裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

19日

月曜日

あほづら家族

け、けっして某聖×新聞に連載の四コマ漫画『あおぞら家族』のシャレではありません! ありませんってば!

※『創』対談

朝5時ころ目を覚ましたときには、片頭痛がひどかった。7時起き。だいぶ軽減。日記などつけて8時入浴。入浴時に貝印ゴールドSでカカトを削る。おお、削れるけずれると感激。阿佐谷の銭湯でこれでカカトを削っていた30年前を思い出すなあ。

9時朝食。黄林のヨーグルトサラダ。昨日、ヨーグルトが甘い、と言ったら、母がクエン酸を混ぜて、ブルガリアヨーグルト並の酸っぱさにしてくれた。

忙しくてボツボツアナが空いていた日記、今年分はなんとか埋めた。しかし、二日間をこれに費やしてしまったな。私の日記にかける執念というのは何だろう?

船越英二・死去。83歳ではまあ、仕方ないし、長いこと病気もしていたらしいので、あきらめもつくが、やはり淋しい。『時間ですよ』の風呂屋の主人・祥三、『熱中時代』の校長先生で顔を知り、大学に入って名画座通いをはじめたあたりで、『野火』『白い巨塔』などの名画、『盲獣』『怪談蚊喰鳥』などの怪奇もの、『大怪獣ガメラ』のような怪獣ものまで、とにかくやたらに出まくっていた人なんだなあ、と感心を通り越して呆れたほどだった。成田三樹夫主演の『怪談おとし穴』のようなカルト作にも、ちゃあんと律義に出ているのである。

鼻声俳優で、
「そではいけまへんねへ」
というような発音なのだが、汚くなくは聞こえなかったのは天性の品が備わっていたからか。裕福な呉服商の息子として育ち、俳優になったのも、兄が三島謙の名ですでに日活で俳優になっていたので、ほんの遊び心で大映ニューフェイスの試験を受けてみたからだという。

どうという個性のない二枚目俳優として便利に使われ、俳優生命の消えかかった頃に、市川崑、吉村公三郎、増村保三などという鬼才監督たちにに起用され、演技の幅をぐんと広げた。『盲獣』(監督・増村保三)での、緑魔子をひたすら“触覚”で愛する盲目の男の役、それから『怪談・蚊喰鳥』(監督・森一生)の、中田康子にひたすらストーキングする按摩の役という、“二大メクラ演技”で、私の中でこの人は名優として認知された。目があいているときはどうも、たよりなく感じる人なのだが、それが閉じられた瞬間、いいところのボンボンという甘さが消え、その底にある不気味な、裸の人間性が浮かび上がってくるのである。日本映画最高のメクラ俳優は、私の中では勝新ではなく、この船越英二なのだ。なにしろ、勝新には現代物のメクラ役がないからねえ。ご冥福をお祈りする。テレビでの彼は物分かりのいいお父さん役だったが、実際には息子の英一郎とは最後まで和解しなかったなあ。

昼は母の自作のスープスパ。ありあわせのもの(ハム、塩鮭、キャベツ)などにトウガラシとナムプラーを入れてエスニック風にしたもの。ありあわせとは思えぬくらいうまい。ちょうど、明日で閉店という東池袋の大勝軒のニュースを明日出演する『ピンポン!』で見ながら。

3時半、時間割で『創』対談。岡田さんが15分遅れるというのでゆっくり出たら中野通り混んで20分遅れになってしまった。S編集長も来ていて、単行本の話しばし。岡田さん、体重が75キロまで減って別人のよう。対談は“著作権の明日”。いろいろと提案など出て、Kさんが“いい内容ですね!”と驚いていた。ここ数回のオタク清談はなにかオタク第一世代の遺言という感じだったが、今回は遺言どころかこれからの活動マニフェスト、という感じ。

事務所へ帰るとバーバラ来ていて、新著のアイデアにつき、しばらく話す。『マンガを読んで小説家になろう』もそうだったが、要は読者がプライドを捨ててくれるか、という問題。『プチクリ』が岡田斗司夫の仕掛けとしてはうまくいかなかったのも、読者側に、
「自分の才能を“プチ”なものと思いたくない」
というプライドがあったからではないか。

体調おもわしくなし。早めに仕事を切り上げて帰る。サントクで買い物して、ビデオで『東京裁判』前編、を見ながら酒。水菜と豚肉の簡易ハリハリ、カニ爪バタソース、マカロニサラダでビール、日本酒、ホッピー。『東京裁判』は、見ながらネットでいろいろと出てくる人名や単語、当時の世相などを調べながら。すごく勉強になる。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa