旦那様や子供たちが殺されるのだよ。
お前が降りるほかないじゃないか」
「でも私は死にたくありません」
「お前の気持ちなど関係ありませんよ。お前が降りる他ないと
言っているのです」
「奥様、それはあんまりです。私はお家のためにさんざ尽くして
まいりました。せめて荷物を私の代わりに捨ててくださいませんか」
「なんてことを言うんだい、大事なお家のものを捨てろだなんて、
奉公人の言うことですか」
「奉公も何もありません、私は死にたくないだけです。死にたくない
と言ってはいけませんか」
「奉公も何もないって、まあ、この子は何てことを言うんだろう、
いままでよくしてやった恩も忘れて」
「恩は忘れてはおりません、でも死にたくないです」
やりとりを続けている間も敵はどんどん迫ってくる。
それを遠目に見て、恐怖した家の坊やが言った。
「お母様、なんで逃げないの。敵が近くまで来ているよ」
「ヨリコがわがままを言うから逃げられないのですよ」
「わがままってどんななの」
「自分が車から降りずに、荷物の方を捨てろなどと言うのです」
「お母様、敵につかまったらおしまいですよ。荷物を捨てたら
いいじゃないの」
その言葉を聞いてヨリコは感動で胸が一杯になり、思わず叫ぶ。
「坊っちゃん!」
すると坊やはくりっとした無邪気な目をヨリコに向けて言った。
「この荷物をあげるから、一緒に車からお降り。いつもお前、
お家からいろんなものを盗んでいたじゃないか。全部あげるよ」

……ルベルの残酷小説か、モーパッサンの短編みたいな夢だった。

朝7時起床。
カットフルーツとって朝食代わり。
洗顔し、服を着替えてから日記つけなど。
今日は数ヶ月ぶりの目(角膜・眼底)の検査。

病院に出来るだけ時間きっちりに行くことを考慮して
予約時間から逆算、ぎりぎりに家を出る。
うまい具合にタクシーつかまらずあせるが、何とか予約受付
に間に合い心中ガッツポーズ。
ところが、窓口でだいぶ手間取る。
なぜかというと、呑気な老人たちに待合コーナーが占拠
されているからであるw。

私など予約番号票を渡されたらもう読書も携帯も何も
手に付かなくなり(携帯はもちろん使用許可ゾーンで)、
ひたすらその番号の呼び出しがないか、呼び出しモニターに
その番号が表示されないかと神経を張りつめているのだが、
あれ、さまでボケてはいそうにない元気な老人たち(病院に元気な
老人たちがいるというのも矛盾か)に見えるのに、あのノンビリ
ボンヤリぶりは何であるか、と(老人のように)憤りたく
なるのである。

いくら番号を呼ばれても反応せず仕方なく受付の子が名前で
呼ぶとやっと手を挙げる、いや、呼ばれてもなお反応しない
豪の者もいる、中にはそもそも待合場所にいない者がいる。
わかりきったことを何度も窓口に訊きにきて、おかげで病院側は
他の患者への対応が遅れる、そのくせ、男性に多いが
退職前は管理職だったのか、やたら態度や口調が横柄な
ヤツがいる、逆に婆さん族はそんなにしなくてもいいのに
何度も何度もくどくどと受付にお礼を述べ、列を作っている
後ろがイラついているのが露骨なのに気がつかない……。

まあ露悪的に描くとそんな情景がえんえんと続く。
しかし年齢から考えればもう、すぐにもこういう連中の同類に
なるのだから、イヤになる。

私は、両親が共働きだったから、祖父母の方にどちらかと
いうと接して育った。だから年寄りは好きだし、
親戚も年齢のいった方に主になついていた。
とはいえ、あの当時の年寄りと、今の年寄りの間には、
どこかに(うまく言えないが)本質的な違いがあるような
気がする。やはり、当時の年寄りは全員、戦争を体験し、
生き抜いてきた、という経験からくる“芯”みたいなものが
あったように思うのである。

やっとモニターに番号が出たと思ったら眼圧検査と
瞳孔拡張剤の点眼で、これが効き出すまで30分、また放置される。
やっと呼び出しがあってやれうれしやと診察室の前で待つが
なかなか私の番号にならず、あまつさえ飛ばされたりする。
私の1つ前の番号だった中年の女性が呼び出されてもおらず、
飛んで私になったが、イラつきのあまり帰ってしまったんじゃ
ないかと思ったほどであった。

診察はこれだけイラついた後で馬鹿馬鹿しいが1分かからずに終る。
結果は“きれいなもの”で、来年あたり、また心臓の検査入院を
したときについでに診てみましょう、で無罪放免。

母の室に直接帰り、昼食。イクラ飯に豚汁。
ふと思ったがイクラ飯の飯をバタ飯にしてみたらどうか。
クラッカーなどにはバタ塗った上にイクラを乗せるわけだし
バタタラコ飯は最高にうまいし……とはいえ、年齢と健康
考えるとなかなか出来ない実験である。
食事中、講談社から電話、印刷関係会社からメール、なかなか
あわただしい。

自室に帰り事務仕事、ちゃかちゃか。
エアコンのリモコンが効きづらくなり、電池を入れ替えると
今度は驚くくらい感度がよくなる。

こないだ訪ねた某社から企画書の催促、恐縮。
これも喫緊でやらぬとならぬ。
あと、以前出演したNHKBSの『私の1冊・日本の100冊』が
DVD化される運びとなった。

DVDタイトルは『私の1冊』。
“日本の100冊“がとれたのは再録を拒否なさった方が
いるようで全部で80冊になっていたため。
全10巻、分売可ということだったので、発売日が決まったら
読者のみなさんにお知らせしようと思っていたら、先日案内が来た。
12月1日発売だそうだ。
値段は……
「各巻 ¥31,500(税抜¥30,000)
10巻セット ¥262,500(税抜¥250,000)」
高ッ!
販売ルートを見てみたら、全国図書館、大学及び教育機関
視聴覚ライブラリーとなっていて、一般向け販売ではないようだ。
まあ、この番組はムックにもなるようなのでそっちを買って
いただければいいわけだが、DVDには私の料理の腕前もバッチリ
映っている。そこを見せたい!
さあ、お近くの図書館に購入要請を出そう!

原稿書き、そろそろ完成させねばならん台本。
ワンシーンかなりノって書く。
下ネタだけど。

夜食、鯛のぶつ切りが安く鍋物用に売っていたので
酒蒸しにする。あと、オクラおろし。
『フランケンシュタインの花嫁』を
また見てシーンの参考にする。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa