裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

22日

月曜日

マルベル堂・フォン・カラヤン

 指揮者のブロマイドください。起床から出勤まで如例。うだうだと作業。GBの原稿、ネタ探しに書庫へもぐる。結局そこには仕えそうなものなく、ネットで検索していいものをチョイス。昼はオニギリに黒豆納豆。原稿書き続け、3時半になんとか書 き上げてメール。3枚半程度の原稿に半日かかるのは情けなし。

 K社Iさんから久しぶりに電話。こっちは久しぶりだが、実はこのあいだの朗読ライブにも彼、来てくれたのだった。新創刊雑誌のダミー誌を作るので、そのコラム原稿の依頼。評判を見て、よければそのまま連載となり、悪ければ一回きり。どういう雑誌かと訊いたら……うーん、私としては非常に嬉しい内容の雑誌である。現在あるその分野の雑誌がいずれもマニアックなものだから、いい具合に薄めて大衆向きにすれば化けるかも。もっとも、すぐマニア化してしまう危険もなきにしもあらずだし、マニアから徹底してウスいだの何だの叩かれそう。とはいえ、うまく動き出せば資本は大きいし、なによりいろいろと今の私の人脈を大きく生かせる。うまく行って欲し いところである。

 ちなみに、ここから私に原稿依頼が来たのは、もう一年も前に、同社の別部門にこういうのどうか、と出したまま宙ぶらりんになっていた企画を、編集長に雑誌作るから何か企画出せと言われて、とりあえず手元にあったソレを出しておいたのが編集長に“面白いじゃないか”と気に入られたという経緯らしい。Iくんから、“どこかすでに他社で動いたりしていますか、この企画”と電話口で言われたが、出した当の私はすっかりそんな企画を出したこと自体忘れていた。まさに忘れた頃に通った。やっぱり企画は出しておくべきである。電話受けながら『FRIDAY』コラム、書く。

 4時、時間割で村崎百朗さんと社会派くん対談。奈良の女児殺害の話、アメリカ大統領選の話、その他細かい事件いろいろ。かなり盛り上がった。年末刊行の本の進行のこと聞かされる。なかなか、いや、かなり大変。ゲラが読めればめっけもの、とい うところか? それにしても、今年は年末にいろいろ本が出る。

 帰宅して『FRIDAY』コラム原稿書き続ける。BGMに今日、アマゾンから届いたCD『エレクトリック・パーク』を繰り返し聞く。さくらや、ビックカメラ、ヨドバシカメラ、サトームセン等々、大手家電店のCMソング集。ソラで歌えるものもあれば、Sofmapのように初めて聞いたもの、コジマのように、最後の“コージ マっ!”しか覚えてないものまで、さまざま。

 思えば私の世代は青春を家電店と共に過ごした世代、と言って過言でない。こういうCMソングは子守歌であった。石丸電気の“でっかいわー”は手塚治虫がギャグに使っていたのが当時北海道在住の身で何のことだかわからず、受験で上京した宿のテ レビで初めて聞いて
「あ、これだったか!」
 と感動したものだった。私にとって、ある意味、東京住まいのシンボルだったのが このCMソングだったのである。

 個人的にはさくらやの『ハートでさくらや』の歌詞がやっと明瞭にわかっただけで このCDは価値がある。最後の一節が
「お気に召すまま ご覧下さい」
 だったとは! と、十年来の疑問が解けた。何度聞いても(この歌詞を聴き取るためだけに店に入って半日、メモをとっていたこともあったが)、こうは聞けない。メロディーにあわせると
「お気に召/すままご/覧ください」
 となるので、日本語があてはめられないでいたのだ。

 しかし、こうなると欲が出て、やはりさくらやは
「♪安いよ安いよダンゼン安い
 安い衝撃グッとくる
 ああ〜センセーション
 カメラのさくらや親切丁寧(こりゃ結構!)
 カメラは新宿東口〜
 安さ爆発カメラのさくらや〜」
 の方(一時はこの歌の炸裂が新宿の活気の象徴で、片山まさゆきの『ぎゅわんぶらあ自己中心派』でも効果的に使われていた)も入れてくれ、とか、ヨドバシカメラはソウルバージョンばかりでなく初期のコーラスバージョンも入れろとか、そういう贅 沢なことを思ってしまう。

 しかし、繰り返し聞いているとこれはクダ巻き状態になる。今夜の寝言は絶対、
「♪ふしぎなふしぎな池袋、東は西武で西東武……」
 とかになるであろう。あ、今回の騒動で西武がどうにかなったら、このCMソングはどうなるのか?

 コラム、続いて朝日新聞夕刊のものにかかるが、ここで時間切れ。書きながら、当初の構想とはまったく異なった方面に持っていってしまったので、執筆にかかる時間を読み違えてしまった。急いでタクシーで来たく、8時に食事会。今日はパイデザに池田桃子さん、それから稗田オンまゆらさんがお客。中華風オードブル盛り合わせから始まり、鶏のグリル(najaさんからの鶏)、赤い薩摩芋の煮物(ぴんでんさんからの芋)。カリフラワーとブロッコリのフリッター、大根サラダ、聖護院大根の煮物(以上あのつさんからの野菜)といった貰い物料理。さらにおこげ料理と、鮭ご飯までが出る。時期ものでボジョレー二本空け、さらにホッピーまで飲んだら途中で眠くなり、矢も盾もたまらず寝室に引き下がって寝る。お客さんには失礼だが、このメンバーなら気心も知れているのでいいだろう。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa