裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

8日

月曜日

文学部茶釜

 タヌキ「お礼に小説を書いてさしあげましょう」。朝、7時半起床。さすがに飲みすぎて寝過ごした。二日酔いではないが、口から吐く息が白酒の香り。先に朝食をとり、その後で入浴。企画がらみのアイデア、またいくつか浮かぶ。絵に描いた餅みたいなものもあるが、しかしまかり間違ったときのことにも備えておかないといけない のである。

 タクシーで仕事場まで。連絡処理いくつか。日記つけ、また手紙類整理。出さねばならぬ手紙や書かねばならぬ原稿(しかもシャレにならぬくらい遅れている)が山のようにたまっているが、この十日ほどはテレビの仕事が二つ入ったこともあって、何も手につかない。とれば憂しとらねばものの数ならず、捨つべきものはテレビなりけり、か? しかし、出家して世を捨てても食っていけた薬師寺公義の時代とは違うか らな。

“ブッシュ支持の州は住民のIQが低い”というようなデータを持ち出してはしゃいでいるサイトがいくつかあった。こういうのを見ると、“なるほど、日本では逆らしい”と思えてくる。と、いうか、こういう連中が支持していたからケリーは負けたんじゃないのか、と腹立たしくなってくる。あまりに単純すぎる。ケリー陣営は今回、ネットを使っての若者層、無関心層の取り込みに熱心だったと聞くが、ネット世界内の住人には多く、“味方につけてはかえってアブナイ”という個性の持ち主が存在する。彼らのあまりに常軌を逸したブッシュ罵倒を見て、逆にケリーに違和感を持ってしまった無党派層がかなりの数、いたのではないかと想像する。『社会派くん』でもムーア映画を観た感想として書いたが、普通の精神状態にある人間というのは、あまりに徹底した悪罵に出会うと、かえってその対象に対し、“そこまで言われるほどではないのではないか”という、反対の感情を持ってしまうものなのだ。魔除けに、少しは褒め言葉を並べるのもテクニックなのである。

 昼はオニギリ(シャケ)と納豆、味噌汁。食べて、1時に東武ホテルへ。岡田斗司夫さんと『創』対談。昼時でザワつきが激しく、ここのレストランでは対談録音がうまくいかないので、時間割に場を移す。年末進行で、2回分の対談を一度にやってしまう。どちらのお題も岡田さんからのリクエストで、最初のが“ブログ”、次のやつが“マネージャー”。なにか、岡田斗司夫による唐沢俊一インタビューの様相を呈する。どちらもお題は穏健だが、ヤバいこともいっぱい話したので、かなりテープ起こ しに手を加えないといけないだろう。

 帰宅してお仕事関係のメールやりとり。くすぐリングスのくすぐり男爵さんからご紹介いただいた雑誌からメール。コラムの連載の件。私の本の定番に雑文集があるがこれの原稿集めのためにも、雑文コラムの仕事は細かくともとっておかねばならない のである。7時、バスで帰宅。

 夜は家で地鶏の会。ナジャさんが地元の九州から送らせたもの。開田夫妻、S山編集長といういつものメンツ。K子はまた和服姿。下北沢の古着屋(虎の子の二階)で買ったものらしい。彼女は体はスリムだが肩が案外いかっているので、着物姿はどうも首が短い武骨なイメージに見えてしまうような気がする。タイガーマスクの“ミスター・NO”じゃないが、肩に少し、なで肩に見えるような肩当てを入れたらどうだ ろうか(そんなものはないか?)。

 料理はカツサンドから始まり(すごいもので始まる。あのつさんの仙台キャベツを使ったもの)、それから鶏刺し。ワサビ醤油が添えられたが、生姜で食べた方がいいという者、ごま油で中華風に行こうというもの、塩だけがいいという者など、さまざま。柚胡椒もあったのでそれでやるのが最も気にいった。それからさらに塩焼き。塩と胡椒をさっとふって網焼きにしただけのものだが、鶏からにじみ出る脂が実にうまい。手に持ってかぶりつく。それをネギが吸って、これまた濃厚。あと、けんちん汁 でシャケご飯を。

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