裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

4日

金曜日

角膜もかしこき

 けつまくえん、はくないしゃう、ものもらひ、とらほーむ、そのたもろもろのまがつめのやまひあらむをば、はらへたまへきよめたまへとまをすことをきこしめせと、かしこみかしこみまをす。朝、7時45分起き。朝食、トウモロコシとソラマメの蒸したもの、サクランボ。イラクへの自衛隊派遣が衆議院で可決。小泉という人の首相としての一番の能力は変にプライドを張ることなく、アメリカにべったり貼り付くことが出来ることだと思う。これは皮肉ではなく、真面目にそう思う。メッテルニッヒやタレイランの時代から、外交とは強い者には徹底して媚びを売り、尻尾をふり、ついでその強い者が力を失ったら、道義も友情もあったものでなく背を向けることだ。弱小国が生きていくのにこれは必須の能力であり、なにひとつ恥と思うことはない。 実は日本人に一番欠けているのはこの能力ではないか。

 個人の正義と国家の正義は決して同一のものではない。むしろ180度反対のものだと思わないといけない。ここを一緒くたにして、倫理的スジを通すということに執着し、一時の快を感じることを優先させて国を傾けるのは、少なくとも政治家として褒められた業績ではない。イラク攻撃の際にアメリカやイギリスが示した大量破壊兵器存在のデータにウソがあったのではないか、というニュースに今さら騒いでいる人がいるが、じゃあそもそもあなた方は最初はアメリカが正しいことをしていると思っておったのか、と問いつめたい。そのデータが本当に改竄されたものであるかどうかはともかく、こういうニュースの噴出が国内から出たものだということに目を向けてみればいい。戦争に勝った後は、勝った為政者の力が強くなりすぎないよう、世論が 反作用を起こす。これはアメリカがまだ、健全な国である証拠なのである。

 朝、K子が持ってきた暑中見舞い葉書を最終チェックして、出す。年賀状は挨拶の意味があるが、暑中見舞いは営業という意味合いが(私の場合)強いので、普段、なにかのイベントとかで顔を合わせる確率の高い人には直接手渡す、ということにしよ うとK子と。

 午前中、昨日打ち合わせした方向性で、日記のチョイス。1999年の9月と10月分を仕上げて、MLにアップする。昼は外に買い物に出かけ、青山で立ち食いの冷やしたぬきソバ。先日、水曜9時のゴールデンタイムに移行してから初めて放送された『トリビアの泉』、視聴率27パーセントいったとかで、OTCのIさんからメール。1パーセントで100万人が見たことになるというから、日本全国であの番組を2700万人が見たということか。つくづく、出版という世界とのスケールの違いに天を仰ぎたくなる。テレビなにするものぞと言いたくはあるがこれでは勝負にならない。せめて、今後自分の本のオビに“あの『トリビアの泉』のスーパーバイザー!”とかせっせと入れて、一般大衆に媚びを売らねばなるまい。小泉サンの気持ちがよく わかる。

 午後はずっと立川流同人誌の座談会原稿テープ起こし&構成。テープ聞きながらゲラゲラ笑うが、構成に苦心。以前の志加吾・キウイ問題のように核があるものじゃないからであろう。廣済堂・Iくん、ちくま書房・Mさんから電話。いずれも原稿催促である。留守録に二回続けてモノマガのAさんから。特別号で連載、一回トバシにな るという件。

 結局、テープ起こしは三分の一ほど。6時半、渋谷駅前にてK子と待ち合わせ。恵比寿でと学会有志ととんかつオフの予定なのである。ホームでIさんと出会い、例のガーデンプレイスへの長い通路を通って。植木不等式氏、開田あやさん、IPPANさん、Tさんというメンバー。IPPANさんがボーナスが出ると食べにくるというトンカツの“かつ好”という店。静岡に本店がある店らしく、黒はんぺん、しらすなどがおつまみとしてある。植木さんとIPPANさんがオーソドックスに吟醸黒豚のトンカツ、われわれはしゃぶしゃぶ揚げ(薄切り肉を巻いて揚げる)、メンチ、黒はんぺん(はんぺんというよりはツミレ風)、串カツなどで。ふげん焼却炉火事、共産党の外での飲食禁止令(すぐ撤回されたげであるが)についてなどでワイワイやりな がら。カツはさすがにさくさくとしておいしい。

 そこでひとわたり食べ終わって、次は植木さんの紹介する中華点心の店へ。これがガーデンプレイスの反対側で、恵比寿をちょうど横断する形になる。駅前に出て、昔スペース50のあった付近でその話。IPPANさんはあそこの親父に、“キミは原辰則に似てるねえ”とか言われたそうである。そう言えば、面影がなきにしも。点心の店というから中華風かと思ったら、“ル・パルク”とかいう、フランス料理屋っぽいお洒落な店であった。ロートレックの絵の複製などが飾ってある。空芯菜の炒めもの、卵の乗った海老の蒸し餃子などがうまかった。紹興酒飲んで、いろいろ話すが、やはりこういう店はちとわれわれの飲み会には上品すぎるかな。恵比寿というより、もはや代官山のはずれ、という感じなのだろう。Iさんが、思い出した、ここは昔、会社の先輩の結婚式の二次会をやって、自分が幹事をやったところだ、とか言っていた。10時半ころ、チョイ早めだがおひらき。タクシーで1000円かからずに帰宅 できた。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa