裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

22日

木曜日

ア、イヤ〜ン、メイデン

もだえる処女(親父ギャグ振興委員会)

※原稿書き 資料買い込み 演劇祭

6時ころから寝たり目が覚めたり。
ウツラウツラ状態で見た夢。
メキシコにルチャの取材に大勢でぞろぞろ出かける。
そしたら、ミスター珍がいて、まだ現役でプロレスをしていると
いうので大喜びでサインをしてもらう。

寝床で携帯メール見る。
仕事関係でいろいろ進展とか停滞とかの連絡あり。
あわてて飛び起きて連絡いろいろ。

12時までそういう連絡などにかかりきり、顔から身体から
脂ぎり、急いで入浴。
12時、母の室で昼食。カレーうどん、ミソにぎり一ヶ。
母、ワイドショーの南田洋子死去の報道を見ながら、
「南田洋子は結婚したときから人工肛門で、だから長門が浮気を
繰り返しても容認していたのよ」
と言う。ソースはいずこ、とネットをざっと回ってみたが見つからず。

訃報と言えば書き忘れていた、書き忘れていた。
脇役でいぶし銀の演技を見せていた浜田寅彦氏
15日死去、90歳。俳優座代表を現役で務めていた。

必殺シリーズの常連殺され役。悪代官を演じることもあったが、
悪徳商人役がやはりハマり役。表と裏で善悪二面を演じるのは、これは
舞台俳優ならではの腹芸で、見事というしかなかった。
田宮二郎版梅安の『必殺仕掛人』では、梅安とコンビの徳次郎。
原作の彦次郎にあたるのかな、と思っていたら中途で殺されてしまった。
一方、犯科帳シリーズでは吉右衛門鬼平の第一期シリーズで老密偵、
舟形の宗平を演じたのが最高によかった。
ああ、江戸の街にはこういう老人が本当にいただろうな、という顔を
していた。こうなると、演技ではない、もって生れた味、である。

特撮関係では忘れてはいけない、“頭は金入れで体は宇宙人……”の
名セリフでおなじみ、カネゴンこと金田金男のお父さん。
チョビひげのマンガチックな親父をコミカルに演じていた。

『日本のいちばん長い日』では眼鏡の三井侍従。原作ではこの三井侍従、
近眼故に、皇居を開放に来た田中静壱大将を反乱軍と勘違いするという
いいシーンがあるのだが、残念ながら映画ではカット。田中大将を演じた
石山健二郎との演技対決を見てみたかった気もする。

顔だけ見ればいわゆる悪相なのだが、その中にひょい、と
ワルになりきれない小市民の善人ぶりが見え隠れする、そんな
役者さんだった。渥美清が金田一を演じた『八つ墓村』では、
村の洞窟を観光スポットにしてひと儲けをたくらむ山師的な叔父。
一族の中の小悪党トリオ(他の二人は藤岡琢也と浜村純)の中で
最もリアリティがあった。

それにしても、ついぞかけ違って彼の舞台を一回も
観てなかったのは残念。2004年に俳優座が公演した
『十二人の怒れる男たち』では9号の老人役だったそうだ。
もっと若い頃なら3号のガンコ親父が適役だったかもしれない。

こういう味のある役者、まだまだ舞台にはいっぱいいると思う。
しかし、今の映画、テレビのキャスティングは殆ど大手プロダクションが
仕切り、癖のある顔や演技の人たちがほとんど出て来られない。
日本のドラマをつまらなくしているのは、テレビ、映画界の人が舞台を
観に来ない、という一事が原因のひとつなのではないかと思ってしまう。

私の世代は何とか、この浜田寅彦はじめ、三津田健、中村伸郎、
金子信雄、市原悦子、丹阿弥谷津子など、新劇出身の演技巧者
たちの芝居をリアルタイムで楽しめた。それだけでも、
早く生れてきてよかった、と思う。
冥福をお祈りする。

原稿4時半まで書き続け。
そろそろ来年のB社の単行本、これはまず語り降ろしてそのテープ
起しにチェック入れて作る予定なので、そのスケジュールを
空けねばならず。同じくA社の本のための取材日程も空けねば
ならず。

5時、バスで新宿、紀伊國屋書店でちょっと買い物(いや、
実はちょっとではなくかなり大量に買い物)し、小田急で下北沢。
『楽園』に直行、演劇祭『HAGEL.pro』の『罰と罪』。
なんと5部構成で、裁判員制度のもとで裁かれる異常殺人者の話、
そして独房の壁を隔てた女性と男性の服役囚の奇妙なコンタクト
を描く。きちんとミステリ劇風の謎解きが行われるのが意外!
いろいろ考えてくるものだなあ、と感心。
舞台監督かつ特別出演の岡っちが、
「カラサワ先生、こっちの席がオススメですよ」
と何度も言う。何かと思ったら、意外なサービスショットが
入り口入って左側の席からだけ見えるのであった。

終って、ハッシー、本多さんと審査員打ち合わせ。
それから岡っち、琴ちゃんといくどんが今日まで生ビール190円
サービスデーなので行っていろいろ来月の公演のことなど話す。
店に行く途中で路上ライブで人がワイワイ集まっていて、
何かと思ったらアキバ系のアイドルが歌っていた。
T田くんがいて、何かと思ったら仕事で、そのアイドルではなく
MCをパンダのぬいぐるみ着てやっている子がいて、その
マネージャーと友達で、マネージャーなる方に名刺をいただく。
サンミュージックであった。
「大変ですねえ」
と思わず声が出る。

T田くんも後から加わって、話いろいろ盛り上がる。
彼が帰ったあと、今日の出演者の鈴木ちえさんと根岸晴子さん
が合流、さらに盛り上がり。ちえさんとハルさんの対照的な
コンビを見て、つい、女性漫才くませたくなるのは昔の虎の縞。

気がついたら終電時間逃しており、始発までどこかで明かす
というみんなにつきあって、駅前の『坐』。
グチとか大風呂敷とかいろいろダベって、5時半まで
眠りもせずに話まくっていた。
若いことかな。

6時過ぎ帰宅、まあいつも二度寝する時間さ、と思いベッドへ。
そのまま失神状態。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa