裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

9日

月曜日

でぶさん

大甘党の野球選手が主人公の漫画。

朝7時起床。昨晩、やや霧雨ぽい天候だったが今日は早朝から快晴らしく、窓の外が次第に明るくなってくるのが見え、時計を見ずとも時間がわかる。入浴後、K子と連れ立って朝食。地下の和食店で。まあ、普通の和定食に出るようなものだが、おきゅうとに辛子明太、焼き魚がフグ(ショウサイフグか)なのが九州っぽい。味噌汁がごく普通のワカメと豆腐のだが旨かった。

私宅をして荷物を送り、9時、タクシーで空港へ。自動予約で席をとろうとしたら、一便早く9時半のが空いているという。じゃアそれにしようと予約変更をしたら、席が離れ離れ。別に新婚じゃないからいいが、そういうことも説明しろよ、と機械に向かって毒づく。

おみやげ売り場をのぞく。イカ明太子、イワシ明太子、明太子ちくわ、と明太子づくしの中に、コンニャクに明太子を混ぜてソーセージ風にしたものがあり、商品名が『赤い恋人』。馬鹿馬鹿しくて、つい買ってしまう。

飛行機に乗り込む。機長の機内放送、声は40代というところだが妙にその文言が文学的というかポエミーで、
「途中の上空はおりからの太陽に照らされ夢の国を散歩する妖精が群れ遊ぶかのような、きらきらと輝く雲の中を静かに当機は羽を広げ進んでまいります」
「ときおり天使のたわむれか、ささいなゆれが感じられますが、飛行にはまっ……たく影響がございませんので、お心を澄み渡る湖の水面のように平静にお保ちくださり、フライトをお楽しみいただけますよう」
などとナルシスティックに語り、私含め客席の若い客たち、爆笑。フライトアテンダントの女性たちもちょっと恥ずかしげに笑っていた。

フライト自体は快適で、スープを機内サービスで飲んだあと、すぐ寝入ってしまい、群れ遊ぶ妖精もいたずらな天使もあったものでなし。空港からタクシーに乗るが、東京の空も抜けるような快晴。高速を快適に飛ばしながらまたウトウト。

K子と夜食を打ち合わせて別れ、仕事場に。メール、FAXなど雑用チェックした後、らんぷ亭で牛丼食って、中野に帰る。テレビは北朝鮮の核実験で、特にNHKは全ての番組を中止して特番を組んでいる。テレビ関係で仕事をすることもある身として、こういう特番構成には首筋がひやりとするものを覚える。“民謡コンクール”なんて番組が放送中止になっていたが、これに出演して、近隣に自分がテレビに出るから、と自慢していたお年寄りなんかがいるだろうなあ、と思うのである。もちろん、北朝鮮特番はワクワクしながら見ているのだが。

それにしても、安倍新総裁、小泉親分から引き継いで運のよさを発揮しているようである。就任早々、小沢一郎という最大のライバルが病に倒れ、かつ対北朝鮮強硬派でタカ派のイメージを政敵たちがつこうとしていた矢先にこの事件。しかも、それが安倍首相の韓国訪問に合わせたように行われたということは、自分の大物ぶりを北朝鮮が証明してくれたようなもので、しかも宥和政策をとる韓国側の面目丸つぶれとなり、優位に外交を展開できて、靖国だのなんだのといった面倒くさい問題を後回しに出来るし、ローゼンメイデン麻生と組んでこれに強気で当たれば、ゲンダイネットなどが彼に付与させようともくろんでいる、口先だけはタカ派だがいざとなれば頼りないぼんぼん、のイメージを簡単に払拭できるわけである。まったく、一部ですでにささやかれている
「安倍は北朝鮮に金を払って核実験をしてもらったんじゃないのか」
というデマがホントのことに思えてくるほどである。

天気はいいのだがどうにも眠く、6時くらいにベッドに入り、そのまま9時まで寝る。よく寝られるものだ。で、下北沢に行き、虎の子でK子と食事。このあいだはまだ、と言われた牡蛎のオイル漬けが出来ており、頼む。風味絶佳。酒は最初は別なのを頼んだがやはりなじまず、黒龍にもどす。これだなあ、どうしても。11時半帰宅、ベッドに入り、ずっと寝ていたので寝つけないかと思っていたがすぐ寝入ってしまう。どうしたのか。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa