裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

10日

火曜日

アントワネットブロバイダ

携帯が買えないのならモバイルでネットにつなげばいいのに。

朝7時半、起床。入浴洗顔服薬等またいつもの朝。9時朝食、ポテトスープ、種だらけオレンジ、名古屋のゆめすけさんから到来のシャキシャキ柿。

俳優・多々良純さん死去。登場人物のほとんどが変な意味での無国籍調で笑えた宝田明主演の和製007映画『100発100中』で、空港で鳥を放して大騒ぎを起こして税関をくぐりぬける変な第三国人・黄昌齢役が印象に深い、って、こんな役が印象深くてもうれしくない
だろうが、しかし、善人役をやっても悪人役をやっても、どこかで
「一筋縄でいかない」
多重的な人格がありそうな、底の見えない個性があって(この個性は多分に非・日本人的である)、それゆえにこの第三国人役がハマリ役に見えたのかもしれない。

弟のなをきが大好きで何度もそのセリフ回しの真似をしていたほどだったのが、『帰ってきたウルトラマン』のズール星人の化けた紙芝居屋。郷秀樹が自分を宇宙人だと見破ると、周囲の子供やその親たちに
「あたしは何もしらない、あたしは宇宙人に襲われた被害者なんだ、なのにこの人(郷)はあたしが宇宙人だと言う」
とあわれっぽくわめいて、郷を悪人だと周囲の人に思い込ませてしまう。この、自分の正当性を被害者の立場を強調して同情をかいながら周囲に認めさせてしまうというキャラは、この人でなくては演じられなかったろうと思うし、騙されやすい一般市民にヒーローが悪人と思い込まれてしまうというのはそれまでの子供向け特撮番組にはちょっと出てこなかったストーリィで、凄まじく新鮮だった。これなんかも、多々良純個人の、多面性のあるキャラをうまく活かしたキャスティングだったと思う。

人間味のある脇役と多分、あちこちの追悼記事やニュースでは語られるだろうが、実はその人間味というのは、人間のエタイの知れなさの方の人間味であって、実にじつに、日本映画においては得難い個性であったと思う。ご冥福をお祈りする。

自室でラジオライフ原稿11枚。引用があったので比較的楽に長文原稿書けた。途中で弁当(イカの掻揚げ飯、原稿執筆中に“かきあげ(書き上げ)”は縁起がよろしい)使って、1時に完成。Tくんとイラストのベギラマにメール。大幅に〆切を遅らせてしまって申し訳なし。

3時、渋谷に出て時間割。日経BP社Kくん。『ケータイ・エンタ!』なる雑誌の取材。ちょっと行き違いがあり(Kくん、前回は時間割が初めてだったので東武ホテルで待ち合わせて、だったので、今回も東武で待っていた)ドタバタ。最初に路上で写真撮影。

それから携帯文化についていろいろと話す。初期の携帯事情、携帯普及に伴っての生活の変化、携帯都市伝説、今後の携帯の発展とわれわれにそれが与える影響、問題点などなど。案外ノってしまい、また話がウケるので次々にネタを引っ張り出すという具合で、5時近くまで話してしまった。楽しかったのでよかったが。Kくんは私の『Bの墓碑銘』、タコシェで買って読んだとかで、褒められてちょっと嬉しい。

事務所戻り、オノと細かな打ち合わせ関係連絡など。mixiであやさんが金沢講演のタイトルが決まらない、と言っていたので、九州からの帰途、頭に浮かんだ『怪獣と20世紀の夢』というのを提案、21世紀美術館での講演に20世紀だけではちょっとどうか、とも思うので、サブタイトルに『21世紀につなぐ幻想とロマンの系譜』とつけようとさらに提案。

そこらで早めに事務所辞去。タントンに行く。旅疲れをもみほぐしてもらうといった感じ。それから西武デパ地下で食料品買い込む。閉店間際だったので生鮮食品半額。

帰宅8時、ラジオライフTくんから連絡あって、原稿に細かなナオシ2箇所ほど。こういうチェックでこちらが恥をかかずに済むのは有難し。
さらに原稿、幻冬舎『ゲーテ』で米澤さんの追悼稿。米澤嘉博という名前もコミケも知らない人に、どうその功績と偉大さを伝えるか、いろいろと考えて400字詰め8枚強。書き上げてNくんにメール。折り返し返信、問題なし、good、とのこと。こういう、彼を知らない読者にその存在を知らしめる記事を載せたいと思っていたという。みんな、なんらかの形で彼を追悼したいと思っているのだ。

メールしたのが11時半、それから夕食というより夜食。博多から買ってきたイカメンタイ、北海道のシシャモ、黒豆納豆などで酒。ギネス、青島ビール、それに日本酒(浦霞のひやおろし)を茶わん酒で二杯。
家で飲むと安上がりだがグダグダになるのが欠点だな。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa