裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

16日

金曜日

子宮に精子だす日

なめて欲しいのは、裏とぉ、腹と、肉とぉ……(エロネタですいません)。

※『ポケット!』収録 ヒロックス打ち合せ 『とことんあしたのジョー』収録

朝7時起床。8時半朝食。青豆スープ、リンゴ、イチゴ。リンゴ甘すぎてうまくなし。短時間のうちに、本日の挨拶文(終ってすぐ次の仕事なので前もって)と、『40語の会(仮)』の結成主旨文のチェック。プリントアウトして、急いで出かける。

11時ジャスト、TBS。植木不等式さん、玄関のところで待っておられる。通用口から入って守衛さんに道を訊いたら
「赤い入り口」
と言われて、何のことだと思っていたら、日本陸上の宣伝で入り口付近全体が真っ赤な壁に覆われているのを見てナルホド、と思ったとのこと。

他にもロビーの半分は『どろろ』の宣伝で、もう半分は『世界不思議発見』の宣伝でディスプレイがされており、その他隅々に『渡鬼』のセットのミニチュア、黒ブタの等身大(?)像(前はスケキヨ像だった)などが飾られており、作り物飾り物の好きな局だなあ、と思う。オノに、海保さんへのホワイトデーのお返しを仕入れてきてもらう。

スタジオでいつも通り収録。この収録もこの回入れてあと2回で終わり。午前中からの収録になって、ちょっと仕込みとかがつらくて、ブジオや深夜に比べると達成感に欠けたかな、と反省の多い番組だったが、しかし学ぶべきところは多かった。

植木さん、前回に比べると馴れて、早口になる。早口になると、植木さんの声というのは私の声と似てくるのですね。いや、皆神さんもそうだが、と学会口調とでもいうか。

局は植木さんが『デストロイ・オール・ヒューマンズ』のテーマ(ウルトラマンのパロ)と『ギリギリ科学少女ふぉるしぃ』、私が鈴木ヒロミツ追悼でモップスの『月光仮面』。モップスの『月光仮面』は月光仮面が途中からスーパーマンとゴッチャになって、タモリのハナモゲラの元祖みたいなデタラメ宇宙語を話し出すという大怪曲。曲自体アナーキーな上に誰もがこれに許可を出した川内康範先生に“これはいいのかよ!”とツッコミを入れずにはいられなくなるという曲でもある(実際にかなり怒られたらしい)。イニャハラさん、
「これをかける番組は他にないでしょうねえ」
とウレシそう。

収録後、ベトナム料理店『蓮華』で植木さんとオノと三人で昼食。お仕事の話もする。契約が4月から基本2年という、長丁場になる仕事でもある。

別れて、一旦事務所に帰る。次の打ち合せがまた赤坂なのだが、時間潰すにはちょっと間が空きすぎ。気圧のせいか眠く、事務所の仕事室の床で抱き枕抱いて少し寝る。

45分くらい休めたか。赤坂にとって返し、TBS一階の喫茶店でヒロックスエンタテイメントN氏打ち合せ。いろいろと企画の件。今後の展開の構想を伝える。大風呂敷のホラ話に聞こえたかも。

で、また渋谷にとって返し。事務所で今度は30分ほどメールチェックなど。予定それぞれに実に中途半端なタイムラグがある。歩いてNHKへ。控室に通されて、打ち合せ。ディレクターを前にいろいろと『あしたのジョー』における力石の存在を語る。実は事前にはジョーやその時代のことを語ることになっていて、そのつもりで前準備もしていたのだが急遽構成が変わって、力石が担当になった。そのため、ほとんど前仕込みが出来なかったが、こういう場面で私はツオい。話しながら自分の立ち位置を決めていく。
「それ、いただきます!」
とディレクターが言うセリフが大分でた。

メイクして、収録スタジオへ。リングを模した、かなり高いステージ。司会の里アナがチョッキに蝶タイという姿で上がってきたので、あ、バーテンダー? と一瞬思ったがレフリーなのですね。中川翔子ちゃんはリングガール役だった。FDから出演者たちに
「すいません、“ドヤ街”はNGですので」
と注意があったのに笑う。みなしごはいいのか? ちなみに、ドヤの語源は簡易宿泊所の“宿”の逆読みでなんら差別的意味合いはない。“人が住めるようなところではない”からヤドを逆さにしてドヤと呼んだ、という解説がなされることがあるが、別にそんな意味があるわけでなく、ダフ、ショバ、ゴトシのような単なる転倒語である。

メンバーが光浦靖子、片岡鶴太郎、スマイリーキクチ、でスペシャルゲストが尾藤イサオ、輪島功一というメンツ。尾藤イサオさん、もう65歳とは思えぬ若さ。歌も顔も、まったく昔と変わっていないのに驚愕。鶴太郎さんは52にしては老けていたが、芸能人をやめたせいか? 服装センスだけ芸能人時代のままなのでちょっとちぐはぐ感。

こういう濃いメンツに混じっては印書薄く、席もはじっこの方でそんなに優遇されてない感じだし、まあ、ちょこちょことアニメのことを語っておけばいいか、という感じで気楽に上がったが、どうも“お気に入りのキャラとシーン紹介”では私がトリをとるらしい。また、やはり話がアニメからはずれがちだし司会者コンビもあまり時代のことを語れないので、つい“議長の血(裏モノ会議室以来の)”が騒いで、場を仕切って、片岡鶴太郎サンに話をふったりしてしまう。すいません。おかげで、ほとんど全ての発言者が
「さっきカラサワさんがおっしゃったように」
と発言の頭にくっつける。編集で切るのが大変だろうな、と心の中であやまっておく。

輪島功一さんは助ちゃんが言っていたように、ホントに天然の人という感じだった。自分のことを“輪島クンは”と呼称する。鶴太郎サンが“輪島さんは”とそれとなく訂正していた。“嬉しいなあ、畜生”も何度も出ていた。クロスカウンターの実演で上がった本物のボクサーの体のいいこと。スパーリングをやってみせてくれたが、そのフットワークでステージがぐらぐら揺れる。ボクシングという競技は実は下半身の競技だ、というのがよくわかった。後でオノにきいたら、出番を待つ間も輪島さん、じっとしていられなくて、スタジオにいる女の子にちょっかい出したりして、何度も“お静かに!”と注意されていたようである。

で、一人々々が思い入れのあるキャラばなしを。ラストが私。リングよりもさらに高い、語りステージに立って話す。力石のあの減量シーンを取り上げ、
“なぜ、彼がこの死の減量をせねばならなかったか”
“彼はなぜ死ぬためにリングに上がったか”
につき、分析。急にこの話をしてくれと言われたのでまとまりに欠けたが、しかしその場にいる人々全員が
「ああ!」
とその指摘に驚き、こっちに向ける視線が変わったのがハッキリわかった。朝の岡田さんや氷川さんのトークも濃かったらしいが、それとなんとか釣り合いをとった、という感じ。話の内容をもうちょっと理解しやすくまとめたものは、いずれ放映終了後、どこかで発表します。

収録終了後、メイク落とし。メイクさんに
「面白かったですねえ!」
と言われる。正月の『空想共和国ニッポン』のときもそうだったが、メイクさんにこう言われた番組は成功。中川翔子ちゃんに新刊とゲームを進呈。例の件、向うから“ぜひ!”と。心の中で快哉を叫ぶ。

昼TBS、夜NHKというのも凄まじい移動であった。終って9時過ぎ、さらに翔子ちゃんや里アナはこの後も収録続き(朝の8時入りで!)という長拘束らしい。タクシーで吉祥寺まで。車中で『ポケット!』聞く。オノのリクエストで、吉祥寺の大分料理『ともえ』へ。“石井米ビル”という妙な名前のビル(米屋だったのか?)の二階。マドも来ないかと誘わせたのだが、風邪っぴきの中、昨日の焼肉会で無理したのがたたってトテモ出て来られない、とのこと。

まず、お疲れとビールで乾杯、今日の仕事の件、打ち合せの件、今後の企画の件など。ほとんどは人物月旦。料理では焼きタケノコがうまく、猪豆腐がよろしく、鯵の焼き物がうれしかった。酒は日本酒が甘口だったので芋焼酎に変えて。最後は冷っ汁。これもありがたい。さすがに体がキていて、帰りのタクシーで少し沈没。就寝、1時。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa