裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

30日

金曜日

口はピザパイのもと

 はずみで(L)を頼んでしまって、一人で全部平らげるハメに……。非常にリアルに、現在進行中の某企画のための打ち合わせをする夢。夢の中で問題点として挙げられた部分は、現実に問題点としていま検討されている部分であり、さっぱり夢らしくない夢、であった。目が覚めると6時半。昨日よりだいぶ治まったが、まだ少し胃痛残る。台所へ行きブスコパン一錠のむ。大変に効きはするのだが、どうにも愛らしく ない名前の薬だ。

 いつも通り7時半に朝食、トマト、キウリ、焼きカボチャ、ズッキーニの冷ポタ。やじうまプラスで文化庁の『国語に関する世論調査』、“檄を飛ばす”とか“憮然とした”“姑息な”などの言葉を7割近くの人が意味を取り違えて使っている、との結果を受けて江川紹子が“言葉というのは年月と共に意味が変わっていくものですから仕方ない”とコメント。これはまあ、もっとも。とはいえ、意味を取り違えるどころか、今の人でそもそも“檄を飛ばす”なんて日常に使う人がどれくらいいるのか、そちらの方が気になる。小学5年生の時、クラスの誕生会の余興の連想ゲームで、私は自信満々で男性チームのキャプテンとなってヒントを出したが、“青二才”も“しゃれこうべ”もクラスの誰も知らなかったことに愕然とし、すでに日本語は終わった、と慨嘆した。いまさら、こんな結果に驚きはしないんである。一般人は日常語のテニ ヲハさえ間違えなければ、それでいいんじゃないのか。

 バスにて通勤、9時19分きっかりに来た。金曜にしてはスイスイとはかどる。車中読書、雑誌数冊。郵便局に立ち寄り、暑中見舞いの残り数枚を出す。仕事場でメールチェック、昨日送ったトリビア四コマネタの情報で最新のものが見つかったので、訂正したものを送る。あと、堪能寄席のお知らせ(大変に予約状況が好調なのでお申 し込みはお早くどうぞ)の追加情報の件など。

 続いて同誌コラム原稿、カリカリとやって1時までに完成させメール。そこらで弁当を使う。天丼弁当と瓜の酒粕漬け。食って胃を休めようとしばらく横になる。ほとんど回復したが、まだ時折シクリ、とくる。チャイム鳴って郵便局。“カラサワ先生に小包です”と、先生をこっちの名前につける。オタクファンらしく、出ると玄関のところにかけているポスター類などをウレシソウに眺めて“ああ、こういうものをやはり集めていらっしゃるんですねえ、これは昭和何年くらいのものなんですか”とか質問してくる。こういう局員なら、もっとカラサワシュンイチらしい格好で応対すれ ばよかった。甚兵衛の下履きにモサッとしたTシャツ姿である。

 NHK『アニメ夜話』、紆余曲折あって、取り上げる予定だった作品の使用許可尺数が番組一本作るには足りないとかで差し替えなどあり、ワヤワヤした挙げ句やっと私の方の出演作品、決定。録りの日時の打ち合わせなど。さて、出てしゃべるからには改めて見直してみなければなるまい、とビデオを保管した棚の方に向かうがなにしろ古い作品なので奥の方にあり、ちょっとやそっとでは出てきそうにない。これを機 会にDVDボックス改めて買うか、と思う。

 肩凝りとか疲れ、というのでなく、全身の脱力感甚だし。新宿に電話してサウナとマッサージを予約。それからメールで催促あった『Memo・男の部屋』原稿を急いで書き出す。テーマが本棚、なので実も蓋もないことを書く。実も蓋もなければないほど、こういうテーマのものは面白くなる。4枚、1時間かからずに完成。タクシーで新宿に行き、サウナ。体調芳しくないのでサウナはあっさりと。水風呂に漬かりながら雑誌読んでいる人がいた。これ、昔からカッコいいなあと思っているのだが、癇性なのか、やはり紙が水に濡れる、というのが神経的に耐えられなくって、どうも出 来ない。

 マッサージ、“今日は揉まれながらオチますから”と最初に先生に言っておく。はじめのうちはいろいろ会話していたのだが、だんだん、自分でも何を言っているんだかわからなくなり、夢の世界に落ちていく。ドイツの目薬がなぜ効くかというと…… みたいな内容の会話を交わす夢。何なんだか。

 店から直行で帰宅、母に頼まれた『天切り松 闇がたり』をビデオに録画。それから夕食。私が渋谷で漬けていたニンニク醤油で焼いた豚肉、ベギちゃんから貰った干物の残りなど。ビールのみつつ、NHK特番『阿波丸はなぜ沈んだか』を見る。今までこの事件はアメリカ側の非道、とする記事しか読んでなかったが、日本もこっそりと軍事物資を緑十字の陰にかくれて運んでいたのだな。

 このところ、寝るときに寝室の冷房でなく、リビングの冷房を入れて、寝室のドアを開け放して寝ている。間接冷房で、ちょっと電気代はかかるが、寝冷えもせず冷えすぎもせず、まことに寝心地はよろしい。猫も、この方式にしてからあまり毛玉を吐かなくなった気がする。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa