裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

10日

土曜日

空気正常機

しらけて気まずくなったその場の空気をいっぺんで正常な状態に!

朝ベッドからなかなか起きられず。
10時の朝食の約束にやっと起きだす。
これは血糖値を下げる薬と、心拍数の上昇を抑える薬を服用しているのが
原因である。そろそろ利尿剤以外は抜いてもらいたいのだが、
医者というのは用心の固まりだから、なかなか抜いてくれないだろうな。

朝食、茄子、青唐辛子、ピーマンの酒粕漬け、ホウレンソウと目玉焼。
ご飯一膳。酒粕の野菜漬けは生野菜を食べる方法としてもっと
広められるはず。

日記つけ、入浴、読書などで時間があっと言う間に過ぎていく。
2時15分、家を出て丸ノ内線で銀座。
教文館ビルで山口A二郎さんに誘われた『藤城清治展』観覧。
小人の影絵で子供のときからおなじみの藤城氏の、近年の仕事中心に
(古いものでも70年代後半)まとめた作品展。
教文館書店ビルは古い昭和の香りを銀座の真ん中に残した内部の
作りがなかなか結構。入っている店舗も“キリスト教関係用具専門店”とか、
実にそれっぽい。もっとも、ハリー・ポッターは平積み、ナルニア国は
フロアの名称にまでなっており、それほど気にしてないらしい。

9階貸ホールでの展示会。まず入ると朝青龍の切り絵があり(ファンで
あるとのこと)、これは優勝記念、それからマイケル・ジャクソンの
ウィアー・ザ・ワールドの切り絵群が追悼として飾られて、まさに
藤城氏が85歳で”現役“である証明になっている。
廣島の原爆ドームや、長崎の軍艦島の切り絵もすばらしく、中でも
軍艦島は、デッサンも展示してあったがデッサン以上にやはり切り絵が
凄まじい迫力があり、しかもリアルを超えたパワーがある。

昔ながらの小人や猫、カエルのケロヨンなどもそういう絵の中に
さりげなくまぎれこんでいたりして、ノスタルジックを超えて現在の
中にまだ彼らが生きているという証が、ちょっと感動的だった。

もっとも、スタッフとして参加している山口さんがいろいろと
感動的ならざる(笑)製作の裏話や展示の苦労も語ってくれて、それも
また非常にオモシロイ。

展示で異色なのは、東郷健編集のゲイ雑誌『The GAY』の表紙絵が
いくつか飾られていること。東郷健は実は藤城氏とは従兄弟にあたるという。
そのつながりで引き受けたそうだが、他の藤城作品とは明らかに異る
モダンでエキセントリックなデザインが非常に興味深い。
これまでの藤城清治作品集では多分、扱ってなかったろうこれらの
作品を見られただけで今回の展示は来た価値があった。

それにしても、藤城氏の年譜を見て驚く。40代まで、テレビや
演劇に関わっていろいろ活動をしてきてはいる(ケロヨンを
やったのが42のとき)が、50代から現在の85までの記録の
方が、毎年の個展やイベントの数が多く、創作歴は充実している
のである。この活動の衰えのなさは驚異的。

同フロアの喫茶店で山口さんと少し話す。
藤城氏の倉庫にあるケロヨン関係の資料のこと、木馬座の演劇活動
のこと、それから発展して来年のルナの9月公演のことなど。

分かれて銀座線で京橋、そこでちょっと用事すませ、
赤坂見附で丸ノ内線に乗り換え新宿、電車が新宿止まりだったので
そこからタクシーで帰宅。

メールちょっとやりとり。
イベント用の映像資料について。
さらに、ようやく快楽亭のサイトにカルト寄席の日時が告知されて
“詳細がわかった”ので(困ったモンである。問い合わせても電話に
出たためしがない)、それに合わせての打ち合わせスケジュールの
時間変更措置など。

9時半、作業終えて夜食。
サントクに国産豚タンがあったのでそれを茹でて酢味噌で。
あと、オクラおろしにサラダ用エビを刻み混ぜて。
このあいだのトンデモ本大賞の楽屋裏記録ビデオ(開田さん撮影)
を見る。緊張と爆笑のないまぜになった実に楽しそうな情景。
これがイベントの醍醐味という感じの記録。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa