見るも笑ましきカツなれば、今後はそう名乗るがよい（孝謙女帝）。朝８時起床。７時に目が覚めたのだが、そのままダラダラとベッドの中で寝ころんでいた。朝食、発芽玄米粥、漬け物、ゴールデンキウイ。今日は新聞休刊日なもんで手持ちぶさたである。活字中毒、情報中毒。蜂巣敦氏から恵贈あった『殺人現場を歩く』（ミリオン出版、写真・山本真人）を読む。著名殺人事件の現場を、綾瀬女子高生コンクリート詰め殺人事件から新宿西口バス放火事件、井の頭公園バラバラ殺人事件、そしてわれわれも訪れた（蜂巣さんのところには刑事はいかなかったのだろうか？）世田谷一家惨殺事件と、入念に訪ねて、その“かつて事件があった場所”のレポートを行っている本。一般的には鬼畜猟奇ものとかの棚に並べられる本なんだろうが、この本はそこから一線を画した、日常の不気味さを伝えてくるものになっている。なにげない風景にかすかに刻まれた忌まわしい事件の記憶を、上から紙を当ててロウ石でこするようにして、陰画で浮かび上がらせる作業なのだ。１８の「現場」写真をじっと見ているうちに、何か“地霊”のようなものの存在が、ぼんやりと伝わってくるような、そん な感覚さえ覚える写真集である。

　こないだ悪口を書いたテレビ朝日から電話、“些少ですがコメント料を……”と。さすがにただ働きではなかったよう。それにしても遅いが。入浴、シャワーノズルをこないだ取り替えたのだが、いまだにこの新しいのに慣れない。ノズルの角度が変わり、お湯の噴き出す角度が変わるので、当然、頭を下げて湯を浴びる、その頭を下げる角度も変えねばならぬ。このマンションに入居して７年、ずっと定位置にしていた頭の位地を変えるのだから、そう急には順応できぬ。特にシャンプーの際には目をつぶるので、意識よりも体の記憶が優先されてしまいがちである。二度目のすすぎのときなどほぼ毎回、何の気なしに取っ手を回して、顔にいきなり直射を浴びてビックリする。あわてて止めようと手を伸ばしても、体の角度が違うので、延ばした位地に、取っ手がないのである。老人が引っ越した途端にボケはじめるというのはこれのせい かな、とも思う。

　今日は一日中ずっと、アスペクトの作業となる。本当はＳＦマガジンもやりたかったのだが、気圧のせいで体調途中からクズレ、ダメと相成った。１時半までに、なんとか２００２年７月分を片付けてメール。太田出版から打ち合わせ予定についてメール来ていた。食事は今日もハチバンラーメン。冷蔵庫の中のしなびたキュウリを繊切りにし、ササカマボコも同じく繊切り、チルド室に残っていたアブラゲの切れっ端を 醤油と味醂で甘辛くして、冷やし中華の具とする。

　食べて横になり、洋書（イギリスの第二次大戦後のＢ級ペーパーバックの歴史本）を読む。アメリカの作家ならばＢ級であってもまだいくらかは日本に紹介されているが、イギリスのこのテの作家はほとんどこちらには初見の名前ばかり。まあ、普通はイギリスの西部劇とか、イギリスのギャングものとかいったパチもんをわざわざ翻訳しようとか思わないか。ＳＦものの表紙など、アメリカのそれよりかなり安っぽくて いい感じである。

　中で繰り返し繰り返し名前の出てくるイギリスの最大の人気ギャングもの作家、ハンク・ジャンソンの名前は、かのモンティ・パイソンのコントにも登場する。
http://python-airways.cside.com/sketch/10-librartan.htm
“ハンク・ジャンソンの本を開架式の書棚に置く”とテリー・ジョーンズが言っているが、この人は暴力とセックスの描写で人気があったらしく、日本で言うと、お堅い国立図書館が西村寿行の作品を貸し出す、というところなのだろうか。まあ、　日本では岩波文庫に入っているダニエル・デフォーの『モル・フランダース』を、娼婦モノとして（決して間違ってはいないが）エロチックなイラストの表紙をつけて、ペーパーバックで出してしまう（１８世紀の本なのに）というのはいかにもイギリスとい うか、モンティ・パイソン風なことではある。

　夕方まで眠ってしまう。体力が落ちているというより、体調の不全であろう。久しぶりに祖母が夢に出てくる。私はこの祖母とコンビで私立探偵をやっていて、犯罪現場に彼女の世話をしながら足を運ぶのである。ふと目が覚めて、時計を見るともう４時。あわてて、後の作業をやる。まあ、後はサクサク進み、４時４５分に８月分と９月分をアゲてアップ、あと７時までに７回に分けてチョイスと構成をやり、なんとか全部送り終えた。それから今度はタイトルのシャレの選定にかかるが、さすがにこれ は途中でダウン。

　８時半、神山町華暦へ。ほぼ満席。Ｋ子が先に来て席をとっておいてくれた。イサキとマグロの刺身、タコの唐揚げ、ウドとミョウガの酢の物、おでんなど。肌寒いので、酒はお燗。夏コミ同人誌『あなたの血が欲しイーイーイー！』の校正刷りが出てくる。一部、解説を改稿するつもり。帰宅、メールチェック。筑摩書房、ゆまに書房からそれぞれ仕事の件で。