裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

11日

水曜日

イ・ムジチ、ケムチはさんで捨てろ

 いつまでも『四季』で日本人のフトコロ狙ってんじゃねえ! 朝、何か非常にぐっすり眠ってしまい、8時過ぎ起床。朝食、スープスパ。果物切らした。風邪のせいかきのうの極ホルモン食い過ぎのせいか、腹がしぶり気味。正露丸をのむが、新しくあけた瓶のニオイ強烈で、手といい口といいクレオソート臭くなってまいった。

 雪は降ってないが、寒い。朝は窓の側にいたりすると(パソコンが窓の側だから、どうしてもいるのだが)手足が心底冷え冷えとする。ただし、風呂につかると、じわあ、と温かみが染みてきて、温泉に入ったようないい気持ちがする。MLでトンデモ本大賞東京開催、正式発表(会員向け)。一般向け発表はコミケ直前あたりか。

 もう、尻に火がついているどころか下半身は黒コゲ状態なのだが、午前中はエンジンいかにしてもかからず、何度も原稿、書きかけては消去、の不発状態。それでも、構想メモをいじくっているうちに、ある程度は完成した本のカタチが見えてくる。どうしても目を通しておかねばならぬ資料が出てきて、国会図書館に行くか、と思ったのだが、ネット古書店で検索したら一冊だけ、在庫のある書店があった。即、注文。

 昼は青山まで買い物に出たついでに、チャーハンと酢豚を買って帰り、ワケギ入りの中華スープを作って、それで食べる。食べながらCDでロンドン中世アンサンブルによる『インスブルックよさらば』を聞く。チャーハンと中世歌曲とは妙な取り合わせだ。食い終わって、調整豆乳飲みながら古新聞を読む。千葉茂氏死去(10日)の報があるが、この人の活躍期には、私はまるでカブらないので、野球関係でのイメージはわかない。カツカレーの確か発案者だった、ということで名前を記憶している。カツライスとカレーを別々に食べるのがめんどくさいので、カレーの上にカツを乗っけて持ってきてくれ、と頼んだのが始まりだそうな。ところで、黒澤明が自作の映画『七人の侍』のことを表して“トンカツとビフテキを盛り合わせて、その上にカレーをぶっかけたような映画”と言っていた。黒澤は比喩で言ったんだろうが、千葉氏が何かでこれを目にして、うまそうだと思い、たまたまいきつけの洋食屋(銀座3丁目のグリルスイス)でカツライスを頼んだとき、ふと“カレーをかけてみてくれよ”と頼んだというようなことは……などと空想して楽しむ。

 午後になってやっと調子が入り、世界文化社原稿、あっちに手を入れこっちにと、ほとんど前日の原稿を書き換える形になって22枚、5時15分に書き上げて、メール。メールの最中にパソコンがフリーズしてちょっとあわてた。そのあと間をおかずにSFマガジン原稿にかかるが、これは資料をいろいろ参照したところでダウン。昼間にネットで本を注文した書店から、配送は何日の何時ころの時間帯がいいか、振込法は郵便振替と銀行振込のどちらがいいか、などと訊いてくる。丁寧なこと。

 6時50分、K子と渋谷駅で待ち合わせ、恵比寿へ。阿部能丸くん、O事務所K氏と恒例雑談会。恵比寿駅ビル上のハゲ天で。情報交換いろいろ。優香主演の『恋に唄えば』、前回“当たるとは思えない”と話し合ったのだが、果然、まったく入っていないという話(一館平均一日四、五人という噂も……)。ああいう映画が悪いわけではないのだが、こないだ話したように、何でもアリ、のバラエティ映画は国民がハイになっていないと受け入れられない作品。作る時期をあやまった映画であろう。

 K子は相変わらず、初めての席だろうとなんだろうとマイペースで話をひっかき回す。進めている話を横からひったくって完全否定したりする。頭を抱える。抱えるくらいなら連れてこなければいいのだが。今年中に、今度は直でK氏とちょっと打ち合わせをしよう、と思う。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa