裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

13日

金曜日

憎いアンティーク・ショウ

 裕次郎遺品の骨董家具即売会。朝、7時45分起床。朝食はオニオンスープに温泉卵。K子にホウレンソウ炒め。果物はポンカン。テレ朝スーパーモーニング、今日はまた山梨学院大の宮塚先生ゲストで“北朝鮮のナンパ事情”。核再開発疑惑はどうした。

 今朝は長い長い夢を見て目が覚めた。人が読んでも面白くないと思うが心覚えのために記しておく。夫婦でベイサイドの高層マンションに引っ越した夢。ここは高級マンションではあるが、建て増し建て増ししで大きくなった建物のため、最新式のところと、無茶苦茶に古いところがごちゃ混ぜになっており(住居区画は古い方)、内部は迷路のように入り組んでいる。最新の部分には劇場やテレビ局が入っていて、クリスマスにこの劇場で私が仕事をして、それが深夜に終わり、係員が後かたづけなどをしている中を、私たち夫婦はクリスマスの買い物袋などを手にいっぱい持って、住居区画へ帰ろうとする。有名ディスクジョッキーだという(K子がそう教えてくれたが私は知らない)そめいてるヲという人物が住居区への近道を案内してくれる。深夜ではあったが、住居区の入り口はクリスマスのため、やたら混雑している。みると、同業者のAさんが警備員をやって忙しそうにしている。K子が彼はここのマンションの住人なのだが、家賃の助けに警備員のアルバイトをやっているのだ、と説明する。安全確保のためのロックシステムがこのマンションにはあり、警備員から仮キーを受け取ってエントランスに入り、その仮キーはキー入れに戻しておくのだが、そのキー入れの口の蓋が旧式できしんで開きにくい、とK子はブツブツ言っている。入り口を抜けて、10階にある自分たちの部屋まで行くためにエレベーターに乗らねばいけないのだが、エレベーターホールの横に、会場にセリ出したつくりの喫茶店兼レストランがある。普段はもう、閉まっている時間なのだが、クリスマスのせいかまだ開いており、老婦人たちが外人の船員と一緒に古い洋モノの歌などを合唱している。その歌を聞いているうち、窓の外から見える港町のネオンが、すさまじく美しく輝きだして、もっとよく見ようと窓際の席に座る。各地の観光船が港に入ってくるらしく、名古屋のシャチホコ船などが見える。K子は喜んで写真を撮っている。そのうち、座席自体が動き出す。この店は水上にセリ出しているばかりでなく、定期的にマンションから切り離されて、そのままスクーナーとなって港湾を一周するのだ。窓を開けていたためにしぶきが入って、少しズボンを濡らす。またもとの位地に戻ったところで店を出て、とんだところで時間をつぶした、早く部屋に帰ろうと思うが、ついた位地が違うらしく、またマンションの外に出てしまう。また住居地区の入り口から入ると、A氏と顔を合わせることになり、バツが悪いので、裏の荷物運搬用エレベーターで10階まで行こう、とK子が言う。それに乗り込んだら、数人の若い人間が乗り込んできて挨拶をする。みると、さっきの劇場の出演者とそのスタッフたちである。私も挨拶をすると、彼らはニヤニヤしながら、胸ポケットから注射針を取り出す。そうして、それを私たちの腕に突き刺そうとする。ドラッグを勧めているのである。彼らはみな、重度のジャンキーだったのだ。私は恐怖し、刺そうと向こうが突きつけてくる針をかわしながら、“いやなの、わたしたち、ドラッグはやらないの”と、何故かオカマ言葉で拒絶しながら、早くエレベーターが10階についてドアが開かないか、と考えている。

 扶桑社Oくんから、こないだ撮った写真が届く。悪ノリしているなあ、私。ちょっと、これがらみで面白い状況が他にも生まれそうなので楽しみである。ネット書店でおとつい注文した本がもう届く。かなりのレア本なのだが、美本で、値段も非常なる適正価格。そのテにマニアックな古書店の中には倍くらいにつけているところもある代物なのである。しかも注文からたった2日で手元に届く。私は古書市などの棚は目的なくノンビリ眺めるのが好きで、目録片手に開場と同時に突進するというのはどうも性ににあわなかったのだが、目的本はこういうところで買って、棚見はまったく偶然の奇書との出会いを期待してぶらりぶらりと、という両極化がますます進みそう。

 久しぶりに大塚幸代さんのサイトをのぞく。昔、“逃げないでくださいね”と怖いメールいただいたことがあるので、逃げないで時々は追っているのだが、確かにこの人が見つけてくるネット画像は大変に面白い。B級グルメへのこだわりも好感が持てる(そう言えば彼女は以前、『日曜研究家』の手伝いをしていたんだった)。『わしズム』に載っているしりあがり寿さんの作品に対し、“鼻をペッとかむようにマンガを寄稿していて、どこかのインタビューで「スキあらばマンガを描きたいんです!」とおっしゃっていたことが実践されていて、すごいなあと思いました”とある。たぶん大塚さんの心の中で、尊敬しているしりあがり氏と小林よしのり氏のつながりを、何とか正当化しようとする努力みたいなものがあって、こういう解釈に至ったのだろう。私は編集長から、この雑誌に氏が描いている意外や意外の理由を聞いているので苦笑するばかり。彼女だけのことではないが、ある作者(音楽だろうと、マンガだろうと)を好きになるとき、その人の作品以外のものの考え方や嗜好までをも、自分の理想形に重ね合わせようとする人がいる。これは作者にとってはかなり迷惑なことなのではないか。こういう思考が暴走すると、ストーカーになったり、その作者の、自分の考えとは異なった言動などに、“裏切られた”と思いこんでネットで糾弾しはじめたりするようになる。

 2時、時間割にて二見書房Yさんと打ち合わせ。考えてみれば、去年の末も末の、29日に同じ本の打ち合わせをしているのだ。一年越して(発案があってから二年以上)引っ張っている。で、まだ完成していない。しかし、その間、私にもいろいろと精神的な開眼があり、悶々もあって、やっとここまで来て、長編小説を書くというモチベーションが体内で発酵した、という感じがある。そのことをいろいろ話す。話しているうちに、あれは希有な体験であったか、という気に自分でなってくる。去年もプロレスのことを話したが、今年も馬場のことなどを話す。

 4時、帰宅。ライターのNくんからお歳暮で貰ったウナギでウナギメシを作って、遅めの夕食。食いながらネットを見てたら、ドイツで、“自分に食われてくれる人募集”の広告をネットサイトで出し、それに応募してきた男を殺して食った男性の記事があった。食った方が41歳、食われた方が42歳。いかにもドイツらしいエグさである。ネットは稀書も探し出してくれるし、自分に食われてくれる人も探し出してくれる。私に月100万円づつ無償でくれる人はいないか。50万でもいい。

 5時半、タクシーで新宿ロフトプラスワン。くすぐリングス大忘年会。師走の金曜で道がかなり混む。ビルの入り口のところで石原さんが立っていた。幻冬舎のことを私に報告したいらしい。連れて入る。楽屋に、今日届いた金成由美さんからのお歳暮の日本酒のうち一本を差し入れ。今日は派手にやってね! と激励。

 石原さんに、今後のことをレクチャー。来年はとにかく、幻冬舎の書き下ろしに全力を傾けなさい、と言っておく。そのうち、宇多まろん以下のファイターたち、亀頭たけるくん、神田森莉、中野貴雄などの面々が会場入りし、にぎやかになってくる。悪いが石原さんの相手ばかりはしていられず。カンザキカナリさんは来ていたが、猫戦車マリィさんは用事でギリギリになるという。ちょっと現場に緊張走る。やはり、彼女のアナウンスあっての興業なのだ。神田森莉相変わらず飄々たるいい雰囲気、中野監督はヒゲを剃ってモミアゲをのばし、眼鏡がスチール縁になって、ますます宮塚先生に瓜二つになる。今朝はこの先生、“北朝鮮の恋愛関係は”と質問されて、“北朝鮮には日本と違いラブホテルがないので……”とやりだし、渡辺宜嗣が“先生、恋愛のことですよ、いきなりラブホテルまでいかないでくださいよ!”と笑いながら急いで引き戻していた。中野監督率いるギャルショッカーは来年、青山スパイラルでの公演があるとか。彼のサイトを作っているマニア氏(と、中野監督が紹介)とも挨拶する。監督自身はいまだパソコンを所持しておらず、ネットカフェに通い詰めで、もう四日も家に帰ってないとか。中野監督のお気に入りは宇多まろんのサイトで、日記の文章がいい、と大変な惚れ込み様。
「ボク、20代の娘っこの文章に影響受けて、最近自分の書くものが似てきちゃっているんですよ」
「ここの声ちゃんの文章もそうでしたけど、先人の文章にまったく影響受けていない若い子の文章の迫力ってありますよねえ」
 などと会話。

 6時半、開場。この寒空に5時前から並んでいた人もいるとかで、会場はすぐに超満員の状態となる。マリィさん(児玉さとみさん)も10分前に無事到着。席について本日の打ち合わせ。『大きいのがいいの? 小さいのがいいの? 子供電話相談室マッチ』のコールのときに、無着成恭で合いの手を入れることを提案。石原さんは、またまた新宿で知り合った女の子というのを呼んで、相手をしていた。楽屋にカメラを忘れたので取りにいくと、モモ・ブラジルや秘書のフジコくんなどが、すでに差し入れの酒を飲んで大盛り上がり。ツマミがこれも差し入れのケーキやアップルパイ。うひゃあ、悪酔いしそうだ。モモが“カラサワさん、見て見て”とTシャツをめくると、巨大なオッパイ丸出しの、すごい舞台衣装。

 試合開始、今日は入りもよく、今年最後ということもあり、選手たちのノリがまるで違う。マッドブラバスターLEE、キティはるかなど、嬉々としてはしゃいだり脱いだりして騒いでいる。新人タイガー・リリー選手はマリィさんの親戚だそうだが、天然の女王さまぶりが凄まじい。天然と言えば、の宇多まろん、相変わらずのダルなトーク、すばらしいの一言。しかしプリンセスみゆきことベギラマが、何かいつもにも増して異様なオーラを今日は舞台上で発していた。モモとの巨乳・貧乳対決(これが上記の子供電話相談室マッチ)で、マリィさんの子供声のコールにつけて、無着成恭節で“あのね〜ボク、大きいのも小さいのもいいんだけど、おじさんは大きいのが好きなんだよお”とやる。無着成恭なんて知っているヤツがいるか、と思ったら案外ウケた。

 後半は隠し芸大会(どういうキャットファイト団体だ)。まず春咲小紅、たけるくん、神田森莉の三線とギターの演奏、キティはるかとたけるくんの没ファイトネタ漫才、タイガー・リリィ、ジェーン・マヤ、宇多まろんの女王様トーク、プリンセスみみゆき、モモ・ブラジル、すでにただの酔っぱらいと化したLEE選手の“童貞救出相談”など。壇上でLEEに脱がされたプリンセスが、上半身ハダカのままで“こないだテレビで『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』っての見てさあ”と話し始めたら、隣りにいた開田あやさん(モモのおっぱいに陶酔状態)が、
「素晴らしいッ! 美少女が乳まるだしで怪獣の話をしているなんて、全てのオタク男が夢に見たことだよオッ!」
 と興奮する。……それは夢というより、アブナい妄想の域ではないかや? あやさんは、最後のフジコくんによるカンフーミキへのボディペインティングにも大興奮していた。

 さらにくすぐり男爵秘蔵のNGビデオ集、中野貴雄もゲスト解説で上がって、いつものノリで。深夜企画があるというので10時前にお開きとなったが、いや、いつに増して濃くてどうしようもなくていい会であった。カンフーの、ポスターカラー塗られてパリパリになったおっぱいと並んで写真を撮ってもらう。下関マグロ、駕籠真太郎氏などに挨拶。マグロ氏、私と中野監督の2ショットを撮影していた。ギャラをいただくが、こんなに笑わせて貰って返って悪いくらいである。フジコくんに、風船ふくらましマッチのとき、酒と甘味が入っていることがわかっていたので、もどすのではないかと心配だった、と言うと、“あの程度の酒、楽勝っスよお!”と。強いね、 若い子は。ベギラマと、扶桑社の例の本の企画のこと少し話す。

 11時、タクシーで渋谷。華菜でK子と落ち合い、遅い夕飯。小柱掻き揚げ、太刀魚塩焼き、揚げ出し豆腐。それに店から豚汁、蕎麦の芽おひたしなどがサービスにつき、デザートのリンゴまで。もり一枚とって、掻き揚げで天ザルにして食べるが、かなり腹がくちくなった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa