4日
木曜日
ツモる話もありましょうが
麻雀の思い出はこの際措いておいて。
※出版企画打ち合わせ NHKラジオ打ち合わせ 文藝春秋社原稿
昨日かなり飲んだのに目覚め快適、二日酔い微塵もなし、
さすが熊の胆酒の効験あらたか、か?
マドもKトシューも、やはり翌日の効果に驚いたらしい。
9時半、母の室で朝食、バナナジュース、トマトスープ、
柿の柔らかくなったのをスプーンですくって。
ニュースで松阪市のショッピングセンターの水道受水槽の中に
飛び降り自殺の男性死体が一ヶ月も漬かりっぱなしだった
という事件のことを報ずる。
ネットの一部で騒がれていた例の事件である。
母が悲鳴を上げていた。
『憲兵とバラバラ死美人』の発端部分を思い出す。
それより驚いたのは、天野哲夫氏の死去の報が
写真入りで載っていたこと。
一般人も『家畜人ヤプー』の作者に興味があるのか。
30年前、東京に出て初めて行った古書展が新宿の伊勢丹古書市。
そこで初めて注文したのが石森章太郎の『劇画家畜人ヤプー』。
目録が誤植で『劇画家畜トヤプー』となっており、事務手続きの
ためその書名で注文してくれと言われたのを覚えている。
それ以来、文字では“ヤプー”と書いても頭の中では“トヤプー”
と発音しているのである。
沼正三の小説の方は、高校時代に札幌の四丁目プラザの地下の
古書店で手に入れて、ヘンテコな小説だなあ、と思いながら
読んでいた。まさかその作者・沼正三を名乗る本人、天野哲夫氏と
20年後にお会いすることになるとは思ってもいなかった。
佐川一政氏の会でお会いして、その後も何回も飲み会、食事会で
お話させていただき、行った店では天野氏が私のことを
「非常に特殊な感覚を持った若き書き手で……」
と紹介してくれ、ヤプー書いた人に特殊と言われるとは、と
心の中で苦笑したのを覚えている。
目に非常に特長があり、あそこまで輝きのない、底なし沼みたいな
目をした老人というのを見たことがなかった。
殺人者である佐川氏の方がまだ、人間らしい目をしていた。
虚無、というのはああいう目を言うのだろうと思ったことだった。
ただし、天野氏が本当に沼正三だったか、というとやや疑問だった。
いただいた著書の文体とあまりにヤプーとは懸隔があった。
主としてのストーリィを天野氏が組み立て、それを他の人が
文章にしていったのではないか、と想像したが、なかなかそこまで
踏み込んでは質問できず、そのままであったのが悔やまれる。
結局、真相を語られぬままにイースに旅立たれてしまったか。
享年82。ご冥福をお祈りする。
筋金入りのマゾヒストということだったが、
外見は背筋のぴんと延びた、非常にカッコいい老人であった。
日記つけ、文藝春秋社原稿書き出す。
すでに4日、〆切を過ぎている勘定。
担当者(女性)の、済まなさそうな催促FAX申し訳なし。
まあ、2000文字(400字詰め5枚)程度なので
2時間もあれば書き上がるだろう、と思い書き出したが、
ネタを並べただけでオチへの収斂力が弱いことに書いていて
気がつき、いっぺん原稿を個々のネタ状態に完全にバラし、
再構成を行う。
そんなこんなで原稿、自宅ではアガらず。
昼は豚肉と小松菜の炒め物とけんちん汁で弁当、
自宅を出て、渋谷へ。
マンション下の喫茶ベラミで某社打ち合わせ。
以前講談社で一緒に仕事したOさんがつないでくれた
出版の企画。O氏、局長F氏、編集Mさん。
こっちが以前渡した資料を元に、二つほど具体的に
出版の話を進める。
それはそうと、この会社の出版リストを見たら、
ちょうど今、どこに持ち込もうかと思っていた企画と同じジャンル
のものがいくつか出ており、へえと思って、
「あ、こういうの出されているんですね……実はこういう企画が
あるんですがどうでしょう?」
とフってみたら、
「ああ、いいですねえ。今、そういうの受けますよ!」
と言ってくれる。大いに盛り上がり、向うの方から
こうしてほしい、こういう風なものを出してほしい、と
具体的な指示もあり、
「シリーズ化前提で」
ということで、ほぼ企画、通ってしまった。
棚から何とやら、躍り上がりたくなる。
事務所に戻り、オノとスケジュール打ち合わせ。
『世界一』、やっと台本があがってきた。
拡張版なのでやたら長い。
誰だかわからない人物から、天野氏死去に驚いた、という
メール。ハテ誰だろうと思っていたら、追伸来て、
久しぶりの黒宮雲厳くんとわかった。
ネットを仕事場で開いたら、何と高野宏一氏死去の報あり。
何ということ。年末に訃報が続くということはよく言われるが、
一日のうちに二件も訃報を日記に記さねばならんとは。
まさに『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』。
さまざまな事情も重なり、高野氏はあれだけの仕事を
された方なのに、その業績の記録を語り残したものが
ほとんどない。円谷英二直伝のその“絵”は、現在から見ると
クラシカルなものとはいえ(そこが私のような者にとっては
非常に落ち着き、たまらないのだが)、ずっしりとした
重みがあった。冥福を祈る気持より、今は地団駄を踏みたい
気持の方が強いのが正直なところである。
6時、再びベラミ。
『トーキング・ウィズ・松尾堂』出演打ち合わせ。
ディレクターS氏と構成作家のT女史。
しかし松尾貴史さんもフル回転の忙しさだな。
1時間ほど内容について話し、事務所にもどって、
今度こそ、という感じで文春原稿、仕上げる。
何とか形になった。急いで編集Kさんにメールする。
折り返しという感じで面白かったというメールが来て、ホッと。
自宅に戻り、サントクで買い物。
留守中にK子が台所をさっぱりときれいにしてくれていて
気分よし。茄子とキャベツの炒め物、豆腐の汁などで
酒と夕食。
DVDでアウター・リミッツ『二次元の世界へ』(THE BORDERLAND)
見る。現在だと別の意味にとられそうな邦題である。
冒頭に交霊術のインチキをあばくデバンキングシーンあり。
そのデバンキングをやったのが、異次元(二次元?)の
研究をしている科学者夫婦で、その交霊会を主宰した電力会社の
社長(息子を事故で亡くして、その息子に会うことだけを念願に
している)に、霊媒なんかより私たちの研究に金を出してください、
と依頼する。どうも社長は異次元の世界と霊界をごっちゃにして
いるらしく、その異次元の世界で息子に会えるかね、としか
言わない。異次元の世界というのはどうも、この世界を反転させた
ものらしく、科学者夫妻の夫の方はその実験の最中の事故で、
体の一部だけが反転し、“手が両方とも右手”という異形の体に
なってしまっている。
科学者夫妻の情熱はわかるが、異次元で死んだ息子に会えると
ほのめかして(断言はしていないが)発電所ひとつ分の電気を
一時間、この研究のためだけに回してもらうというのは詐欺っぽく
見えてしまう(奥さんの方を演じるのは刑事コロンボ『殺人処方箋』
でジーン・バリーに殺される奥さん〜コロンボものの最初の犠牲者〜
を演じたニナ・フォック)。異次元の謎、富豪の父性愛、そして
「科学なんかに霊の世界をあばかれてたまるか」
とライバル心を燃やす心霊主義者、という三つのテーマを盛り込みすぎて
いささか消化不良気味。
ホッピー四ハイ。ネットニュースを見ていたら、天皇陛下ご不例と
いう記事。ちょっと不安になる。いや、もちろん玉体のご変調に
ついての不安もあるが、この不景気の時にもしものことがあったら
その経済的影響たるや計り知れないものがあると思うのである。