裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

2日

金曜日

シビア公会堂

ああ、君たちのレベルのバンドじゃうちは使わせられないね。

朝8時起床。睡眠時間3時間半の割には元気。入浴、洗顔、歯磨如例。朝食もまた如例9時。ホワイトアスパラガスのスープとゴールデンキウイ。基本晴天なのだが、何かじっとりと朝から蒸す。母に黒の半袖シャツ洗ってもらうよう頼むが、昨日汗をかいたせいで、襟の部分が汗の塩分により真っ白。

11時半、家を出て新宿、中村屋地下マシェーズ。開田夫妻と共に金沢の21世紀美術館での企画打ち合せ。早めについたので待っていたら、先に美術館のOさん、Tさんのお二人が来て
「唐沢さんですか?」
と話しかけられたので雑談。去年、金沢旅行の折に21世紀美術館を見学しそこで昼食などとったのだが、職員の間で
「唐沢俊一らしき人物を目撃した」
と、ちょっと噂になっていたそうだ。UMAみたいなもんである。

やがて裕治さん、あやさん来て、二階席(半地下)に場所を移して本格打ち合せ。開田さんからは
「今年の夏に」
何か企画を、と言われてワタワタするなそれはと思っていたのだが、向こうは
「来年の夏」
のつもりで、しかもそれを早めて3月か4月にしていただけないかという相談で来たことが判明。こっちにとっては延びたわけで、慌てなくてよくなったのは有難し。ただし夏なら猫三味線DVDのプロモに使えると思ったのだが3月だとちょっと計画を変更せねば。

いろいろとアイデアを話す。友人関係にこういうのがいるけど彼らと一緒に、と話した某企画は、ちょうど偶然、Oさんが来年別企画として立てていた企画にぴったり。これは別にまた、ということになる。企画プロデュースはしかし、ワクワクする。

開田さんからは日記に書いた『さあ場ちがいになりなさい』の感想を開田HPに宣伝コピーとして使っていいかという話。3日のトンデモ本大賞以降からだが、開田家のHPで通販も開始されるのでチェックを。
http://home.att.ne.jp/green/kaida/
あやさんが“気圧で体がヘン”と言うので
「やはりこの気圧は朝4時半帰りの体にはこたえる」
と言うと開田さんが
「それは気圧と関係ないよ!」
別れて、『アカシア』でロールキャベツとオイル焼き。渋谷の仕事場へ。オノがゆうべはあれからどうでしたというのでベギと入った店で虎の子夫妻に会ったのでまた私の不倫疑惑が広まると思うぞ、と言うと笑っていた。エム・クルーズのネット新連載イラストの件でツチダマミにメール。いくつか候補の資料を送ったら彼女を指定してきた。うわの空とは関係が途切れたが、これはあくまで劇団/座長の村木藤志郎との関係断絶で、あそこの演出補・土田真巳との関係はそれで切れたし修復するつもりもないが、イラストレーター・ツチダマミとはお仕事は続けていくつもり。彼女も非常に喜んでいるようだ。

原稿、『プロント・プロント』。昨日原稿出した『幽』は〆切というか印刷ギリチョンだったのでゲラチェック無しでいいか、との電話。駄目とは言えず。原稿をアゲてマッサージに行く。最近、“マッサージは実は効果がない”と主張する友人の説を連続して聞いたり読んだりしたので何となく足を遠のけていたのだが、やはり、私の体はマッサージを必要とするようだ。1時間もみ込んでもらう。

一旦事務所に戻り、明日のことなどオノと打ち合せ、5時ちょいすぎに出て、日暮里へ向かう。『トンデモ本大賞前夜祭』。開演ギリギリ。受付にユキさん(談之助のおかみさん)、S井さんに開田夫妻が売り子をしていた。洋泉社の大矢くんから『快楽亭ブラックの放送禁止落語大全』一冊恵贈していただく。ここに届けるよう頼んでおいたチラシ類(『コムテツ』と10日の三省堂本店トークショー)が届いているのを確認。会場はほぼ満席の盛況だった。開演後も続々と客が入ってきて、楽屋の補助椅子を全部出し切った。ぎじんさんがいなり寿司を楽屋に差し入れ。

開口一番は志らくの弟子のこらく、軽い小話風新作。それから談之助があがって、トンデモ本大賞前夜祭らしく『立川流トンデモ人物伝』、堂に入ったネタ。前座のこらくはキウイに続き、日本で二番目に前座経験の長い(十年)咄家だが、キウイと違い全然有名でない、と言って、ものごとは一番にならないとダメ、と説く。

「日本で二番目に高い山を知ってますか? 一番の富士山しか知らないでしょう。長崎に原爆落とした飛行機の名前知ってますか? 最初の広島のエノラ・ゲイならスッ
と出てくるのに」
と。ちなみに、最初のが“北岳”、次のが“ボックスカー”とちゃんとトリビアも仕込めるのが談之助落語のすごいところ。

それから高座姿見るのは二年ぶりくらいの雷門獅篭、ネタはその頃と変わらぬ『おたく寿司』で、くすぐりとかもまったく変わってないのだが、なんなんだろう、出てきた途端に“噺家!”というオーラを発散させていた。口調もなめらかになって、やはり“今日のようにツバナレした客の前で落語をやるのはひさしぶり”というような環境であっても、毎日二回(時には三回)高座をつとめるというのは大事なことなんだなあ、と思うのである。

で、中入りの最中にプロジェクターを据え付けて急遽の入院で出演が中止になったガンダム紙切りの大東両先生のビデオと、談之助・獅篭のトーク。浪曲をうなりながらガンダムを切る大東先生の姿がいい。

それから大東先生代演の元気いいぞう。気違いぶりに拍車がかかっていて、中入りで自分のCDを売るその“存在感”に、jyamaさんが“こわいよう、こわいよう”と。もっとも、そう言いながら彼女は元気さんの舞台を大笑いしているのだが。

トリは快楽亭。杖をついてやって来ていて、ロビーで、今かかっている医者のヤブなことをボヤく。曰く
「心臓で倒れたときで、名医にめぐりあう運をつかいはたした」
と。座れないので高座に椅子を置いて、そこで『オナニー指南』。楽屋のモニターで見ていたが、会場がワンワンいうほどの受け。獅篭がさっき高座で“女性器”と言ったのをつかまえて
「なんでオマンコと言えない!」
と大喝。いや、スラスラ口にするのが問題では、とも思うのだが。

で、ラスト、ほぼ全員の出演者と一緒に私も高座にあがり、あやさん、植木さんも呼んで、明日の大賞のことをトーク。いろいろギャグ飛ばして笑いもとってまず、満足なトーク。打ち上げ、酔の助が満員だったのでバンダイに行く。案の定、植木さんやしら〜さんに受けていた。こらく、植木さん、談之助夫妻と一緒の席についてワイワイやる。

気圧のせいか、久しぶりに鬱になり(昨日聞いた某人と某女の、何とも嫌な話のせいもある)、今日もこの前夜祭、日暮里まで足を運ぶのが荷で、実はパスしようかと直前まで思っていた。しかし、やはり根っからのイベント人間なのか、参加してみれば非常に楽しく、入りがいいのが喜ばしく、高座でウケてまた嬉しく、ワリが出たのが有難く、打ち上げがまたいろいろしゃべって盛り上がる。仲間とのこういう、気を使わない一時が何よりの精神の活性剤。しかし楽しくて結局帰宅が12時過ぎというのは困ったもの。明日は6時起きだというのに。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa