17日
木曜日
勘定不器用
はて、何度計算しても答が合わぬのう。朝、7時45分起床。朝食、発芽玄米粥、梅干、スイカ。この発芽玄米粥、紀ノ国屋の青山本店で売っているものと東急地下店で扱っているものと種類が違って、本店のものはねっとりしており、東急のものはサラサラしている。以前、近くのコンビニで売っていた中華風玄米粥がうまかったのだ が、コンビニはすぐ、商品が変わってしまう。
昨日の兎の子の話、日記を書いたあと、気になっていろいろ調べる。兎の子が盲になる話は宮沢賢治の『貝の火』だった、と確認したが(野火助さん、桐生祐狩さんなどからもご指摘をいただく)、私の記憶のものとはだいぶ異なる。だいたい、宮沢賢治なら後でも読み返しているし、もっと明白に記憶している筈。読み返したことで逆に兎の子の目がつぶれる、というのが記憶にまぎれこんできているので、本当は犬とか猫の子が単に不具になる話だったかもしれない。もう少し調べる必要がある。しかし、久しぶりに読んでみると、この『貝の火』というのもまた、不気味な話である。突如思ってもいなかった栄誉を与えられ、みんなから褒め称えられることで次第に人格(いや、兎格)を破綻させていく主人公。栄誉というものは与えられた者を逆に引きずり回し、さまざまな誘惑にさらすことになる。幼い子供にまでこんな精神的重荷を背負わせ、しかも最後にふくらふ(梟)に
「たった六日だったな、ホッホ
たった六日だったな、ホッホ。」
とあざ笑わせるのである。この話では最後に父親が厳然とした態度をとった後、愛情ある言葉を子供にかけるのがまだ救いだが、これでも十分、トラウマになる童話ではあろう。なお、私はこの童話は旧かなで読みたい(最初に家にあったのが旧かなの本で、“ふくらふ”という表記が幼児期の私に、何か化性の生き物という感じを抱かせた)ので、下記サイトがおすすめ。
http://tirukuru.jp/pyon/text/miyazawa_kainohi.html
午前中はずっと原稿書き。Web現代原稿11枚をなんとか一気に書き上げてメール。ふう。昼食はハチバンラーメン。間違えて二玉茹でてしまい、食べて腹が少しきつい。打ち合わせ電話頻々。テレ朝のコメント料は、驚いたことにこれまでよりかなり額が上がっていた。それほど私のコメンテーターとしてのランクが上がったわけでもなかろうから、局全体で改善がなされたか? あと、ちくま書房から電話で『トンデモ一行知識』、増刷決定とのこと。苦笑しながらちゃんとオビに『トリビアの泉』のことは入れます、とのことで、ああ、みんなちゃんと気を働かせてくれている、と感謝する。二見書房Fくんとは週明けに打ち合わせ。今、何冊動いているのか、ちとこんがらかる。
梅雨あけはなかなかしない。体調悪いのがこう続くと、その状態になれてしまう。なんか精神状態が物狂おしいのも、悪い体調を支えるために脳内麻薬が分泌でもされているのかな、と思ってしまう。メール数通、サイト書き込み一件。しばらく横にな り、英文の本を読んでいるうち眠くなる。
7時半、家を出て新宿へ。伊勢丹会館内三笠会館で、『虎の子』の萩原夫妻と食事会。スタッフ、全員女性ばかりかと思ったら男性もいた。しかし、基本的にみな新人という感じで(新しい女性支配人、スーツ姿が何かコスプレみたいに見える)、サービスの手際イマイチ。人を招いたときにこれだ。イカのパスティス風味、エスカルゴに水茄子と牛ヒレローストのカラメルソース。夏野菜のパスタ。萩原ダンナから、いろいろ元アイドル取材の裏話などを聞いたり。『磯自慢』の話をしたり。ダンナはぼんやりと覚えている、という。K子、私に取材用の安デジカメを買ってくる。
食べ終わって、二丁目の、キミ子さんいきつけのバーへ。ゲイバーということだが全くそういう感じのしない落ち着いた店。カラオケで数曲。選曲が全部パネルタッチのリモコン端末で行えるのはいいが、やはりカラオケボックスに比較すると曲数が少なすぎ。男性陣はここでもうヘバって帰ろうとしたが、キミ子さんとK子は、さらにハードなゲイバーへ行こう! と二人して二丁目の奥の方へと入っていく。タクシーで帰宅、買い物したものを冷蔵庫などへしまいながら、CDで昔のCMソング集をかけたら、“磯自慢”の曲がかかった。“♪ノーリのツクダニ磯自慢……”と歌っている。ア、磯自慢はツクダニだったか(ふりかけは『磯の吹き寄せ』だったな)と、急いでキミ子さんに伝えようとK子の携帯に電話するが、つながらず。さらにかけようとしたが、別にツクダニとかフリカケとかのことでわざわざ夜中に電話するには及ばんと思い直して、そのまま寝る。K子は3時近くに帰ってきた。