裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

25日

日曜日

末代までの上井草

私があの日、上井草で経験した出来事といったら……。

朝7時半起床。K子は感心に朝飯(和食)をずっと続けている。豆腐の味噌汁や野菜炒めなど、バラエティ豊かなおかずも自分で作っている。私は9時、スイカとスープのいつもの朝食。地方仕事で旅館に泊まっての和朝食は楽しみなのだが、自宅でやるにはその後の食器洗いなど、手間がかかりすぎる。

脇腹に軽い痛みあり、気になる。一日中、それが気になり鬱。『オタク清談』、昨日担当のKさんからチェック催促の電話あり、
「ああ、じゃあ今日これから送ります」
と安請け合いしていながら、他の仕事にかまけてコロリと忘れていたのに気がつき、あわててやって送る。

ベッドに横になり色摩力夫『フランコスペイン現代史の迷路』(中公叢書)読む。ちょっと前に買って読みかけていたものだが、スペイン現代史と自分との接点があまりに少なく、興味を失って途中で放ったらかしにしていたもの。それを今更改めて読む気になったのはもちろん『ネバー・セイ・グッド・バイ』を観たから、という、いささか軽薄な理由からだが、あの舞台のモデルとなった、というイメージを持って読むと、スペイン内戦というかなり局地的な出来事もまぶたにあざやかに浮かびあがってくる。ミーハーとばかにしてはいけない。それが何にせよ、スペイン現代史を学び直そう、という自分の中でのきっかけになるのは大事なことだと思う。

そういえば、この本をそもそも買ったきっかけになったのも、モンティ・パイソンのテリー・ジョーンズが監督した『ヤング・インディ・ジョーンズ』シリーズの『笑うバルセロナ』をビデオで見た、からだった。あのドラマでも最後は90歳になったインディが、第二次大戦に参加しなかったスペインを
「賢い選択をした国」
と認めていたな。

昼は弁当、ピーマンと牛肉炒め。ウマイウマイ。3時、渋谷でタントンマッサージ。これで脇腹の痛みもかなり軽減。雨ポツポツの梅雨空でどうにも仕方ないが。事務所に行き、仕事いくつか。5時、西武デパートで買い物をした後、JRで阿佐谷。『コムテツ』稽古。やっと台本に最終稿が出る。私の出演部分に最も改変あって苦労。

最後、ほぼ登場人物全員揃っての大ドタバタ場面の稽古で、張り切りすぎてドターンと盛大に転ぶ。そのときはなんともなかったが、9時、稽古終えてジャージをズボンに履き替えるとき、右足をズボンの中に入れるのに左足だけで立っていたら、関節が急に力抜けになってカクン、とくずおれ、しゃがみこむような形になってしまう。驚いたが、ケガをしたわけではなく、別段歩いたりするのには影響なし。“転ぶ”という経験を久しぶりにして、膝の関節が俗に言う“笑った”状態になったらしい。わが肉体の情けなさに苦笑。少しこれは公演までエアロバイクでも漕がねばならんか。

今日はアニドウの上映会があったはずなので、植木さんやまるさん、さざんかQさんと合流しようか、と思っていたが橋沢さんに誘われ、舞台監督の早坂さん、顔合わせ以来の渡辺克巳さんとのめるのは貴重か、と思い庄屋につきあう。舞台美術の馬場さんも一緒。ワイワイ馬鹿話の中に今回の公演の演出の基本、などという話が聞けて、来てよかった。

12時、タクシーで新中野。やはり近いね、阿佐谷は。かなり酒臭い、とK子に叱られる。転んだところが痛まぬよう、コンドロイチン錠とアリナミンをのんで寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa