裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

29日

水曜日

言うてはる・ドリーマー

夢や、あんたの言うてはることはみんな夢や!

※金沢白鳥路ホテル打ち合わせ、文サバ塾第一期最終回、実相寺監督死去

朝8時起床、入浴、9時半朝食。王林、柿、スープ。10時半、家を出てタクシー、すっかりクリスマス仕様になっている東武ホテルロビーにて、白鳥路ホテルゼネラル・マネージャーのM氏と会う。1月のトーク打ち合わせ。とりあえず、第一回は21世紀美術館のトークの前宣伝的なものにしなくては。

終わって、今日は夕方までこっちでの仕事がないので、事務所で鍵(昨日忘れてきたやつ)をとり、一旦自宅に帰る。事務所のパソコンの方が新しいので、使いやすいのである。そのまま原稿、アスペクトコラム残り半分を。

昼は母の手製のカニチャーハンに油揚の味噌汁。アルゴ細谷さんから、明日、『シルバー假面』の試写があるから来ませんか、との電話。実相寺監督もいらっしゃいますんでとのこと。何とか予定を繰り合わせて行きます、と返答しておくオノに連絡するが、明日は『ポケット!』の打ち合わせあり、ずらすのは面倒です〜とのこと。

夕方、渋谷に出て、事務所へ。雑用多々。オノとスケジュール打ち合わせるが、やはり明日の試写会は難しいようで、12月の最終試写にしてもらうよう、Hさんに連絡とるように行っておく。雑談の中でオノ、山本弘という名がペンネームだと知って(さらに本名を知って)驚愕していた。

6時半、文サバ塾第一期講義最終回。あっと言う間だったような気がする。気を入れて話した。オノ曰く、最後の方でちょっと内容にしびれた、と。点の辛いマネージャーだけにこれは素直に喜んでおこう。さっきコラム原稿をアップしたばかりのK田くんが来てくれる。月ごとにコラムを書いているんだが、月数の記載と内容にズレがあるという。何故か?

終わって懇親会、隣の焼肉屋で。懇親会というよりは単なる飲み会。
受講者の一人が『ウルトラマン瓦せんべい』を持ってきて盛り上がる。実相寺監督の書斎の写真が載っていて、これが一番貴重な資料かな、という感じ。2時間ほど打ち合わせたあと、さらに英鮨でK田くん、バーバラ、オノと打ち合わせ。いろんな人間の月旦。バーバラ、オノの順で帰ったあとも、K田くんと少し飲む。

12時過ぎ、かなり酔ってタクシー乗り込んだら、携帯にアルゴのHさんからの電話。当然、試写会のことだと思っていた。
「実は、実相寺監督が」
ここの時点でもまだ、試写会の話だと思っていた。
「亡くなりました」
一瞬、何のことだかわからずに
「あー、そうですかー」
と間抜けな受け答えをしてしまい、その後で蒼くなる。
「まだ葬儀とかは決まっていないんですが、とりあえず」
「わかりました、では詳しいことが決まりましたら、すぐに」
と言って切るが、酔いが一気に醒めていた(潮健児さんの死去の報を聞いたときも、かなり酔っていたが、聞いたとたんにすーっと酔いが醒めていくのがわかった。アドレナリンというものの凄さよ)。それにしても、今日はまったくこれを予想せずに、何度も実相寺さんの名前が(試写会の件、書斎の件)出ていた。西手新九郎も遠慮がちだったか。

寝も出来ず、と言って何も手につかず、ミクシィと表日記にとりあえず、訃報をアップする。後から聞いたら、一時、某所でしばらく死去の報を隠しておくべく連絡を堰き止めていたらしく(無理な話だと思うのだが)私の日記がかなり最初の報となったらしい。

2時過ぎころ、開田あやさんから電話。
「カントク、ご病気だったの?」
と言うので、胃ガンのことなどを語る。K子も帰ってきて、訃報を伝えたら“ガン?”と声をひそめて聞いてはいけないことを聞くように聞いた。

NHKのYくんからメール、某番組企画、かなり前向きの進展があったとのこと。実はこの企画にも実相寺監督に関わってもらおうと思い、Yくんに話して、事務所から
「今ちょっと新作映画なんかで手が放せないんですが、後で実相寺が自分で電話するから、と申しておりました」
と言ってきていたそうである。
嗚呼、と天をうらむ。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa