28日
火曜日
なのにあなたは匈奴へゆくの
チェリッシュ、王昭君を歌う。
※新製品見本チェック@カタログハウス
朝8時起き。携帯電話がない。ゆうべオノに預けたままになってしまったらしい。9時に勝手に母の室へ行く(この“室”って言い方は11歳のとき、田川水泡の『蛸の八ちゃん』で覚えたのだが、“へや”と読むのか“しつ”でいいのか、もう37年間悩んでいる)。朝食柿、ブロッコリスープ、ポテト。京都行きの新幹線のチケットを渡す。
アスペクト『社会派くん』原稿、コラム半分書く。しかし、これが毎年の年末行事である。DVDで『妖婆 死棺の館』の特典映像、無声映画時代のロシア怪奇映画を流し、原稿の合間にチラ見。特撮らしい特撮がせいぜいフィルムの重ね焼きくらいしかない時代の、ダイレクトな演出の亡霊とかが怖いこと。
昼掻揚げ煮つけ弁当。そのまままた原稿書き続け。消費税5%堅持を民主党が基本政策に明記、とあるが、年金のやりくりをどうつけるつもりか、これまで充当させていた予算への財源はどうするのか。かたっぽで防衛庁の省への移行に賛成しておいてかたっぽではこれというのは、もう行き当たりばったりにものを言っているとしか思えない。mixiのニュースへのコメントで、
「今のうちに老後はノルウェーに移住することを考えなくては」
と言っている人がいたが、ノルウェーが福祉・教育等の充実のために、どれだけ税金をとっているか、知って言っているのだろうか。
4時、出社、もう暗い。オノから携帯受け取る。ラジオ、中川翔子ちゃんに出演依頼していたのだがこちらの希望日はNGだそうで、別途考えよう。
『通販生活』原稿チェック。7月から延々とやってきた“マンガ・映画の中の発明を現実に”原稿、やっとアガる。
6時代々木カタログハウス。このあいだ検討した、新製品企画、もう見本が出来ている。私や編集のH氏といった大のオトナがテーブルの上に寝そべってみたりして、いろいろ奮闘。意外な特性が発見されたり、ブレーンストーミングで出てこりゃいいわ、となった素材のアイデアが実際使ってみてイマイチだったり、やはり実地に試してみないとわからない。それでも社長のAさん、
「これはわれわれの業界にいままで無かった、画期的アイデア」
と興奮している。
この打ち合わせ終わったあと、『通販生活』編集部Yさん来て、さっき出した原稿のお礼言われる。ギャラの内示もあったが、なかなかの額で驚く。タクシー呼んでもらい、帰宅。サントクで買い物し、マンションに入ろうとしたら今度は鍵がない。事務所に忘れてきたらしい。わが頭ながら嫌になる。母が幸い、室にいたので開けてもらう。
夜比内鶏スープ水炊き。DVDで市川崑『東京オリンピック』。面白い。三國一朗がナレーション。彼の著作『ハサミとのり』によると、市川監督はこのナレーションを
「水くそう(水臭く)読んでください」
と指示したそうだ。確かに、映画の中で競技を伝えるアナウンサーの熱弁調の口調(前畑がんばれ、の伝統からか、会場の熱気をアナウンサーの興奮の度合いで伝えるというのが当時の“新感覚の”スポーツ実況のパターンだった)とは対照的な淡々としたしゃべり(さらにその前の竹脇昌作の無感情で流れるようなな解説口調とも違う、ごく日常的な話し方に近いもの)だが、それでも今のわれわれの耳には、さほど水臭いナレーションとも思えない。この映画のナレーションが、その後のナレーションの常識を変えていったのだろう。その意味でも革新的だった。革新的と言えば、このナレーションの三國一朗の名前はじめ、スタッフ名がいちいち“撮影”“録音”“照明”とかと区別されず一括して“スタッフ”として五十音順で出てくる。これも凄い。
黒ビール、フグのひれ酒、ホッピー。家で飲むとかえって飲みすぎ。