裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

15日

日曜日

カレワラ松子の一生

あたしも落ちぶれてフィンランドくんだりまで流れてきてさ。

朝8時45分起床。昨日に続いて寝坊。朝食を9時半に。しかし寝坊になったもの。ピオーネ、柿、豆のスープ。

仕事しなければいかんがダラダラの快感に負ける。サンプロなどぼんやり見る。その後の番組も見てしまう。そのうちに昼。弁当(シャケ粕漬と卵焼き)使う。

昼のニュースで、国境を越えて亡命するチベット人を中国の兵士が狙撃して、撃たれた女性が倒れる映像が流れる。列を組んで雪原をゆくチベット人たちは、それでも歩を止めず、倒れた女性を見捨てて歩き続ける。そんなところで立ち止まったりしていては全員が殺されるからだろう。世界にはこのような極限の状況下に置かれた人々がまだ存在する、という事実を映像で見せられ、胸が痛む……と思っていたら、その次のニュースが
「紅葉が見ごろになり、東京近辺の山々は観光の人々でにぎわっています」
というもの。その落差に思わず失笑してしまう。まあ、世界がどうあれいま、紅葉狩りにいく権利はあって当然なんだが、こう並べられると。
http://www.youtube.com/watch?v=hXC5RxhZUYw&eurl=
↑YouTubeに映像があった。立川談之助に言わせると、列の一番前と最後尾を撃って擱坐させて進めなくするのは戦車戦のセオリーだとのこと。

新書原稿の資料読んだりしてゴロゴロ。いつの間にか夕方、いつの間にか夜。ああ、贅沢な時間の使い方だ。もっとも、贅沢すぎて少し鬱になる。ここ数日、毎日毎晩人と会い、仕事の話をし、ヨタ話をし、ワイワイやってアドレナリンの血中濃度を上げていた反動。
これではいかんのである。確かにワイワイは楽しいが、ワイワイでないといられない人間に大仕事は絶対できない。映画や芝居といった集団芸術であっても、その根本となる創造的部分の根幹は絶対に一人の脳髄から生み出される個人的な発想であり、そのクリエイト作業は孤独なものなのだ。孤独に堪えられない人間は何ものをも生み出せない。

で、孤独な創造的作業を少しコジコジとやる。NHKで『プラネットアース第7集「海 ひしめく生命」』を見る。ヒラメに擬態、というより“変身”してみせるミミック・オクトパスが凄すぎる。宇宙生物のようだ。もっと見ていたかったがK子から連絡入り、幸永にいるとのことだったので、家を出る。

幸永、道がすいていたので15分で到着。アシスタントのSさん、Tちゃんがいる。彼女ら相手にいろいろとダベって、さっきまでのクリエイト作業による鬱を散じた。K子、ご機嫌。何か悪巧みを思いついたらしい。聞いたら、簿記の試験まで、家で雑用などしていると勉強にならないので、試験までホテル住まいをする、と言う。どこかのビジホをとるのかと思ったら、センチュリーハイアットだとか。よく金があるものだ。しかも、こないだのロフトでゲイのタイのツアコンの人と知り合ったのでタイに旅行しない? とか言う。景気のいい話である。私の稼ぎはいったいどこへ消えているのか?

豚のコリコリ、骨叩き、桜ロース、極ホルモン、骨付きカルビなど食いまくる。ニンニク焼きも頼んだらK子、
「今日からホテル泊まろうかな」
と。もっとも、さすがに三人で食べるとそれほどの臭いではないらしくおとなしかった。〆はこないだのカタキウチでテールスープとライス。しゃぶしゃぶした感じがたまらない。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa