裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

27日

土曜日

天童説

宇宙は天童よしみを中心に動いているのだ。

※部屋整理 アニドウ上映会 ルナティック忘年会

今朝の夢。
エドガー・フーヴァー(FBI長官)の伝記映画、なんと
ジョン・ウェイン主演。ところが、ウェインは同じ映画に二役で
出ており、あの体格とご面相で二役は無理なんじゃないの、と
思う。

朝9時半起床、昨日ほど寒くはなし。
朝食、例の如くバナナリンゴジュース。
ファンのYさんから恒例のバンペイユ(晩白柚)が届いている。
朝刊ももう薄くなった年末仕様。
テレビ番組も今年一年を振り返る、というようなものばかり。
大掃除、買い出しなど、残された時間をいかに予定立てて
有効に使うかの競争みたいなもの。
子供の頃はこういう年末の雰囲気が好きで好きで、
なをきと“年末が3ヶ月くらいあればいいのに”と
話しあっていた。

日記つけ、年賀状の宛先のための名刺整理など。
あと、組み立てた本棚に積み上げていた本を収めにかかるが、
まだ内股が痛んで、なかなかはかどらず。
昼は夕べの手羽元煮の汁をご飯にかけて犬めし。
汁はその全てが煮こごりと化してプルンプルンで、
それを温めたご飯にかけると、チュルチュルという感じで溶けて
いく。こういう、コラーゲンを見るとそれだけで嬉しくなって
しまうのはなぜか?

K田くんに連絡。コミケのビデオ記録係をやってもらう
ことになっているのだが、なにぶん初めてなのでチケット
受け渡しなどについてうまく伝わらない。

夕方、なぜか息苦しくなり、ベッドに横になってしばらく休む。
心臓がどうこう、というわけではないが、胸がバクバクして
息が切れる。疲れがピークなのかもしれない。

その後、片づけ続ける。
来年のB社書き下ろし本のための資料、どこでどう読むか考え、
やはりトイレ読書が一番はかどるだろうと、全部をトイレに
運び込む。事務所にちょっと寄ろうかと思うが、時間を考えると
今日は無理。いったん着かけたコートをまた脱ぐ。

アニドウ上映会、今夜は亡くなった角ちゃん追悼のために
出かけよう。腹ごしらえに、母に貰った鴨のスモークを薄く切って
マスタードを塗ったパンにはさみ、鴨パストラミ・サンド。
ドリンクはドクター・ペッパー。

で、中野芸能小劇場に言ってみたら、何と大入り満員。
和田誠氏や辻真先氏などの姿も。植木不等式氏の姿が見えたので
隣に座って、雑談いろいろ。
やがてなみきたかしが壇上で挨拶。あえて角ちゃんのことは
触れず、今日のメイン上映の
『花(スタア)の進軍』という東映映画(1950年)について。
「アニメの上映会を長年やってきて、アニメじゃない実写で一番
客が入るというのはくやしい」
と話す。

これは東映が、太泉映画、東横映画時代に作られたレビュー映画や
歌謡映画の、歌のシーンをダイジェストしたもの。
構成には『月光仮面』などの小林恒夫があたっている。
デパートの楽譜売り場で、客たちが、たまたまそこの売り場に
いた三木鶏郎(“冗談音楽”の)に曲を紹介してもらう、という
設定である。川田晴久、益田喜頓、美空ひばり、古川ロッパ、
水ノ江滝子、暁テル子などはまあ歌ってアタリマエだが、
何の映画のシーンか、山村聡までが舞台で唄っていたのには驚く
(吹き替えかもしれないが)。
途中で時代劇までがインサートされ、市川歌右衛門、片岡千恵蔵
まで出てくるが、さすがにこの両御大は歌っていなかった。
東宝のイメージが強い三船敏郎まで出てきて、これは歌でなく、
高峰美枝子との純情なラブシーンを見せてくれる。
若き日の三木のり平のアチャラカ演技が見られたのも収穫。
ロッパの尻取り歌(歌詞の同じ言葉で歌をどんどんつないで行き、
最後は『ヘイヘイブギ』の“ヘイ! ヘイ!”から“へい、御退屈
さま”でオトす)は、ぐるーぷえびせんの“尻取りアニメ”みたいだ
と思い、片山雅博さんがそれに言及するかと思ったがしなかった。

植木さんに一番ウケていたのは、フリッツ・フレーリングの
『天国よいとこ(Clean Pastures)』(37)に
登場してきた、口を開けっぱなしでダアダア言っている黒人。
http://www.youtube.com/watch?v=pXesaVzjdoI
このキャラクターは当時の他の作品にもやたら登場する。
http://www.youtube.com/watch?v=UaPfbzKLU1w
↑『SWING WEDDING』(37)

他のキャラクターは、キャブ・キャロウェイやファッツ・ウォーラー、
ルイ・アームストロングなどなので、この人物にも当然モデルが
いるはずなのだがわからず。帰りになみきに訊いてみたが
やはりわからないとの答。

実はこの人物が誰だかは、30年前にアニドウの上映会で、
このテのアニメをまとめてみたときから無茶苦茶気になっていたので
あった。しかし、その当時は全く調べるアテがなく、あきらめていた。
……しかし、ネット時代というのは凄い。帰宅してから
あっちこっちの海外サイトを調べ回ったら、なんとあっさり
US版のウィキペディアで、あのキャラクターのモデルが
ステッピン・フェチット(Stepin Fetchit)という黒人俳優であることを
突き止められた。
http://www.youtube.com/watch?v=f69GdiSZ-NA

ステッピン・フェチットというのは“step and fetch it”を縮めた芸名で、
本名はなんとリンカーン・セオドア・モンロー・アンドリュー・ペリー。
冗談みたいな名前である。
俳優としてハリウッドで最も初期に売れた黒人の一人だそうだが、
間抜けなニグロというイメージをカリカチュアライズして広めた
張本人として、批判もかなりされたようである。
しかし、映画で大人気になり、億万長者になったのに、すぐ浪費して
破産宣告を受けたりしていたところをみると、カリカチュアライズした
というよりご本人がそういう性格だったような……。
晩年はムスリムに改宗して、モハメド・アリなどと親交があったとか。
30年近く前からのつかえがやっととれた。
死んでもいい。

終って、植木さんと金竜門。
うわさ話などいろいろ。
今日はお客さん少なく、お父さん所在なげにテレビで『肉体の門』
など見ていた。中村獅童が牛を引っ張ってきたので、おお、
鈴木清順版の『肉体の門』なみに屠殺シーンがあるか、と
思ったが、テレビでそんなこと出来るわけもなく、
次の場面ではもう、解体されてすきやきになっていた。

そこから、阿佐谷。
ルナの忘年会に参加するためだったが、到着したらすでに
阿佐谷ロフト終ったところ。
そのあと、別の店での二次会から参加。
ルナのタニマチの一人であるWさんと私が同い年であることが
わかって愕然。

乾ちゃん、麻衣夢、琴重ちゃんなどとワイワイやるが、
別席にいたTディレクター(こないだのルナティック映画祭で
ハッシー主演の映画を撮った人。テレ東時代劇などの演出も)
と話が盛り上がり、いろいろ共同で仕事しよう、と握手や抱擁を交わすが、
要するに二人ともこの時点では大ヨッパだったわけで、何を話したかは
ほとんど覚えていない。
タクシーで帰宅、メールチェックなどして2時半、就寝。

*『花の進軍』、ステッピン・フェチット、Tディレクターと。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa