裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

8日

日曜日

あゝ抱き枕いくたびぞ

すてる世間体は惜しまねど まだつはざるか秋葉原
オタクの吐息〈(´Д`;)ハアハア 〉が気にかかる

朝7時起床、さすがによく寝た。入浴、ここのホテル、浴槽がちょっと浅すぎると思うが、しかしシャワーの水圧は大したもので、気持ちよく髪が洗える。

8時、一回のフレンチレストランで朝食。バイキング形式だが大したものはなし。オムレツを焼いてもらって、クロワッサンとジャム。今夜も飲み会だし、軽く軽く、にしておく。

また少し休んで、10時半、階下に。昨日の立役者だったぴんでんさん、エロさん、Tさん(いちろうさん)、K子と待っている。ぴんでんさんはこれから東京行き、その後新婚旅行のニューカレドニアへ。本当Hがエロマンガ島に行きたかったのだが、政情不安定ということで許可がおりなかったのだとか。奥さん、お母さんに挨拶し、私はエロさん、Tさん、K子と熊本へ。熊本現代美術館で開催されている『生人形と江戸の欲望展』
http://www.camk.or.jp/event/exhibition/ikiningyou2/index.html
を見に行く。

前からこの展示会のことは知っていて、大阪での第一回のときのパンフの文章から、これは東京へは来ないな、と思っていた。
http://www.tobunken.com/diary/diary20040924000000.html

せっかく開催期間中に九州へ行くのだから、と思い、披露宴の翌日、一人でも行ってみてこようと思ったらエロさん、いちろうさんがガイドを申し出てくれた。特急のボックス席を押さえたというので、酒とつまみを調達して乗り込む。まだ午前中だが、かまぼこや柿ピーをつまみながら缶ビールを飲む。K子も麦焼酎の水割り缶を飲んでごきげんだった。わたしは“あごのまるぼし”というのが気に入った。固いのだが、よく噛むとくさやの風味があって最高。雑談はずんで楽しく時間が過ぎていく。久留米あたりにラブホテルがあり、母屋が四角錐のピラミッド型をしている。で、名前が『HOTEL ピタゴラス』。

1時間15分ほどで熊本着。駅前からちょっと行ったところにある『菅乃屋』という馬肉料理の店で昼食。駐車場の二階にあるという店だが、入ったとたんに一種独特の“馬の匂い”がただよい、カウンターのところにある、寿司屋のようなガラスケースの中に、馬肉が部位ごとに並んでいる。ステーキランチと、ホルモン鍋ランチを頼む。ホルモンの方には“随兵(ずいびょう)”という名前がついており、いちろうさんが女の子に意味を聞いたがよくわからないようだった。後で調べると、熊本の藤崎八幡宮に加藤清正が兵を従えて詣でたということが機嫌になっているらしい。それはともかく、馬肉のステーキの柔らかさ、さらに馬刺しの新鮮さに感動。K子もご機嫌がよくなった。
http://www.suganoya.com/

それから、祭りでにぎわう熊本市内の市電に乗って(よさこい祭り風なもので、そろいの衣装にメイクをした若者たちの姿、多々)熊本現代美術館に。ビルの上にあるとは思わなかった。閲覧料1200円払って入場。

去年見た松本喜三郎の生人形展に続く熊本現代美術館企画の展示の第二弾で、今回は喜三郎のライバルであった安本亀八の特集だった。思えば前回の松本喜三郎展も、開田さんとの営業サイン会に大阪に行ったときに偶然ポスターを見かけて驚いて行ったものであるし、今回のも、ぴんでんさんの結婚披露宴で九州に来るという用事があったので行けたというなかなかな幸運であった。

が、残念ながら、前回があまりに行き届き、スケールも大きい展示会であったのに比べると、今回は“第二弾”と謳う(“反近代の逆襲II”)にはまありに展示物がない。浮世絵や相撲関係の展示でなんとか会場を埋めてはいるものの、肝心の生人形の展示が(ミニチュアのものはあれど)野見宿禰と当麻蹶速の相撲人形、スティベルト博物館の武士像しかない(それに生人形ではないが平櫛田中の等身大人物像)のがちょっとショボい。あとは藤波小道具の歌舞伎で使う首の展示。係員が座っている奥に“18歳未満は入れません”のコーナーがあったので何かと思ったら、単なる春画の展示、それも局部には紫色の紙が貼られていた。

パンフのみ買って出る。まず、これだけ見に来たのだったら腹も立ったろうが、馬刺ランチのおかげで何とか。来た道を逆にたどり、ただし今回は酒ナシで。昨日の結婚式では負けたという結果報告でみんなが残念がったホークス、今日は買ったらしく、向かいのボックス席の家族が大喜びしていた。素朴なドメスティック・エゴの微笑ましさ。窓外に見える道路や遺跡、建物、名物の類までいちろうさんが解説してくれる。観光ガイドみたい。

ホテルまで行き、シャワー浴びて1時間半ほど休む。やがて階下で待合わせ、タクシーで前から念願のお店“赤鳥”へ。獅子児さん、しおやさんら8人で飲み会。長年これに再会したかったトサカの刺身と串焼き。もう5年も前になるか、オタクアミーゴスの飲み会でこの店に来て、もちろんトサカなどを食べたのは初めてで、それと一緒に焼酎の“佐藤”を初めて知って、そのうまさに驚嘆したのだった。

今回も佐藤を頼むが、あの頃は知る人ぞ知るであった佐藤もいまや人気商品で品切れ、と思ったら、口の開いたのがあったということでかろうじてロックで2杯ほど飲むことが出来た。有難し。

トサカの刺身のコラーゲンの甘味に陶然となって、酢モツ、エンゼル焼きという鶏の胸肉を開いて焼いたものなどを食べ、そして最後に水炊き。ここの赤鳥は焼鳥屋で水炊きの店ではないのだが、言うと作ってくれるそうで、いわゆる博多水炊きともちょっと違う、濃厚なダシの出たスープで鳥肉を炊く鍋。K子がスープに感激していた。雑談いろいろ、ばくばくと焼鳥や鶏刺しや鍋をほうばりながらダイエットの話題などで盛り上がるのが可笑しい。

食べて飲んで、さて解散。K子が昨日食べたというラーメン屋に行きたかったが、鍋の〆メがちゃんぽんだったので腹がもう麺はいいわ、と言っている。皆さんと別れ、エロさんに送られてホテルに帰る。能登、長野、九州の旅行三連チャンもこれで最後。現在の仕事状況の中では無謀な旅行計画であったが、無理して行かないと多分、十年はどこにも行けない。今後とも旅行はバシバシとすべし。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa