11日
日曜日
にがりの国から正義のために
きたぞわれらのお豆腐マン。朝7時起床、寝床で芦辺拓『妖奇城の冒険』(学研エンタティーン倶楽部)読了。かつての少年探偵モノのノリを現代に再現させて、“現役の小学生”にレトロな雰囲気の小説の面白さを伝えようという、芦辺さんならではのマニアックな凝り様が楽しい(それこそポプラ社や偕成社のように、挿絵が見開きの本文を斜めに横切って入っていたりして、装丁の人が悲鳴をあげたそうだ)。しかもそれが時代錯誤ナンセンスでなく、現代にも通じる内容にしようとしているあたりに、こういうものでミステリの世界を知ってはまりこむファンをまた育てていこうという執念も感じられる。昔ながらの製法と味にこだわって酒を醸している杜氏にも似たイメージが芦辺さんにはある。最後に解明される真犯人はある程度本を読みなれている小学生なら想像がつくだろうが、その謎を解く鍵が、導入部で示される何の変哲もない応対のセリフの中に実は隠されていた、というあたりにゾクゾクする子なら、 絶対にこういう世界のトリコになるであろう。
ニンニクミソつけてカブとキウリを囓って朝飯。朝から何となく気圧不順、肩がバリバリに凝る。バス27分のもので出勤。今日でこないだまで使っていた5000円のバス券を使い切った。日曜なので仕事場近辺極めて静穏、ときおり響く“本日は投 票日です”という広報のアナウンスが、より静寂感を増す。
神戸の月城飛鳥さんとメールやりとり、サイン会とトークライブについて。その土地々々で状況を心得てくれている人が動いてくれているのは有り難し。しかし午前中 はほとんど、その他いろいろな雑用でツブれてしまう。
昼飯の弁当、本日はシャケと卵焼きがお菜。扶桑社本のあとがきから先に書き、それから残りの原稿2本、書き進める。以前に雑原として書いたものを元にしているがそこらへんに書き足しをして、トンデモ本用の原稿にまとめる。きちんと読めるレベルにものに客観的に見てなっていると思う。と、いうか、最近心に思っているようなこととか状況を、数年前にきちっと文章にしてまとめていたということに、読み返してみて自分ながら驚く。こういうメモが見つかるということも何かの暗示か。
4時15分に完成させた原稿類、まとめて扶桑社にメール。外出、投票所になっている小学校をのぞき、様子を見てから公園通りのタントンマッサージへ。あまりに肩の張りがひどくなっているため。日曜の夕方など空いているかと思ったが、私の前にも後にも予約者がおり、私でちょうど、ベッドが満席(満台というべきか?)になっ て、後の人は20分待ちになった。何かいい気分である。
初めての先生だったが、45分、揉み込んでもらう。私が時折ここに通ってきていることは知っていて、“この前はいつごろおいでになりました?”と訊く。“忙しくて少し間があいちゃったですねえ。一ヶ月くらいかな”と答えると、“ああ、やはり間が空いたんですねえ。どうしてこんなにまでなっちゃったのかと思いました”と言 われる。そんなにヒドいのか?
揉まれ終わって、ブックセンターなどで時間をつぶし、7時45分、渋谷駅ハチ公前で待ち合わせ。今日は母とK子、S山さん、I矢くんと、S山さんのみつけた道玄坂のドイツ料理の店へ。道玄坂のかなり上の方で、しばらく歩く。酒類輸入会社のアンテナショップで、安いが味はなかなかなのだという。K子をそういう店に連れていくというのはロシアン・ルーレットみたいなものでアブナいのだが(以前はI矢くんが見事に頭蓋骨の中に鉛弾をぶち込んでいた)、S山さんはなかなか自信ありげ。しかし、飲み放題2時間限定なのに酒が出てくるのが遅いとか、ワインの説明が長いと か、そのワインがジュースみたいだったとか、ちと先行きに暗雲が。
……しかし、それらの不安もオードブルのソーセージや生ハムの盛り合わせが出てきた時点でかなり解消される。案外旨い。もちろん、カイテルやバル・エンリケなどに比べては可哀相だが、生ベーコンなどという珍しいものもあり、飲み放題コースの料理としては十二分な合格点ではないか。その後、ムール貝のスープ煮が出るが、これも肉厚で汁気がたっぷりの貝で、エンリケの重厚なそれとは違った気軽なうまさ。オムレツもシンプルで卵がふわふわで、母も喜んで食べていた。私は、飲み放題の酒類の中にシュナッブスがあるのに歓声をあげる。黒ビールと共に三杯、クイクイとあけて、最後にはかなりベロとなる。ご機嫌でそのことを店員の女の子(ちょっとハーフっぽい子だった)に言ったら、“三杯も召し上がる方も珍しいいです”と感心されたんだか呆れかえられたんだか、した。K子も、これだけの料理でお一人2500円というリーズナブルさにご機嫌。四海波静かにて太平。母と三人でタクシーで帰宅。運転手さんと開票速報を聞きながら選挙トリビアばなし。