裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

12日

金曜日

過呼吸音頭でキュッキュッキュッ

 頭クラクラ吐き気もひどいよ、ホーレ過呼吸クールクル。明け方、長々と夢を見続ける。花菜閉店に関する夢だった。私が街宣車みたいな車で店の前に乗り付けて、なんかしゃべっていると、店のガラス戸の中で平塚くんや虎の子の萩原さん(彼は花菜に行ったことがないはずだが)がガラスをどんどん、と叩きながら、何かを伝えよう としている、という。

 7時50分起床。朝食はタモギタケのスープ、それに二十日大根の生齧り。二十日大根、やたらに辛い。ネットと電話で仕事のこと数件連絡。仕事場のエアコン、ゆうべから油が切れたか、カリカリカリキュルキュルキュルクリリリリリ、と音を立ててうるさいことこの上ない。K子は管理会社に文句を言え、とせっつく。昼頃に電話するか、と思いながら仕事していて、あまりにうるさいので、カンシャクを起こして、バシン、とひっぱたいたらピタリとその音がおさまった。あまりの結果に驚く。機械 も人も、うるさいときにはひっぱたくというのは時に効果がある。

 外はかなり暑そうだが、Web現代のネタひろいをしないといけない。カメラを手に外出、センター街を歩く。江戸一で回転寿司。エンガワ、サーモン、真鯛、鴨とろなど、一時ここは味が落ちていたが、全盛期にかえったようなうまさ。文庫タワーの店頭で“オタクシニア”というタイトルの本を見つけ、ああ、もう第一世代オタクたちもいい年になってきたんだから、シニア世代向けのオタクライフの本も必要だよなあ、とか思ってよく見たら佐藤賢一の『オクタシニア』であった。東急デパート東横店へ足を踏み入れる。取材。最初、思ったような絵がまったくなく、少しハズしたかな、と舌打ちしそうになったが、館を間違えていたことが判明、東館の方に場所を変 えて、ほぼ、思惑通りの取材が出来た。満足。

 その足で、宮益坂までエッチラと歩き、渋谷郵便局で古書変奇堂さんからの荷物を受け取る。7日に届いたが留守だったので保管してある、という通知に返事がないので最終通知、という葉書が今朝郵便受けに入っていて、最初の通知なるものに記憶がないので仰天して、急いで取りにいったもの。しかし、こういう高飛車なところを見ても、もう荷物の輸送に郵便局というのは使えないな、という思い切。本の詰まった重い段ボール箱を抱えて、ヨイコラショと家まで帰る。モノが本だと、重さが苦にならないのは不思議。と、いうか、重いほどニコニコとしてしまうのである。

 服を靴下に至るまで取り替える。シャツなど、水にひたしたような案配になっていた。ネットでダメ人間がダメ人間を集めて開催したオフの記録などを笑いながら読んで疲労の回復につとめ、『人はなぜ異星人(エイリアン)を追い求めるのか』の続きを寝転がって読む。三分の一を過ぎて、やっと本書のノリがわかって面白く読めるようになってきた。夕刊に、東大が開発した、寝た状態から跳ね起きるロボットの写真が載っていた。体には外装がほどこされているが、頭の部分はメカニックが剥き出しである。私の世代のマンガファンだと、この姿のロボットを見るとどうしても“ファ イア三世か?”などと思ってしまうのであるが。

 MLに少し書き込んでペン慣らしをし、5時半から原稿書き開始。モノマガジン原稿400字詰め6枚。材料を詰め込んだだけで枚数は超過してしまうので、どこでどう抑えて、エッセイとしての形に整えていくかが眼目。8時までに完成させて、編集部となをきのところに送信。タクシー飛ばして参宮橋まで。車中運転手さんと不景気論議少し。この運転手さん、顔が銀河出版のIくんにそっくりで、しゃべり方もそっくり。人間の顔と口調には相関関係があるという私の説をまた補強する材料が。

『クリクリ』でK子と夕食。イカとオクラのサラダ、カジキマグロとポテトのロースト(ポテトにローズマリー風味のカジキマグロの脂がからまって美味)、ひなどりの半身にタルタルステーキ。ワイン一本二人で飲んで陶然となる。奥の席に、会社の先輩女性社員と食事しに来た若い男性の二人連れ。ちょっと川島なおみが入った(隠し味程度にちょっとだが)女性上司との食事に、若い男メロメロらしく、ときおりふっと会話が途切れる。このまま渡辺淳一路線に突っ走るか、と、ハタで見ていて他人事ながら気になった。パスタ食べたかったが我慢。女房の格別のお許しをいただいて、焼きイチジクのアイスクリームをデザートとして食べる。つくづく、砂糖というのは 麻薬である。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa