裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

26日

日曜日

ロリ妖怪の仕業

おのれ妖怪、つるぺたの少女に化けてわしをたぶらかしおったな(たぶらかされる方も問題)。

※劇団『銀色金魚』公演観賞@新井薬師、『ワナゴナ』放映

朝6時に目が覚めて、ふむ、普通に戻ったか、と思いつつまた眠る。で、目が覚めたら9時。まだ寝不足が体内で精算されていない。朝食はまた30分延ばす。ブロッコリスープ、王林、フレンチポテト。

日記つけ、原稿書き、DVD観賞、読書、と、要するにどれもじっくり気を入れてできないままにゴチャゴチャ。弁当(豚カツにポテト)を11時50分頃、10分で使う。それから家を出て、西武新宿線で沼袋駅。『コムテツ!』でご一緒した原田明希子さん(ヴィダル役)の劇団、“銀色金魚”の公演『Vamp Vault Vampir(ヴァンプ・ヴォールト・ヴァンピール)』を見るため。ところが、会場地図をプリントアウトしたものを忘れてきてしまっている。廃人化か。

あたりの案内図を見るがそれらしい劇場なし。どころか、劇場の名前も忘れた。オノに(日曜なので悪いが)電話し、確認。沼袋ではなく、隣の新井薬師だった。西武新宿線にまた乗って、新井薬師。駅前の交番で劇場(ウエストエンドスタジオ)の名前を言うがドラマに出てくるような交番のお巡りさん、地図を見ながら
「ダメだな、最近老眼でさっぱり見えない」
などとつぶやいて探して、ラチ開かず。またまたオノに電話して住所聞いて、その住所のみ教えてもらい何とかたどりつく。

本来、このお芝居には昨日行く予定だったのだが、何しろ徹夜の明けで、体力的にダウンしていたのであった。会場、入ったのは15分前で、まだかなり空席が目立ったが、三々五々、客が入り、ほぼ満席という状態になる。文化放送のUさんが入ってきたので手を挙げて挨拶。

舞台には大きめの箱形の棺がある。さようさ、客入れ開始から開演まで30分といったところだったろうが、照明が落ちてスモークがたかれ、芝居が始まったところで、その棺が開いて、中から黒いバレエ衣装のようなスタイルの原田さんが登場。抜け穴があるのかな、と思ったがそのような様子もなく、たぶん客入れ寸前に中に入り、そのまま開演まで中でじっとしていたのではないか。役者根性だなあ、と思う(後から聞いたらやっぱり抜け穴みたいなのがあったらしい。それでも、かなり長いこと中でじっとしていなくてはならないだろうが)。

ストーリィは、吸血鬼の一族と、その吸血鬼に血を与えるいけにえを捧げることで生き延びている平和な暮らしをいとなむ一族、その血を与えるいけにえ役の“エサ”と呼ばれる人々の三つに別れて進行。主人公は、平和の一族の一人で、吸血鬼たちから新しいいけにえを差し出す要請があったとき、自分でも何故かわからない理由で、それに志願してしまった少年。それに、ちょっと頼りないバンパイア・ハンターの男女二人組がからんでいく。原田さんは“エサ”の、何故かエサなのにはしゃぎまくりの男女の片割れを演じる。

これまで観てきた他の劇団の役者さんたちに比べると、演技そのものは達者なのだが、なぜか顔立ちや、体から発するオーラが役者っぽくない、プロっぽくない人が多い舞台だな、という気がした。その中ではさすがに原田さんは全身から“女優”というオーラが立ちのぼっている感じで、一頭地を抜いていた。演技のメリハリが凄い。それと、主役のユキ少年を演ずる栗城宇宙という人の顔がいい。役としてはしどころがなく、周囲の状況に引きずられているだけの気の弱い少年役(エヴァのシンジくん)なのだが、彼の存在が、めまぐるしく陰謀がうずまく世界観の中で、“自分”を見失わないでいる。こういう役をセリフや演技でなく、存在だけで表わすのはなかなかである。演出では、いくつもの場面に別れた芝居を同一場面で演じさせ、同じ文句のセリフを部分々々で重ねさせることで多重なストーリィを手際よく説明し、かつお互いのパートに関連性を持たせていく、という手法が面白かった。そして、『コムテツ!』でも見せていた原田さんの、コメディとシリアスの演技の使い分けが、なるほど、こう活かされたか、というドンデンにちょっと意表をつかれる。全体的に未整理といった感じがあったが、1時間45分の舞台でこれだけの人物を描き分けたところは評価対象だろう。

終わったあと、アンケート書き、原田さんと作・演出の賀茂咲子さんに挨拶。原田さんに“二演技使い分けはもう持ち芸?”と聞いたら笑っていた。

帰り道、Uさんとずっと話す。橋沢さんがこないだ出たNHKのドラマは絶品だったそうだ。今夜、実は橋沢さん、渡辺さんと『ワナゴナ』に出ると教えて、トークとドラマという組み合わせのラジオ番組はどうですかね、と売り込んでおく。そう言えば文化放送からは浜松町に移ってからこっち、お呼びがかかってない。

新宿までいろいろ話しながら帰り、そこで別れて伊勢丹で買い物。改装中で使い勝手が悪い。新中野に帰って、少し休む。ベッドに入って寝ようとしたが、どうも余命とかで鬱っぽいことを考えてしまい、落ち込んでダメ。

8時過ぎ、酒の準備。買って帰った牡蛎グラタンとポテト炒めでビール、それから辛味うどん鍋で日本酒、最後にホッピー。『功名が辻』見る。土佐で一豊に反抗する一領具足の娘が、ノースリーブ、ヘソ出しスタイルの上に毛皮を羽織り銃を握るというアニメみたいな萌えキャラで、なんだこれはと驚く。あわてて公式サイトとかを調べても載っていない。あとでmixiを見たら安達Oさんも注目していたらしく、木村文乃という女優だとつきとめていた。
http://www.officetaka.co.jp/officetaka/kimiura.html
うーん、グーグルのイメージ検索でも大河ドラマ版の画像がない。今回で一領具足の男どもは全滅してしまったし、次回で最終回だし、もう出番はないのか?

DVDで『Gumnaam』(海外もの)。1967年のインド映画。インドで初めてのミステリー映画だということだが、それはどうでもよく、私にとっては、これは以前、スティーヴン・ブシェーミの映画『ゴーストワールド』で知ったモハメド・ラフィのダンス・ナンバー『Jaan Pehechaan Ho』の元映像(キレまくりの表情で踊っている女優はLakshmi Chhaya)のある映画なのである。この、いかにも60年代日活風な映像(これを見ると、こういうシーンではインドも日本もセンスは同じ、と思ってしまう)がどういう話の中に入っているのかを知りたくて、わざわざあちらのDVDを買ったのだが、呆れたことに肝心のキャバレーでのダンスシーンは大幅にカットされて(本来は5分以上ある)いた。

ストーリィはこのキャバレーの抽選に当たった客たちがバカンスに出かけるが飛行機事故で孤島に不時着。不思議な歌に導かれてお城のような屋敷に入ると、そこにはコックがいて、みんなをもてなすように命じられている、と言う。彼ら8人は奇妙に思いながらも滞在することにするが、やがて、一人々々、謎の死をとげていく……。というロコツに『そして誰もいなくなった』の模倣。まあ、貴重といえばいえなくもない作品を見られたというだけでもよしとするか。

『Jaan Pehechaan Ho』のノーカット版は
http://www.youtube.com/watch?v=FyEnG_DEB1I
こちらで。私はもう100回くらい繰り返し見た。

11時くらいに一旦就寝、1時に『ワナゴナ』を見るために起きるが、何かやたら眠い。寝起きで眠いのは当たり前とも思えるが、それにしても眠い。外をうかがうと雨がザンザン降りだった。なるほど、気圧のせいかと思う。世界バレーのせいで30分押しで始まった。前半の打ち合わせ部分はほとんど人物紹介だけでカット、後半の吹き込みの部分を主に撮っている。まあ、30分番組で8分間のドラマ録音を丸撮りするのだからやむを得ないだろうが、しかし吹き込み風景は面白い。擬音も人間(レイパー佐藤&鉄平)がやっていることでテレビ的な面白さが増す。あとでブログ検索したら
「ラジオって擬音も人間が口でやるんですね。知りませんでした」
と書いている人がいて、オイオイと思った。わけねえじゃねえか。

橋沢さんの、マジな時計にらみ、渡辺さんの、クライマックスを中断しての生コマの面白さ、みんなの目の動き、現場のアドレナリン分泌の状況がよく伝わる。半田健人くんがまったく違和感なく唐沢組スタッフ、という形で出演しているのが不思議。中川翔子ちゃんも実に楽しげにやっていることがわかる。これは一回で終わらせるのが惜しい。結局、見たあともちょっと興奮状態で、また酒にいき、寝たのが3時過ぎ。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa