12日
月曜日
レ・見せブラル
見せるばかりで外させてくれないとは、噫無情。朝、ロシアアニメ『雪の女王』の上映会で昔、同人誌でつきあっていた子と出会う、という夢を見た。二人連れだったが、その連れの子というのはまったく顔にも名前にも記憶がない。夢で面白いのはこ ういうキャスティングであろう。
6時45分起床、7時半朝食。新ジャガとキウリのサラダ、冷ポタージュ。新聞には大きく民主躍進、自民敗北という文字。……そうかねえ? 年金問題、国連軍参加問題、それに北朝鮮問題という三大問題を抱えて選挙に臨んで、選挙前の調査であれだけ劣勢を伝えられていて、それで一議席しか議席を減らさなかったというのは(まして改選議席数は五議席も減っているのだ)今更に国民の自民だよりが露呈した、という分析にしかならないんじゃないのか。民主は単に上記の三件に腹を立てた大衆の 一時的避難場所以外のものではない。
朝食は新ジャガとキウリのサラダ、冷ポタージュ。ゆうべポストに投函されていた『トリビアの歪・2』の初稿ゲラチェックしながら摂る。25分バス、途中で車椅子のおじさん乗り込み、パスも出しづらそうな中風のおばあさん、無闇に美人の妊婦、骨折して腕を吊っているサラリーマンなどが次々乗り込み、ポリオの私も合わせて優先客車の様相を呈するが、誰も“私は弱者”というような顔をせず、優遇してほしげな顔もしないところがよし。道は月曜にしては空いていてスイスイ行く。
選挙結果を受けて社会派くん号外をまた出すので1000字書いてくださいとのアスペクト編集部からの依頼。あまり気乗りしない原稿であったがザッと書いて送る。『歪2』のイラスト図版選定、それからFRIDAYのゲラチェック。
京極夏彦氏から送った同人誌のお礼メール。アーリー・パブリケーションの馬鹿ホラーは大変お気に召した模様で、これでまたひとり有力なファンを増やしたとニヤニヤする。弁当、ハンバーグ。小学生になった気分で食べる。書き下ろししなくてはならないと気はムチャクチャにあせるが、SFマガジンの連載原稿も催促のメールが来 ている。どうしても雑誌の方を先にやらざるを得ず。申し訳ない。
資料はいいもの(よほど濃い読者でも知らないであろうネタ)があり、テーマは前からやりたかったものであり、どこからどんな切り口でも書き出せるのだが、それだけにさて、どうやって書き出すか、そこで悩んでしばし躊躇。こういうことはよくあるもの。迷った末に書き出した時間がかなり遅くなり、結局、アニドウの上映会に行 かないと間に合わなくなり、明日ということにして6時に中断。
タクシーで中野まで。今日のアニドウの上映会、一切お知らせの葉書などを出していないようで、いつもは満席、立ち見も出る会がガラガラ。30人程度か。私も、サイトで今日やるということを読まなければスッポかすところだった。常連のK氏と植木不等式はちゃんとサイトをチェックしていらしている。流石。小腹が空いたので、ブロードウェイで助六寿司の小折を買ってロビーで喰う。なみき氏、『日本漫画映画の全貌』の図録編集で死にかけている様子。今日も、本来はそっちの方にかかりきりになっていたいのを、会場を押さえているので仕方なく、といった開催なのだろう。 挨拶も説明もなく、上映作品のプログラムもないままに上映開始。
最初はドンヨ・ドネフの『三馬鹿』シリーズ。まあまあの出来だったが、その後の二本がなかなかブラックで結構。一本は『ザ・ワイズ・ビレッジ』だろうか。解説がないんでわからない。人や動物がポコポコ死んでいくのがいい。音楽も東欧っぽい。
それから日本漫画映画発達史『漫画誕生』。昭和46年度芸術祭参加作品、いかにも当時の教育映画という感じの絵の質感、ナレーション。もったいないのは、こういう作品の上映こそ『日本漫画映画の全貌』の会場で上映してほしいのに、比較的新し い作品ばかりで、一般の客が見ることが出来ないことだ。
それからイギリスのマイケル・ミルズ監督『幸せの王子』。回り込み映像多々で、イギリスの現代アニメというのは『クリスマス・キャロル』もそうだが、回り込みを特徴とするのか? と誤解されそうだ。ナレーションはクリストファー・プラマー。植木さん見終わって曰く、“宗教に洗脳されて自滅していくツバメの物語ですネ、こ れ”と。私“まあ、もともと蘆に恋するようなヘンな奴ですから”。
終わって、植木さん、Kさんと例により裕香園。朝日新聞のO氏も会場にいたので誘ったが、出張続きでフラフラなので帰ります、と。例により333ビール、それからいつもの串焼き、海老すり身パン(お気に入り)、生春巻など喰いつつトリトメのない雑談。植木さんが酒メニューの中の“ベトナム焼酎”というやつに興味を示し、一本とる。ロックで口に含んでみるに、なんというか、ココナッツのようなゴマのような、不思議な味わい。口当たりがきわめていい。ネップモイという銘柄らしい。
http://store.yahoo.co.jp/takamura/8934591002049.html
これ三人で結局、12時くらいまでかかって一本を空けてしまう。話は当然ダダベロになっていき、一番理性的なK氏ですら終電車を逃してしまった。私はもうナニがナンだかわからなくなり、植木さん相手に、40代半ば過ぎての物書きの肉体的・精神的なモチベーションの衰えをいかにカバーするか、を話す。仕事や地位の向上に反比例して体力と気力が衰えていくのが40代・50代で、これを賦活させて乗り切ることの出来た者だけが生き残れる、プロの物書きとしてそのためには手段を選んではいけない、みたいなことを言って植木さんを少しヘキエキさせたかも。しかしまったく、我が身をかえりみて、なんとかせんとという思いはある。