裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

23日

金曜日

山寺の押尾さんが

♪マリワナ吸いたしマリワナはなし、女をヒルズに連れ込んで……。

※体調不良(自業自得w)

朝、いや、昼11時半起床。
さすがにぐったり。
日曜はどうせまた午前様になる予定なのに、年齢を
少しは考えろ、と自分ツッコミで苦笑。

このごろ、毎日まず訃報日記を書いているような気がするが、
ジョセフ・ワイズマン19日に死去。
http://www.jiji.com/jc/a?g=afp_cul&k=20091022023866a
中野貴雄監督のブログで知った。
91歳。監督も言っていたがまだ生きていたのか。
『007/ドクター・ノオ』のDVDオーディオ・コメンタリーで
インタビューされてなかったので、とっくに亡くなったとばかり
思っていた。

まあ、本人自身あの手の話や役柄にまったく興味がない、と常々言って
いたので出演を断わったのかもしれない。
どう演じていいかわからず、ウルスラ・アンドレスのコメンタリーに
よれば撮影時カチカチに上がりまくっていたそうだ。
もっとも、あの無表情演技はそのおかげでうまれたのかもしれない。
『ドクター・ノオ』について“B級の亜流チャーリー・チャン映画”
とミもフタもない感想を述べているが、そのチャーリー・チャンを
持ち役にしていた俳優、ワーナー・オーランドは、もう1つの持ち役と
して、中国人の大犯罪者、フー・マンチューを演じており、この
フー・マンチューがドクター・ノオのモデルである。

彼の映画の出演歴を見ると、西部劇からスリラー、コメディ、時代物と
何でもござれで役を選んでない。
あくまで本業は舞台、と心得ていたようで、映画やテレビへの出演は
アルバイトだったのだろう。とはいえ、本人の意思とは裏腹に
興味のなかったドクター・ノオ役がの一生の代表作と見なされるばかりか、
後のこの手の映画の悪役造形にも大きく影響を与えた。

ドイツ人と中国人の混血(ノオという名前は英国人の考える中国人風
名前の設定である)、放射能のプロ、ただしその実験中の事故で両手を
失い義手をつけているという、コンプレックス剥き出しの設定は、
“悪役には出身の不幸もしくは身体的欠陥が不可欠”というそれ以降の
アクション・スリラー映画の基本的な流れを作った。
映画中盤を過ぎるまで画面には登場せず、秘密基地内ではスピーカー
を通しての声のみで部下に命令を下す。その声の底響きのする
素晴らしさはさすが、舞台で鍛えただけのことはある、と思わせた。

そういう舞台経験を最もいかしたのが、『ゴッドファーザー』の
影響で作られたマフィア映画『バラキ』における最初のアメリン・
マフィア統一を果たした“ボスの中のボス”、マランツァーノ役。
アル・カポネすらガキ扱いするこの貫録十分の大ボスは、また
マフィアとはいえ大インテリで、尊敬する祖国イタリアの偉人、
ジュリアス・シーザーと自分を重ね合わせ、それが高じてシーザー
に関する文献をコレクションし、しかもラテン語でそれらを
読めたという驚くべき人物である。

シェイクスピア劇役者であるワイズマンにこの役はまさに
ハマり役で、その日常から死に際まで全てが芝居がかった
ナルシストのこの親分をギャグ一歩手前の大芝居(決してギャグに
しないところがさすが)で怪演し、主演のバラキ(チャールズ・
ブロンソン)以上の強烈な印象を残した。

『探偵物語』ではカーク・ダグラス、『革命児サパタ』ではマーロン・
ブランドと、主役を無惨に殺す役が持ち役みたいになって
いたが、どちらもワイズマンの卓越した演技力があってこそ、
観客も納得したんだろう。そのワイズマンが悪役を演じることで、
観客は
「ひょっとしてボンドも殺されちまうんじゃないか?」
という不安を抱くことになる。
まさにドクター・ノオはワイズマンのキャスティングで成功した
と言えるだろう。

90という年齢に不足はないだろうが、“あの時代”を象徴する
人がまた一人、いなくなった。黙祷。

腹が減って、母の室での昼食待ちかねる感じ。
明太卵、キャベツの漬物、銀ダラの味噌漬け。

来月に入っていたイレギュラー仕事一本、連絡あって
延びるという通知。延びるのはいいが一年後(笑)。
まあ、不景気ではあっても一年や二年でつぶれるクライアント
ではないからいいものの。

原稿、不捗。
体力のせいか。
ベッドでひっくり返り、読書。
古山敏幸『黒澤明の作劇術』。最初の方に出てくるエピソード。
「私の友人の一人は、ドイツまでワールドカップ観戦に赴いた。
かの国では鉄道を使って、競技場の各ゲートまで観客を運ぶ。
実に合理的かつ効率的に数万単位の観衆を一箇所に運ぶ
手際のよさに感嘆しきりだったが、それはナチス時代の、
多数のユダヤ人を強制収容所に搬送するシステムの転用である
ことに気づいて、慄然としたという」

調べていたら訃報また。
テレビドラマ『アダムスのお化け一家』のあのテーマ曲を
作曲したビック・ミジー氏死去。93歳。
『アダムスのお化け一家』ったって若い人たちは知らないだろうが
映画『アダムズ・ファミリー』はそのリメイクなのだ。
映画版はコメディなのにまるで笑えなかった記憶があるが、
本家のテーマをちゃんと使っているのが感心だった。
http://www.youtube.com/watch?v=o7nV6ZfbRuc&feature=player_embedded
↑今はウルトラマンを使っているホンダ・オデッセイのCM。
もちろん、テーマ曲はミジー氏のを使っている。
http://www.youtube.com/watch?v=vVDJvrBFDDc&feature=player_embedded
↑こっちがオリジナル。

原稿、なんとか一くぎり(あまりに短い一くぎりだが)
ついて時間をみたらもう8時。夕食の準備して、
資料ビデオ見ながら酒。
豆油肉とホタテ入りオクラおろし。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa