裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

13日

金曜日

ワレメを思う、故に我あり

ロリコンのアイデンティティ。

朝7時半起床。8時半に朝食。ピオーネ(巨峰より大粒のブドーだが、酸味も甘さもあり、美味)と柿。テレビで日本ハム優勝関連のニュース。母が知っている話では、北海道の景気はまだ底冷え状態なので、優勝しても支援してやろうという企業がほとんどなく、選手たちはかわいそうだとか。

KAT−TUN赤西仁が語学留学で活動休止とやら。これほど日本国民だれもがその通りと受け止めない発表も珍しいと思うのだが。しかし、とKATーTUNはKTTUNになるわけか。クチュン。何かかわいい。

また“フラワーショウ”の華ばらさん死去。新聞には彼女のことより相方のゆりさんの方を『サカイ引越センター』のCMで知られる、などと報じていた。相方の説明していてどうする、と思わないでもないが、東京での知名度はかしまし娘などに比べてイマイチだったから仕方ないか。それでもお笑い番組では抜群に笑えるグループだった。その牽引役はブスを堂々と表看板にした彼女で、ぴんからトリオの『女の道』ブームにすぐ便乗して『男の道』なんていうパチをレコーディング。リードボーカルをやったとき、テレビで司会の三枝が“まさかあの人が歌うとは思いませんでした”と呆れていた。面白かったのだが、リーダーのぼたんが琵琶湖で入水自殺するなど、どこかに陰のあったグループでもあっった。冥福をお祈りします。

ポケット収録の準備を自室でやるが、今日の海保さんの誕生日のプレゼント(小林麻耶にもあげた、中国製のタマゴ生むニワトリのオモチャ)がないことに気づく。昨日、それの動作を確認して袋に入れたところまでは覚えている。さてはまたなくしたか、と青くなるが、記憶をたどるとどうも、袋に入れるだけ入れて、持って事務所を出なかったようだ。それはそれでやはり脳の働きがどうしようもない。

もうひとつ、今日流す音楽に、今朝思いついた、ささきいさおの『それゆけぼくらのファイターズ』を使いたい。そのCDも事務所にあるので、ついでにとってこようと、9時半に家を出てタクシー飛ばし、渋谷の事務所へ。海保さん用のオモチャ、ちゃんと袋に入ってそこにあり、ホッとしてそれをとってすぐTBSへ。見事にささきいさお忘れる。脳が死んでいるんじゃないか。

スタジオ入り、案の定新庄の写真がバーンと載った新聞がテーブルの上に置かれている。ダメもとでI井くんに、『がんばれぼくらの』がTBSにないかどうか確認とってもらう。そしたら、なんとあった。しかも、5枚くらいあったのが1枚を残して全部貸し出し中で、あぶなかった、ということだった。さすが、優勝すると違うものである。しかし、そこまでいろんなところで流れているとなると、わざわざウチの番組でかける意味が無くなるか? と思ったのだが、音響のハルミさん曰く
「こんな変な曲、どこもBGMではかけるかもしれないけれど、一曲まるまるかけるのはウチだけだと思う」
というので、じゃ、とかけることに。変な曲、というのはささきいさおに悪いが、確かに“♪野球の平和を守るため……”というアニソンのパロディみたいな歌詞は珍、である。

海保さんに番組始まる前にプレゼント渡し。名前入りのケーキ、サーフィンボード運び用の手提げフック、渡しのチキン、それからオノは吉祥寺のレモンドロップのクッキー。中野監督は『おバ歌謡』のCDをプレゼントしていた。

打ち合わせ本番共に、中野監督絶好調。全開はトバしすぎてやや散漫になってしまった感じだったが、今回はちゃんと前もって仕込んでいたネタがあるのでまとまりもよく、また、世代の共通認識というものがあるのは自分たちの世代までではないのか、というちょっとシビアな世代文化論も、馬鹿ばなしの中にちょっとはさまる。このバランスが実にいい、とI井くん絶賛。安倍晋三の話になって、山田康雄口調で
「俺の名はシンスケ三世〜。かの名高き岸信介の孫だ……」
と始めて、“あ〜きえちゃ〜ん”とやって、イニャワラさんがそれ聞いて笑いすぎて涙を拭いていた。

本編収録終って、ポッドキャスティング、番宣の録音。番宣の声を聞き返して、自分がこんなにヘタだったかと驚く。声がこもるわ、聞き取りにくいわ。思えば『ブジオ!』のときは毎回、自分の放送をMDで聞き返し、次回はこうしよう、ここは改めようと反省しつつ番組に臨んでいた。深夜放送に移ってから、それがおろそかになっていた。次回から、きちんと自分の声は聞き返そうと改めて決意。

出て、オノと越州そばの店というところに入ってランチ(そばと鮭イクラ丼)食べる。出て事務所へ。遅れに遅れた講談社モウラ原稿を書き上げて、図版物をバイク便で送る。メール、二つほど。いずれもある仕事の依頼で、金にはならないが大変に楽しい仕事。こういう仕事で稼げればホントウに言うことないのであるが。

6時半入りのABCでのイベントまで、必死で原稿書き。トテカワのYにある程度まとまった分量の原稿を渡さねばならず。カリカリと必死で書くが、不思議に書いているとなるほど、こういう切り口もあるか、と新たな方向が示されたりする。急いで書くと手が考えて文章をつむいでいくようだ。

6時10分、プリントアウトしたもの持ってオノ、バーバラとタクシーで青山。オノにプリントアウトの入った封筒渡して、
「これ、トテカワ来たら渡しといて」
と言っておいたのだが、そこに
「カラサワさん!」
とトテカワ本人が。あわてて、オノから封筒を引ったくって
「はい、原稿!」
と手渡す。我ながらコメディの主人公みたいだ。トテカワ、髪を止めずにロングヘアになっているのだが、オノが耳打ちしてきて
「可愛いですね、今日のトテカワ」
とオッサンモード全開。いや、もちろん本家オッサンである私もそう思った。

談笑さんすでに入って着替えている。フワリさん、お腹がさすがに目立ち始めている。楽屋は先日の『魂食!』のときと同じだが、今回は予約が即効で一杯になり会場はもっと人が入るところに変更になった。人数を聞くと、私のようなイベント人間には充分前の会場で入る数であり、かつ、そっちにギュウギュウで詰めた方が絶対、談笑みたいな噺家の会ではテンションが上がってウケるのだが、と思う。まあ、以前のときもそうだったが、ここは火災などの被害を何より恐れているのだろう。

会場に入る。パイデザ夫妻が来ていた。最初に私の挨拶で談笑を紹介、
「この中に立川談笑を今日、初めて聞くという方」
と言ったら、20人くらいが手をあげるのでビックリ。
「ええーとですね、恐れを知らない方々もいらっしゃるわけで
ございまして、あ、ちょうど皆様方の後ろ、そこが非常口になっておりまして、緑のランプがともっておりますが、逃げ出したくなりましたらそちらからどうぞ」
とやる。

その後で談笑、高座に。しつらえられた高座がかなり狭いので大きな体をもてあましている感じ。最初はたぶん、これかけると思った『金明竹』。満場ワッワとウケるが、しかしどうも、マクラでアブないネタを出すたびに
「……青山だから」
と言って途中でやめ、周囲を見渡す感じあり。いや、身の保全は上り坂の身として大事なことであるが、しかしこういうところでは、と思い、終っての対談ではさんざ
「まだ円くなる年齢じゃないでしょ」
と煽ってみせる。やや、煽りすぎかな、と、話した後でちょっとコワくなったが、まあ、これくらいやらないと、エッジにいる芸風の人間はすぐ、ファンに“妥協しはじめた”と見放される。タモリだって、売れに売れてたときでも、ライブではちゃんと危ない芸をやっていたのだから。

で、二席目が本当は『時そば』をやろうとしていたらしいがやったのは『げろ指南』。最初の
「習い事をしようと思うんだけど」
で満場大拍手、これは常連さんからのものだろう。うーん、さすがにクール。過激であって、しかも後から文句の(主催者側以外からは)こないものを選んだという感じ。本当は『イラサリマケー』を聞きたかったが、これは青山という場所で、初めてで客層が読めない席でのギリギリの危ない選択。ここらへんがブラックと違うところだ。ちらちらと、ABCのスタッフ席を見ていたが、若い店員さんたちは体を折り曲げての爆笑、エラいさんと見える人たちもひっきりなしに笑っていたからまあ、よかったのではないか。

終って、サイン会。さざんかQさん、山口A二郎さんなども来てくれていた。ぎじんさん、rikiさん、jyamaさんなども一緒に、オーバルビル地下の居酒屋『野趣家』に入る。ちょっと高級そうな雰囲気の店。しかも、メンバーが全員飲ん兵衛。
「焼酎お飲みになるのなら、これだけの人数でしたら一升瓶一本、とってしまわれたら……」
という店員さんの声に全員、“そうしよう!”と一決するが財布は大丈夫かと心配になる。

とった焼酎はなんと名前が『天誅』。今度睦月さんと飲むときは絶対ここでこれをとろうと決意(後で聞いたらやはり睦月さん愛飲の銘柄であるとか)。名前の割にはソフトで飲みやすい。料理は大粒の揚げ銀杏、クリームチーズ味噌漬、イカのゴロ焼き、れんこん餅磯辺焼き、ふぐの唐揚げ、猪と鴨の合わせつくねなど。どれも美味。仙台へ行ってきたjyamaさんが、
「これは唐沢先生にも出してない」
と言われて供された尾の身の話をする。あそこは私の日記とかで知った人が行くたびに、私には出してないものが出る気がする。しかも、連続というか、彼女が帰った今日の夜は光デパートさんが行っているはずなのである。

やはり勘定、かなりの額になった模様。お車代は遠慮しておく。オノ、バーバラとタクシー乗合。車中、いつもの人物月旦。新中野に帰宅、ちょっとメールなどのぞく。それにしても今週は月曜が休日で一日短かったわけだが、水、木、それに金と、その埋め合わせか全日えらいハードなスケジュール。充実感はあるのだけど体が持つかねえ。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa