裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

14日

水曜日

渋谷区、渋谷区〜

 センター街で悪党に難癖をつけられている女子高校生を救いに揚幕の向こうから、ヒーローが駆けつけるという歌舞伎十八番。朝、水上バス(普通の観光バスがいきなり川に入って水上バスになる)に乗る夢。7時起床、朝食中田から到来のハムと水菜のサラダ、カブのポタージュ冷製。ジェンキンズさん来日決定にテレ朝の大谷昭宏氏が“来りゃいいってもんじゃない”と発言。じゃあ来なければいいのか。要するに、この来日で政府の点数が上がることが気にくわないらしい。それはそれ、これはこれという割り切りが出来ないのは老人性の視野狭窄症である。脇でわめいている勝谷誠彦氏はただの道化だし、あのキャラクターはテレビには必要だと思うが、大谷氏の方 の最近のボケっぷりは見ていて痛々しい。

 女子柔道の谷選手、というと今だ“誰だそれは”みたいに一瞬考えてしまうがヤワラちゃんが大阪での練習中に畳の隙間に足をはさんで転倒、かかとを痛めて練習離脱というニュース。毎日通勤する道にある鋼管業者の倉庫の壁に彼女の写真と共に“危険物・ゆるむ心に帯しめて”という標語が書いてあるが、こういう事故があるとポスターを発注した先も迷惑な話であろう。バス、18分に来る。19分のが早めに来て しまったのか、その前のが遅れたのか。

 仕事場着、メールチェック。『GON!』Sさんから原稿依頼、もっともリニューアル前の、エロ雑誌としての『GON!』の方への依頼で、70年代エロ本についての思い出など。こういうテーマでの依頼は何かうれしい。あと、インタビュー依頼電話留守録にあり。弁当、サバ味噌煮。食後パルコブックセンターに行き、資料収集、 果たせずに立ち読みのみして帰宅。

『本家立川流』用の座談会原稿テープ起こしやる。談之助やブラックから聞いているエピソードでも、その現場にいた当人たちの口から聞くとさらに生々しい。これは外野からの想像なのだが、なぜ、談志がこのように意味のないイジメとしか見えない行動を繰り返すのか、については、談志一流の歴史感覚のなせる業ではないか、と思える。すでに高座の面で自分は全盛期を過ぎてしまっていることを自覚しながら、しかし川戸貞吉などの功績でベストの口演はすでに記録されており、自分の名人としての名は残る、ということでまず、安心しているのだろう。後は自分のキャラクターを、志ん生や先代馬風のように落語界の伝説として後世に残さなくてはならない、という意識があり、このような奇人のわがままぶりを発揮しているのではないか。ただ、多くの噺家のエピソードというのは、周囲にとっては迷惑な奇行であっても、その天衣無縫故に可愛げが醸し出され、“いい話”として伝えられる。談志の場合、頭がいいだけにそこに何か演出というか計算というか、が見てとれて、スッキリしないものが 残るのである。

 1時、時間割にて『創』岡田斗司夫さんと対談。岡田さん、担当のKさんがお気に入りで、写真を撮る。サイトに上げるのだそうだ。本日の話題は『コミックマーケット』。話は盛り上がるが、終わったあたりで“考えてみれば、今回はあまりアブナい ことを言ってないねえ”と。

 昨日のティーチャさんの件について、うわの空のツチダマさんから、座長・ティーチャさん本人共に快諾を得たとのお答え。すぐSさんに連絡をする。その他、いくつかメールで連絡事項あり。その中でちょっとうれしい報せもあって、暑さによるバテと仕事の詰まり具合で鬱っぽくなっていた気分が改善、かなりハイになる。しかしハイになった反動で、そこらを動物園のクマみたいに歩き回ったり、メモみたいな走り書きばかりしたりして、仕事はさっぱり進展せず。困ったモンである。

 アスペクトからFAX、何かと思ったら『本の雑誌』の吉野朔実の『待ち合わせは本屋で』で、『社会派くんがゆく! 死闘編』が取り上げられており、“なにげに読み出したら止まらない。まるで高度な飲み屋の会話だよな、これ”と褒められていました、とのこと。吉野朔実と『社会派くん』の取り合わせというのもミスマッチぽいが、それより何より、今日パルコで吉野さんの単行本を立ち読みしてきたばかりだっ たので、西手新九郎に久々に仰天させられる。

 9時40分、新宿に出て、丸の内線新宿三丁目駅で母とK子と待ち合わせ。『すし好』新宿店に行ってみる。なぜ新宿店に行くかというと、下北や中目では、帰りの車代が高くつくから、というセコい事情。場所は区役所前の大変にいいところにある。しかし、前に何か別の店が入っていた場所に居抜きで入ったらしく、天井が低く、下北や中目の店舗に比べて少し狭苦しく感じる。で、他の店舗のマニュアルで、店員さんが“へいらっしゃい!”“まいどありがとうございますっ!”と叫ぶと、天井や壁に反響して、非常にやかましいのである。おまけにちょうど女の子の休息時間だったらしく、ビールやおしぼりのサービスが徹底していない。しばらく、飲み物も何もない席で手持ちぶさたな時間を過ごしてしまい、それにカウンター内の職人さんが、いろいろ気をつかったりするのが、居心地を悪くしてしまった。ネタは生まぐろが入っていて、なかなか結構だったが、さて、下北からこっちへ席を移すか? となると、 いささか微妙なところ。

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