裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

27日

金曜日

恋は馬刺、野辺の花よ

 田谷力三先生のお元気の秘密は馬肉に!(植木不等式さんの日記に煽られて馬刺ネタで行きます) 朝8時起床。暖房はつけていても、パソコンのある窓際に行くと寒いこと寒いこと。朝食、オニオンスープに菜の花を入れて。果物、切らしたと思っていたら、イチゴが三粒ばかりあった。

 講談社Yくんから電話。依頼のことで。かたじけなし。ささきはてるさんからも、即、応諾のメールあり。ありがたし。オタクは相身互いである。日記つけて、昨日書きかけになっていたフィギュア王の原稿を、ラストを少し手直しして、字数合わせ、アゲる。プリントアウトして、出かける前のK子に渡す。来年〆切の原稿だが、松明けすぐなので、前倒し。松明け第一週の打ち合わせもすでにつまり始めている。

 帰省用の荷物をK子がまとめているので、その中に私の下着とかも詰めてもらう。と学会の冬コミ用会誌出来、眠田さんから送ってくる。今年はいい紙(90グラム)を使っているせいか、貫目があってなかなか増刊号らしい立派さである。捨て紙ページまで色違いで入れている(サインスペースか?)のが贅沢。昼は金沢Sさんから到来のハチバンラーメン、これで最後。入れる具がなんにもないので、ノリをちぎって浮かして、ノリラーメンにする。どどいつ文庫伊藤さん来。メキシコ製のガイコツ人形などをお歳暮にくれる。フランス製の、69写真集などという本を買う。ページ数が全部で69ページ、値段が69フラン。こういうのをエスプリというのか? 伊藤氏帰るのと入れ替わりに、アニドウから注文していた書籍が届く。何か、金がサイフから羽が生えたように飛んでいく。今月は少しネット古書にハマりすぎた。とか、なんとか言いながら、また一冊注文。

 原稿書き、続き。世界文化社用のもの。これは引き続き正月にも実家で書き続ける予定なので、その資料をまた別に梱包する。3時、時間割でDさんと打ち合わせ。スケジュールの確認。Dさん、風邪声である。ひいたのは私のせいだというから何だと思ったら、この日記読んで、『椿説弓張月』ぜひ観てみたくなり、こないだ行ってきたとのこと。“とちり”のいい席(歌舞伎座では前一列目からいろはで席番がついていて、7、8、9列目あたりが最もいい席とされている)が飛び込みでとれたのは、きっと関係者席とかを間際に売り出すんですね、とか言っていた。猿之助劇団の役者はやはりイモが多いというような話、勘九郎はシアターコクーンでもやはりクサい芝居をやって好評だが、評論家が観に来ている、と聞くとより熱演してもう大クサの芝居になるので、たいてい悪く書かれる、とかいう話。評論家というのはサービス一杯にされるとかえって機嫌が悪くなる、という奇妙な習性を有する動物なのである。評論家の言うことを信じて、それの勧めるものばかりを追っていると、一生、本当に面白い映画や小説、芝居などを味わえずに終わってしまう危険性があることに、一般の人々は気付かなくてはならない。評論家である私が言うんだから間違いない。しばらくオーバーアクト演技論。誰それってのもやはりOAC(オアック。オーバー・アクション・クラブ)会員ですよねえとか言って笑う。ともかくDさんは、この寒い中、あの換気装置のショボい歌舞伎座で4時間芝居を観て、覿面に風邪をひいたのであった。

 お歳暮のワインを貰って帰宅。これで、当面の〆切仕事、まだ書き下ろし単行本のものは残っているが、年内のものはクリア。やれやれ、と背伸びをする。仕事量は大したことがなかったが、ストレスのたまる数日であった。肩がパンパンである。新宿に出て、今年最後のマッサージ。さすがに大混みである。店で一番力のあるお兄ちゃんに、思い切り強く揉んでもらうが、このお兄ちゃんをして、“背中に全然、指が入らない”と驚かせた。

 そこを出て、地下街で買い物少し、小田急で下北沢。年末の雑踏の中を歩いて、8時に『虎の子』。キミ子さん、厨房の中でふるえている。以前、上にあったレトロコレクションで店員だったAちゃんがバイトで入っていた。K子、冬コミ用の私のアメリカバカマンガ本を持ってくる。年末のサービスで獺祭と綿屋を一杯づつサービス。綿屋にコットンクラブというファンクラブがある、と以前日記に書いたがあれは間違いで、同じ醸造元にコットンクラブという酒があるのだとか。突き出しの海老マヨネーズ焼き、サーモンのマリネ、美味。塩豚、かれい煮付け、じゃこと水菜と豆腐のサラダ、それに鴨つくね鍋。私がすぐ酔っぱらうのを見て、K子が“私はこれからいい気持ちになるところなのだ”と言う。アルコールの吸収が遅いのであろう。さらにもう一杯、追加して飲み、私はいい気持ちになりすぎ。

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