18日
金曜日
ケツのホクロはバドーのしるし
よく見破った、俺は殺人組織バドーのカマホリマン! ……オタクネタですいません(しかもホモネタ)。ところで勝新太郎主演の『警視K』ってドラマがあったが、あの番組名、最初に聞いたときは“ほう、ロボット刑事も出世して警視になったか”とか思ったもんである。朝、8時半起床。やっぱり夜更かしすると駄目。K子は9時過ぎまで眠っていた。ゆうべはハードゲイの店は休みだったので、ダンスバーで踊っ てきたそうである。若いねどうも。
朝食、トウモロコシのスチーム(1/3本)とジャガイモのビシソワーズ。もう7月も後半に入ろうというのに、いまだ梅雨明けず。むしむしじめじめ。注文した発酵茶が二ケース届く。ペリカン便だったが、ハンコ押しに玄関に出たら配達員が大喜びしたような表情で、“こないだテレビで見ました!”と言っていた。テレ朝のもので あろう。私は見のがしてしまったのだが。
日記本の解説を書いていただく予定の方々にメール出したりまたいただいたり。1時にロフトプラスワンの斎藤さんが来宅予定なので、資料を書庫から出したりする。斎藤さんから、15分ほど遅れると電話。なら、この間に昼飯を、と思い、戸棚の中にあった『香り細切りネギ厚切り焼豚しょうゆラーメン』というエースコックのカップラーメンを取り出す。ところがそこに電話あったり宅配が届いたりという細々したことで時間をくってしまい、湯を注いだところで斎藤さん来。仕方なくそのままにして、インタビュー(『ルーフトップ』用)受ける。9月10日の紙芝居ライブ宣伝のために、紙芝居の話などをいろいろ。そのあとで、オタクアミーゴスやくすぐリング スの大阪公演の話なども出て、この件に関してもいろいろと。
で、気がついたら一時間近くたっていた。斎藤さん帰ったあとで、おそるおそる、台所に置きっぱなしの『香り細切りネギ厚切り焼き豚しょうゆラーメン』(長すぎるね、この商品名)のフタを、開けてみる。当然のびきってはいるが、まだ食べられそうなので、立ったまま、ズルズルとすすって、これが今日の昼ご飯。何か私は美食ば かりしているようなイメージがあるが、こういう昼飯の日もある。
で、急いで外出し、『時間割』へ。河出書房Sくんと打ち合わせ。20分ほど待たせてしまう。『われわれはなぜ怪獣に官能を感じるのか』、見本刷り出来。表紙はごくフツーのヌードになってしまった。カバーをはずすと、本来使用するはずであったモデルさんのポーズのシルエットがあらわれる。ああ、コッチの表紙だったら売上げ も倍増したことであろうに。
しかし、表紙はともかく、中身は濃い。河崎実、中野貴雄、睦月影郎、ベギラマといった人をはじめ、畸人研究の今柊二、ご存じ永瀬唯、文芸評論の安藤礼二、性民俗学の菊池祐司、さらに阿部能丸、のざわよしのり各氏が、いずれもノリにノッた原稿を書いてくれていて、私が読者なら大喜び、の本に仕上がった。開田、品田、実相寺の三者インタビューも、それぞれの特色が出ていていい。実相寺監督の友人(本当に友人か。本人の体験じゃないのか?)が山小屋で何ひとつオカズがなく、古新聞の写 真の神近市子でやった、という話は何度読んでも抱腹絶倒である。
しばらくSくんと雑談。中野貴雄とベギラマでは本を作りたい、という話。私の次回刊行の本についても、企画があちらから出て、それなら、と話がまとまった。考えてみれば処女単行本を出した1990年以来13年間、一年も途切れずに単行本を出 し続けられているのは、このご時勢に奇跡みたいなことである。
帰宅して、じっくりと河出の本を読み返す。私のゴムフェチ原稿も諸氏の原稿のテンションに負けていない。やや安心。4時、海拓舎H社長来宅。今日は矢継ぎ早、という感じ。やっと『壁際の名言』、著者用本が確保できた。神田某書店では最初納入の50冊があっという間にハケ、あわてて追加入れたが“やはりイキオイは落ちました”とのこと。もっとも、それでももう20冊はハケているのである。八王子はいまいちパッとせず、立川では凄い、と、地域格差がかなりあるのが面白い。
唇のはしに、口唇炎のようなものが出来た。あんな延びたラーメンを食ったせいではないかと思う。旭堂南湖さんからの8月の独演会のお誘い。それで思い出して、神田陽司さんの会はいつだったか、とあわてて確認。明日だった。アブナイところである。来週は梅田佳声先生の猫三味線もまたあるし、なかなか忙しい。南湖さんと芦辺 拓さんには独演会についてのメールを。
7時15分、渋谷駅でK子と待ち合わせ。明日の朝のパンがなかったことを思い出して、東急東横店の地下で買い物。K子と恵比寿にむかう。フカヒレ専門の中華『筑紫楼』で講談社の会食。担当Yくん、前担当Iくん、デザイナーのNさん。青菜と貝柱の炒め物、ピータン豆腐、蟹肉の卵白炒め、フカヒレスープ、ニンニクの茎と牛肉繊切りの炒め物、そしてフカヒレの煮物。昼が昼だっただけにうまいうまい。ただしこの店はほとんどどのグルメ系サイトの感想でも、
「味はいいがサービスがイマイチ」
と書かれている。確かにお姉ちゃんに愛想がまったくなかったりする。こういうときは、無愛想も期待通り、という感じで喜んだりする。
K子の秋の東邦学園の講義のことを中心に、いろいろマンガ界の話題。Yくんに薫風の娘さんの作品を見せて講評を乞うたり。Iくんは、いわゆるアート系のマンガ作品に対しなかなか手厳しい。彼が編集を担当した大杉一雄『真珠湾への道』という大著をもらう。なんだかんだいいながら、本当によく仕事をする編集者だなと思う。この著者は1925年生まれの78歳なのだが、“いやあ、こう蒸し暑いと年寄りにはこたえてねえ”というのでIくんが“まあ、そうでしょうねえ”と同情すると“お袋が具合悪くなるんで世話が大変なんだよ”と言ってくるので、仰天したそうである。母上は95歳なのだそうである。“もう、そこまで生きると、あとは滅多なことで死 なないからねえ”と私。
最後は土鍋ラーメンと杏仁豆腐で〆。ここの土鍋ラーメンの白濁したスープは、新宿鳥源の水炊きスープに匹敵する。杏仁豆腐も、ミルクのエッセンスを凝縮した、という感じでよろし。ただし、K子はこういう“歯ごたえのない”モノは食わない。青島ビールに紹興酒。9時にはもうお開き(この店の閉店が早い)というのは、昨日が昨日だっただけにちょっと物足りない。次の取材のことなどをYくんと打ち合わせてタクシーで帰宅。