裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

18日

日曜日

ハルノオトが聞こえてきます

ほら、「満州から全ての権利を放棄して手を引け」って。

※格別なことせず

朝8時起床。起き抜けの頭痛が一番ひどい。しかるのち、朝食食べるとウソのように引く。何なのか。入浴、日記つけなどして9時朝食。リンゴ(黄林)が寝ボケた味でまずい、と言ったら、ヨーグルトサラダにして出てきた。こうするとまず、食べられる。もっともヨーグルトも甘くてちょっと寝ボケ気味。

ゆうべ疲れきった感じだったダーリン先生、今朝、元気回復して食欲も凄かったそう。やはり芸人は舞台がクスリなんだなあ、と感心。

たまった日記を消化すべく、いろいろ。あと、金沢で4月8日、開催される旭堂南湖さんの講談会の会の名前と、タイトルを考えなくてはならない。『南湖金沢講談会』、略して『なんかな講談会』として、南湖さんの紹介文を書く。以下、文案。

「ご挨拶:唐沢俊一
旭堂南湖。きょくどうなんこ、と読みます。金沢には初お目見え(の筈)です。ちょっと見にはとっつきにくい顔ですが、よく見ると可愛いです。女性にもモテるみたいです。上方講談の期待の星です。
江戸の講談は軍団でも市井の話でも、スッキリと一気呵成に語り倒します。いわばスピードが身上。しかし、上方講談はテンポはゆったり、しかも饒舌です。細かいところまで説明して、痒いところに手を届かせてくれます。旅で言えば、新幹線ではなく、各駅停車のぶらり旅。ときには思いつくまま、とんでもないところで下車して時間をつぶしたりもするのです。聞き手をおいてきぼりにしないのですね。
しかも彼は、戦前のミステリ小説のファンで、海野十三や江戸川乱歩の作品を講談にしたてるという、マニアックな一面も持っています。戦後のトンデモなSF紙芝居を復活させて高座にかけたりしてもいます。
そんな南湖さんの芸風に、初めて出会ったときから魅せられて、彼の東京での会に通い詰めています。こういう、古典とモダンを融合させた芸風の人は、絶対に文化の街・金沢のみなさまのお気に入るはず、と自信をもって、『倫敦屋』さん、『食器の丸一』さんのご協力をいただき、今回初めてこういう会を開催させていただきました。
願わくは、第二回、第三回と回を重ねて、金沢の皆様の間で旭堂南湖の名前がポピュラーなものになりますように、伏してお願い申し上げます」

昼は外で、と思ったが、スープカレーのレトルトが残っていた(札幌ビール園で買った)ので、パスタ茹でて、カレースパ。案外いける。

体調不良で外出中止。家でずっとウダウダ。夕方近く、ややよくなったので渋谷の仕事場へ出る。しばらく原稿書きなど。

東急ハンズに寄って、ヘンケルの胼胝(タコ)削りの替刃を買おうと思って、ふと見たら貝印カミソリのGOLD−Sの詰め合わせがある。使い捨て安全カミソリだが、大袈裟でなく、それを見つけて驚喜する。カカトの胼胝を削るツールとして、これが現在最良、最強のものだからである(実際には、カミソリの刃の台の部分が今のように“改良”される前のものが最高だったのだが)。ヘンケルの三倍は削れる。コンビニで見つけるたびに買い占めていたのだが、この頃ではとんと見なくなり、生産中止かとばかり思っていたのだ。さっそく三パック(そこにあった全部)買い込む。

私は左足がちょっと悪く、特殊な歩き方をするので、左足のカカトにいつも分厚い胼胝が出来る。これを削るのには、普通のカカトやすりや軽石ではとてもダメなのだ。20年ほど前、雑誌『GORO』に掲載されていた小池一夫原作のマンガ作品で、新聞配達の青年が、足を使う職業故にカカトが厚くなり、銭湯でこの(商品名までは特定していなかったが)使い捨てカミソリでカカトを削るというシーンがあって(「軽石じゃ間に合わないんですよ」というセリフもあった)、よく取材しているなあ、と感心したことがある。私もその当時、銭湯で毎日、使い捨てカミソリでかかとを削っていたのだった。いろいろ試したが、この貝印ゴールドSが最もよく、カカトの皮を削った。以前は削った皮が自然に刃の裏側に落ちたが、改良後は皮がつまり、そのたびに指で落とさねばならない。しかし、それでもやはり、削り具合に関してはこのカミソリが最高なのである。明日の入浴が楽しみで仕方ない。

帰宅、また日記つけ継続。9時、母の室で夕食。自家製てんぷら。シメジがおいしい。テレビで『華麗なる一族』最終回。見るのはこれが初めて。ちゃんと木村拓哉を殺すのは感心。しかし、見ていて、私はこのドラマ、原作の時代設定を現代に移し替えたのだとばかり思っていた。そうしたら、最後の最後、戦時中に鉄平(木村)の血液型を調べたら、というセリフが出てきて、え、原作通りの時代設定(昭和30年代)だったのか? と驚く。確かに銀行内部や、駅頭のセットなどは時代設定を考慮しているが、しかし、あの時代にあのヘルメットはないだろう、あの時代にあの髪形はないだろう、というようなシーンばかり。最後に鉄平が見つめる家族の集合写真がカラーでキャビネ版というのも不自然きわまりない。金(と神経)をかけたところとかけてないところの差がありすぎ。と、いうか、せっかく金をかけたセット類が無駄になるではないか。

それにしても同じ山崎豊子原作で、『華麗なる一族』の主人公一族の名が万俵、『白い巨頭』では財前。ユニークな名字をつけるのがうまい作者だったなあ。ついつい、アマゾンでこの二本の劇場版DVD(どちらも巨匠・山本薩夫監督)を買ってしまった。あ、『女系家族』もあったか。今のテレビ界は山崎作品のリメイクで成り立っているようなものだな。これは名匠・三隅研二監督作品。買おうかどうしようか。ちなみに、この主人公一族の名字は矢島。ちょっと平凡でがっかり。

自室に帰り、南湖さんとメールやりとりなどしながら、ホッピー二杯。珍しくビデオなどは見ず、NHK教育の『芸術劇場』で、ニール・シコフ、ジュゼッペ・サバティーニ、ヴィンチェンツォ・ラ・スコラのテノール三人衆のコンサートの模様を見る。指揮者のニコラ・ルイゾッティがWWEのビンス・マクマホンにそっくりだった。この四人がアンコールでいろいろコントみたいなことをやる。向うの人間はこういうのが好きだねえ。1時就寝。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa