3日
金曜日
愛と神田うの物語
青年実業家と結婚なんてありきたりじゃダメですよ。
朝、8時起床。あわてて入浴、歯磨。8時半の朝食にまにあう。ブロッコリスープとピオーネ、黄リンゴ(王林)。考えてみれば文化の日。三連休ということだが、午前中に仕事に向かわねばならぬ。支度すませて家を出たらちょうど仕事場から帰るK子とバッタリ。
新宿まで地下鉄、小田急デパートで“たねや”の大福をお土産に買い、タクシーでTBS。ちょうど橋沢、渡辺コンビをオノが案内して窓口で入館証を受け取るところ。
スタジオ入りするが、二人、緊張しているんだかリラックスしているんだか、収録前の打ち合わせがまったく進まないほど、凄まじい雑談の嵐。I井Dから何かひとつ、話題が出るたびにそれをひったくってワーッ、と凄まじく話がひろがる、というかあさっての方向に行く。一応、一段落ついた後で
「すいませんね、話がそれて……」
と誤るのだが、そういう展開にI井・イニャワラも海保さんも、まったく動じず
「いえ、本番でもそれでやってください」
と。こっちが逆に“今日は大変だな”と内心、不安になる。
昨日のヒロックスとの打ち合わせで、今日の収録のときに橋沢さんと打ち合わせを、ということだったが、オノに確認させたら、10日だと思っていた、とのこと。
「唐沢さんのお話では10日の金曜日ということでしたが」
「はあ、でも、ウチのカラサワがそんなにきちんと次の収録日を把握しているはずがないのですが」
という会話があったそうで、
「先生、やはり向うのカンチガイだと思いますよ!」
と“自信をもって”言われる。複雑な気分である。とはいえ、やはりこういう打ち合わせにはオノを同席させるべき。
で、本番。オノが東文研日記に書いたとおり、
「暴走する渡辺にツッコむ橋沢、途中までゲラゲラあおりつつも最後にはまとめる唐沢」
という流れにはなったが、いや、今日は(橋沢さんが二日酔いであったこともあって)ナベさんの暴走に全部かっさらわれたという感じ。声のよさに加えて、教師から大道のテキヤまでやったことがあるという職歴の広さ、そこからくる話題の多様さ、まさにラジオ向けの人材。ただし、この人、トメが聞かない。収録だからと思っていたのかもしれないが、脇でイニャワラさんがいかにOKだしても、必ずそこからもう一段落、話をはじめる。何か、トッ散らかった感じになりはしなかったか、終ってからチと心配に。
局を出て2時、さてどこかでメシでも、と思ったが祝日の赤坂であって、どこもみな休みだらけ。開いていたベトナム料理店『ロータスパレス』に入り、333ビールでお疲れさま。昼からビールはどうかと思ったが文化の日だし、いいでしょう。
ここの店、ただ“開いているから”という理由で入ったのだがかなりアタリで、牛の串焼き、鶏手羽のニョクマム漬け焼き、ベトナム風お好み焼きと、頼むものみなおいしい。橋沢さんと『ワナゴナ』の話をしているうちに渡辺さんが
「俺も出たい、出してよ」
と言うので、じゃアこういう役を作ってやってもらおう、とその場で考える。橋沢さんはもとより渡辺さんも今日の出演を大変嬉しがってくれていた。昨日は半田くんのマネにもそう言われたし、あの番組はひょっとして大したものなのかも、と思えてくる。
333飲みすぎてちょっと酔う。次の仕事があるという橋沢さん、渡辺さんと別れ、新宿までオノを送り、帰宅、4時半。いったんベッドに入ってグーと寝て、酔いを醒す。
6時に起き出し、本日の『ポケット!』挨拶文書く。仕事をそれからコジコジと。資料用にビデオで『将軍アイク』見る。ロバート・デュバルがアイゼンハワーを演じた良質な戦争ドラマ、ではあるが完全にアメリカ万歳アイク万歳の視点で、英国軍のモントゴメリー将軍(イアン・リチャードソン)などが貴族趣味でのほほんとしているマヌケのような描かれ方をしており、よくイギリス人俳優達が文句も言わずに演じたな、という感じ。
9時、仕事続けながら『ポケット』を聞く。I井D、いい仕事した! という感じで、聞いて驚く。よく言えば話題横溢、悪く言えば雑駁を極めた収録素材を的確にカットし、実に面白い内容のものにまとめている。進行上のミスが一箇所私にあったが、それもカットして流れをスムーズにしていた。もうひとつ、うっかりで渥美清が金田一耕助を演じた映画を『悪魔が来たりて笛を吹く』だと言ってしまった(渥美金田一は『八つ墓村』で、こっちは西田敏行が金田一)のは放送されてしまったので、ブログで訂正、陳謝しておく。
10時、『将軍アイク』の続き見ながら酒。塩ラッキョウ、ポテトサラダ、餡かけ豆腐を肴に。餡かけ豆腐というのも極めて簡単な酒の肴で、薄口醤油で濃いめのダシ汁を作って、ちょっと砂糖を加え、それに葛粉を加えて餡を作る。レンジで温めて水分を切った豆腐の上にこの餡をかけ、最後にショウガの絞り汁を足らす。これだけなのだが、この、ショウガの絞り汁がキモで、ショウガの絞り汁というものをかける料理は数あれど、これほどそれが効果的に料理を“完成”させる例を私は他に知らぬ。もともと冷奴であってもショウガはつきもので、豆腐とは相性がいいのかもしれないが、葛餡をかけた豆腐というような、あまりゾッとしない食べ物が、この最後のおろしショウガを搾ってタラタラ……と垂らした数滴の香りと味で、見事な酒の肴、飯の菜に変貌する。
『将軍アイク』、ロバート・デュバルの副官二人がJ・D・キャノン(『警部巻くロード』のクリフォード部長)、ウィリアム・シャラート(『地球爆破作戦』のCIA部長)という私のお気に入り俳優であった。パットン将軍はダレン・マクギャビン(『事件記者コルチャック』!)だし。