15日
木曜日
パリジャンたらギッチョンチョンでパイのパイのパイ
♪フランスの中枢はカルチエラタン、リュクサンブール、ソルボンヌ、サンジェルマン……。
※『ポケット!』打ち合せ、幸永“にくの会”
朝7時半起床、入浴。朝食マンション前の家の桜がそろそろほころびかけているが、この木にずっと前から、スーパーの袋がひっかかっている。母はそれが気になって気になって、その桜の木を見るのも苦痛だという。ちょっと笑った。
昼はずっと公演中の日記書きに費やす。昼は母の室でとろろそば。干し蕎麦なれどとろろで食すると美味。
3時『ポケット!』打ち合せ@時間割。植木不等式さんの昇格の話をいろいろ。植木さんには明日の曲の音源確認を。
事務所に戻り、いろいろ確認事項。バーバラが新刊『マンガを読んで小説家になろう!』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4757213530/karasawashyun-22
を進呈してくれる。いかにもバーバラの著書らしく、パラパラと目次を見ただけでも刺激的というか見も蓋もないというか、そんな文句がズラリ。すでに発売前から、このタイトルに過剰反応して
「アホか」
と言い捨てているブログがあった。小説を書く、という行為のどこかに神聖さを追い求めている“夢”多き作家志望者にとっては、侮辱以外の何ものでもない本だろう。なぜかというと、この本には“小説を書いて食っていく”ためにはどうすればいいか、という、現実の問題が書かれているからだ。
小説で食べていくのに必要なのは、10万人に一人の才能か、さもなければ、この本に呈示されている、現状にピッタリと寄りそう不断の努力、である。作家を志そうという人の大部分は、自分に“10万人に一人の才能”がある、と思っている。いや、思い“たがって”いる。必死に。切実に。だから、そういう人は、いかに売れたくても、この本を読もうとは思うまい。読んだなどと人に言えまい。しかし、小説が創作物の頂点に立っていた時代などはとっくに終っている。この本の中に、歯に衣着せずに書いてあるように、文庫本一冊書いて入る収入では、一ヶ月かつかつで食べていくのがやっと、なのだ。
すでに、“本当に才能ある人”の大部分は、マンガやゲームといった、もっと自分の才能を“食っていくこと”に役立てられる分野に行ってしまっている。内容でも、ストーリィ手リングの技法でも、いや、“文学性”でさえも、今やマンガの方が小説よりはるかに上の作品がゴロゴロしている。そっちの分野に才能が集結しているのだから、これは必然の状況でしかない。と、なれば、小説家(小説家志望者)が、モデルにすべきは小説ではなくマンガ作品であるべきだろう。下位のものが上位のものに学ぶのは当然のことだからである。実際に、ヒット小説の多くを読めば、
「あ、これはあのマンガの手法からとったな」
と思えるものが必ず見つかる。小説をマンガの上に無条件に置く考え方は、すでにして過去の遺物でしかない。この本の出版は遅きに失したと言えるかもしれない。
ただ、改めて読んでみると、この本に書かれている“マンガに学べ”の技術は、マンガ独自のものというより、マンガに最も顕著に現れている大衆的エンタテインメントの法則の学び方、に留まっているのが惜しい。もっと具体例を多く上げて、ここでのこういう描写はこのように、ここでの展開はこのように、という“技術論”に徹した方がより、インパクトある本になったのではないか、という気がした。そういう意味ではまだ、ここで語られていることは主旨説明の段階でしかない。これがヒットして、第二部“技術編”の出ることを切望する。世の小説家志望者が、誰も広言しないが“こっそり読む”隠れたベストセラーになることだろう。
7時、オノとタクシーで東新宿『幸永』。さいとうさんがここで“にくのかい”がやりたいと言うので、ついでにとレイパー佐藤さん、それからあぁルナの若手陣から助ちゃん、もやし、岡っち、いぬきょんを呼んで。
さいとうさん、ちょっと変なノリで、“今日ならマドさん(風邪気味)に勝てます〜”などと言う。レイパーさんの芸を隣で聞けて、オノはすごくウレシそうだった。
私はやはり、若手陣と、こないだの『アストロ劇団』ばなしになる。岡っちのブレイクに、助ちゃんが発奮して、置いてかれないようにしなくちゃ、と言っているのは感心。仲間意識はあって当然だが、劇団とはいえ、役者は回り全てがライバルなのだ。
「テリーから楽の翌日、すぐメールを貰って、そういうことするタイプと思っていなかったから嬉しかった」
と言ったら、みんな、
「実はそういうことする人なんですよ」
と。さいとうさんに、次の公演までのあと、ロフトで彼らにコントライブやらせてやってよ、と依頼しておく。快諾を得るが、もうそこらへんでさいとうさん、ちょっとヘンな酔い方だった(こないだの八起みたいなひどさではなかったが)から覚えているかどうか。ヘンだけど色っぽくてよかった。
焼肉類、さんざ食ったあと、助、岡っち、乾ちゃんともう一軒。レイパーさんもちょっとつきあってくれた。若い役者さんたちの、芝居への情熱の、方向定めぬ発噴は聞いていて楽しい。何かドキドキすることをやらないと、というエネルギーを分けて貰った感じ。1時半、帰宅。マンションのロビーでさいとうさんにもう一回電話。今日、置いてきぼりにしてしまったあやまりと、埋め合わせの件。話がヘンにヒワイな方へ行ったりして楽しい。