裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

5日

金曜日

全裸は続くよ、どこまでも

 乳出し毛を出し、××出して〜。朝、寝坊した、と思って飛び起きたが、時計を見るとまだ7時15分。寝ぼけたか? 朝食は半熟卵とトマト一個、それに梨(西武でK子が買ってきた500円の)。千疋屋の梨に比べて半分のお値段だが、甘味はむしろこっちの方がある。梨(二十世紀)の値段というのは歯触りのソフトさに大きく関連しているのだな、と思う。そう言えば『魔の山』の中に、“ニュルンベルクなどの都市では拷問の際、罪人の口に梨を押し込んで、声を立てるのを防いでいる”という一行知識みたいな記述があった。西洋梨の形は、言われてみればボンデージ用のマウ スピースぽい。

 日記つけ、仕事がらみメールやりとりしばし。岡田さんからは対談OKとの返事、協力有り難し。その後、『社会派くん対談』の原稿チェックにしばらく没頭。気がついたらもう1時5分前。風呂にも入ってない、ヒゲも剃ってないが、1時からモノマガジンの担当引き継ぎ打ち合わせがある。あわてて顔だけザッと洗って出る。時間割に飛び込むが、誰もいない。おかしいと思ってもう一度外に出てみようとしたら、外でさっき携帯かけていた人が新担当さんで、旧担当のAさんが道に迷っているという ので、いま迎えに行ってきます、とのこと。

 しばらく待って、やっと二人揃った。新担当Tさんと名刺交換。連載はD編集長にも好評なようで(とはいえ、連載開始時に“この連載は絶対ウチで本にさせてもらいます!”とメールもらった約束が全然守られていないがなあ)、そのまま続行、ただし今の隔号連載というのはちとこちらも気勢がそがれるので、半分の量にして毎号というのはいかが、と提案。そのくらいでお開きにしてもよかったのだが、頼んだコーヒー等がなかなか運ばれてこない。雑談でつないでいるうちに住宅論に何故かなってしまう。隣の席では、『遊戯王』のゲームだかアニメだかの打ち合わせ。デザイナーさん、プランナーさん、集英社の人など七、八名で、モバイルのパソコンなどを持ち 込んで、がやがやと。

 話し込んでしまって、歯医者に行く時間が迫っている。急いで帰り、シャワー浴びて、冷蔵庫の中のウナギの冷凍と、こないだの蒸しものの余りの三つ葉で即席ウナ茶漬けを作ってかきこみ、歯を磨いてまた家を出る。井の頭線、ちょうど急行に乗ることが出来て、永福町まで、そこで連絡している各駅に乗り換え、西永福。あふれる汗をタオルでぬぐいつつ、S歯科に久しぶりに。歯石を取ってもらい、歯茎の様子を見てもらう。急いで出たので、やはり歯の磨き方がヤッツケになっていたようで、注意された。

 帰宅、仕事をと思ったがテンションが大低下しているので、とりあえず、と、来年のと学会新刊(二年ぶりの本家と学会本)用のネタ本選定を、MLにアップする準備をする。書庫にもぐってみたり、いろいろ。今日は珍しく昼寝はせず。少しずつ回復はしているか。『人はなぜ異星人(エイリアン)を追い求めるのか』、ぼちぼちと読む。SETIにまつわる人物をレポートした一章、二章から、UFOと人類のかかわりを説明する第三章に入ったとたん、筆致がガラリと変わり、皮肉っぽいジョーク満 載のエッセイというおもむきになって、ちょっと面食らう。

 7時半、家を出て、K子と神山町で合流、タクシーで代々木上原まで。新しい店の開拓。上原の駅から歩いて二分、ネットなどでは非常に評判のいい、Sという料理居酒屋。こぎれいな作りで、広い店内は金曜夜ということもあり、お客がほぼ満席の状態で入っている。各種地酒を取りそろえていることで有名らしいが、まずは生ビールを貰って、店内の様子を二人で観察。カウンター、椅子席、それに小上がり二席と、かなりの客数が入れられる作りになっている。逆に言うと、今日のような満席の状態ではかなり窮屈で騒々しい。テーブルとテーブルの間が数センチの隙間しかなく、落 ち着けない感じである。

 生ビールがかなり苦い。苦いのが好きな人もいるだろうが、日本食と一緒に飲むものとしては苦すぎ。しかも、お造りを頼んだら、ほとんど数分もかからずにサッと出てくる。早いのはいいのだが、あまりに早いので、“切って置いておいたのではないか?”などという疑念もわく。ビールのアテにと頼んだ衣かつぎが三番目に出てくるが、華暦の衣かつぎにくらべ粒が大きく、その分手で持って食べにくい。冷蔵庫に入れてあったとみえて冷たい(華暦では常温)。抹茶塩が添えられているが、小芋には普通の塩の方が合う……と、別にクサしに入ったわけではないのだが、次々に欠点が目に入ってくる。日本酒に切り替えたが、桝つきグラスに、最初から注がれたものが出てくる。地酒居酒屋なら、客の目の前に瓶を持ってきて、銘柄を確認させた上で注 いでほしいものである。

 暇な時に入って、カウンターでゆっくりと酒を選んで……というような風に味わえばまた別だったかも知れないが、ちょっとなあ、という感じ。値段はそれで華暦の倍である。……たぶん、よほどのことがないともう来ない。一番おいしかったのは最後に頼んだ茶蕎麦だった。帰宅、と学会本のネタ本リスト、一応第一次候補としたものを完成させてアップする。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa