裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

16日

火曜日

カフェラテ馬鹿一代

 最高のミルクコーヒー作りを目指して眉毛を片方剃り落としました。朝7時起床。半入浴、38分朝食。黒豆ジュース(黒豆を煮た汁に少量の砂糖とクエン酸を加えたもの。血圧にいい……らしい)、キウイ、サツマイモ、トマト等いずれれも数片。天気快晴、元気回復(こう熟語をつなげると何か安っぽい漢文のようになる)。状況的 にまだ回復していないこと多々あるのだが。

 タクシーで東急本店前に。新生銀行で、先日の朗読ライブのお釣り銭などを口座に戻しておこうと思ったのだが、ここはコインは扱っていないのだった。結局、仕事場 の向かいの渋谷区役所内のみずほ銀行で振り込む。

 仕事関係メール数通。かつて同業界にいた某氏からメール、返事を書いて、その後ですぐまた返事、まだるっこしくなって電話。いろいろと話す。話すうちにトリトメなくそれからそれへ、とエスカレート。昼飯も食わずに、3時まで4時間近くの長話になってしまう。自分の感情というものをストレートに出すことはあまりしない男なのだが、今回はかなりダイレクトな物言いをした。久しぶりの経験である。同じ業界を知っている、という共通項があるからだろうが、こんなに正直なところをさらけ出したのも学生時代以来か。煙突掃除にはなったかと思うが、自分の青さもつくづく、感じてしまった。もっとも、小説が一本書けるなこれは、と、話しながらずっと考えていた。さすがにアタマの片隅では物書きの本分を失っていない。まだ大丈夫だ。

 日テレ『サンクチュアリ』から撮影用のブツ、返却。電話を中断して受け取る。あきらかに興奮した様子で出ていった姿に、ADさんがとまどったような表情をしていた。後で思い出して苦笑。電話終えて、昼飯抜かしたことに気がつくが、めんどくさ いので今日は食べないでしまう。

 3時、東武ホテル。週刊現代M氏。待ち合わせた後、移動して時間割へ。取材受ける。同誌の昭和回顧シリーズの一環で、ゴジラと戦った怪獣ベスト5を挙げて語ってくれ、と。一般誌でこういう時代になったんだなあ、と、もう何百回も思ったことを思う。アンギラス、キングコング、モスラ、キングギドラと順当にきて、さてあと一匹というか一頭というかが何か。へドラもいいがカッコよさならメカゴジラだし、個人的には実は陰摩羅鬼がモデルという(一行知識掲示板に出ていた)ガイガンも 好き なのだ。

 結局、米ソの争いのアナロジーであったアンギラス、高度経済成長で押しつぶされつつある自然の象徴(プラス、プロレスブームのパロディ)のキングコング、浪花節(親は子を守って死に、子は親の仇を討つ)の世界のモスラ、大量破壊兵器のイメージであるキングギドラ、という、“意味のつけやすい”選択肢ということで、公害という不定形の恐怖を見事に形にしたへドラにさせてもらった。媒体が媒体なので、あまりマニアックな怪獣造形論とかにならぬ、一般読者にわかりやすいものを求めてい るらしかったので。

 しかし、インタビュアーのM氏が子供時代に怪獣映画をよく観ていた、程度の知識でで、話がすぐ日活ロマンポルノとかの話にシフトしてしまうのにまいった(まあ、そっちでも話が盛り上がる私も悪いが)。それにしても、昼間に人生とは、とか熱く語った口で午後にはアンギラスだのキングギドラだのという名称を唱える。口なんて ものは融通のきくものだ。

 帰宅、いろいろと現実に戻ってメール(うわの空の島さんやおぐりなどとお仕事関係のメール)やりとり、何かホッとするが、しかしやはり原稿は書けず。仕方ない。9時半タクシーに乗っかって新宿伊勢丹地下の、丸の内線乗り場、ここで母と待ち合わせて、大江戸線駅まで歩く最中に破裂の人形ことIさんとバッタリ、雑談しながら大江戸線に乗って東新宿、焼肉幸永。K子、S山編集長、それからK子のポーランド語教室の仲間お二人。一人はこないだチャイナハウスで会った人、もう一人は今度、スイス人と結婚してスイスへ行ってしまうという人。いろいろ会話交わしつつ、ホルモン類、肉類、豚足など、母も含めてまあ、食べるわ食べるわ。普段の倍くらい食べたのではないか。昼を抜かしたことも大きいだろうが、本当に夜の食欲が凄くなっている。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa