3日
水曜日
ひとづまの正体はプラズマだった!
まあ、道理でよく放電してたわ、あの奥さん。朝、やはり眠い。が、無理して7時半にいつも通り起きる。朝食、サーモンとチーズサンド。腹にもたれる。果物、小ぶりのブラッドオレンジ。さわやかでマイルドな酸味が寝ぼけ頭に気持いい。K子は今自分の仕事場を整理していて、不要なものを全部ナンビョーさんの家に送りつけている(ひどい)が、整理モードが止まらなくなったらしく、居間とキッチンの近辺をとにかくザッザと片づけている。自分でも買った覚えのないものが続々出てくるのが面白い。
加藤礼次朗から電話で、飛騨の福来出版というところからイラストの以来を受けたが、何かトンデモっぽくて、大丈夫だろうか? と質問が来た。福来出版とは懐かしい名で、以前飛騨高山で講演したとき、帰りの電車を待つあいだオミヤゲ屋に行ったらそこの本がたくさんあり、帰京の道のつれづれにと数冊買い求めたことがある。山本健造という人が代表だが、この人が念写で有名な福来友吉博士の理論を証明してその名誉を回復した、と称する『六次元弁証法』は、“アメリカの大学”(どこだかプロフィールにも書いてない)に“ガリレオ以来の世界観の革命”と認められ、哲学の博士号を授与されたとあり、これを使えば病気も治るのだそうな。哲学で病気が治ると主張するのが実にいい。トンデモには違いないが、内容と金払いは別物であり、編プロ通しでの依頼ならまあ、OKなのではないか、と返事をしておく。
http://www4.ocn.ne.jp/~fukurai/
メール、廣済堂Iくんに出していた単行本(連載をまとめたもの)の企画、通ったとの報告。今年は単行本刊行、極めて順調である。1時までかかって、『男の部屋』原稿を片づけ、メール。周囲に資料の山が出来る。これをすぐ取り片付ければいいのだが、書き終えるとしばらくはそういうことをするテンションも残っておらず、テンションがあがったときには次の仕事に取りかからねばならず、その資料がまた書庫から運び出される。こうして私の仕事机の周りには本の堆積がバージェス頁岩のように連なることになるのである。その後、長々と出し遅れていたと学会の会誌バックナンバーの残りを事務局の眠田さんのところへ、それからなをきから借りていたLDボックスを中野の仕事場へ、それぞれ宅急便で送る。
空は薄曇りだがいい天気。南青山近辺に足を延ばし、昼はインド料理『ゴングル』のランチを食べる。マトンカレー、かなり辛いがおいしい。紀ノ国屋で買い物。ここに来るたび思うのだが、店は素晴らしくおしゃれなのに、店員の女の子たちにどうしてこうアカ抜けない子ばかりが揃っているのか。特にレジ係。今日び、そこらを歩いている女の子を無作為に拉致して並べても、平均値はここより高いと思うのである。創業者の家にそういう女の子を雇うべしという家訓でもあるのか。一人だけ、図抜けて不良っぽいおしゃれをしている子がいて(青いカラーコンタクトなどしたりしている)、選んでいるわけではないが、そこの子の列につい、並んでしまう。目立つところに人間、引きつけられるのである。
帰宅して、原稿書こうと思ったがランチが案外胃に重く、横になって休むうちに、だらだらと時間が過ぎる。全身倦怠。こういう日はマッサージ、と、新宿へ出て、サウナで汗を流し、マッサージしてもらう。こないだと同じ女性整体師のMさん。例により独特のセンスの会話。“特許とろうと思ってるんですよー”と言いだし、“寝ころんで本読むと、ページめくるのがめんどくさいでしょう。あれをですねえ、巻物みたいにして、小型モーターでどんどん巻き取っていく仕掛にすれば、読むのが楽じゃないですかー”などとマジかシャレかわからない口調で言う。“今は携帯みたいな液晶画面でみんな本を読むよ”と言ったら“あ、そうかあ! じゃあ、液晶で巻物作るといいですね”などと、頭が混乱するような返事。
帰宅して、料理にかかる。暑くて上着を一枚脱ぎ、窓を開け放す。新タマネギとスズキの蒸しもの、鶏モツ煮、しらすご飯のわっぱ。新タマネギはやわらかく、甘みがあって淡泊なスズキとよくあう。DVDで『レインボーマン』おたふく会編。すさまじい低予算にも関わらず画面はいちいち印象的で、有川貞昌、よくこの予算でこれだけ特撮を入れられたなぁと感服する。ストーリィもこんなもの子供に見せていたのかとあきれるもの。『未来世紀ブラジル』に影響を与えた(?)おたふく会のイヤさは言うまでもなく、山奥に隠れすむ南朝の子孫の村、なんてシュールな設定が突如出てきたり、ヤマトタケシが心を通わせていた聾唖の少女が実は彼をねらう怪人だったとか、必ず戦いの中で罪もない一般人が悲惨な死をとげるとか、もう救いようのないエピソードが満載で、あらためて70年代初期のヒーローものの背負っている根本的な暗さ(『帰ってきたウルトラマン』、『シルバー仮面』、『レッドバロン』等々)を想う。平田昭彦や塩沢ときはレギュラーだからまだいいが、ヘロデニア三世役の江見俊太郎、なんでこんな番組に?
K子の話によると、『くりくり』の絵里さんに突然世界文化振興会から賞をあげるという報せがあって、こわがっているそうだ。加藤礼次朗といい、何か知人にそういうところから声がかかる日である。しかし考えてみると、聞いただけでは『東京文化研究所』というのもそのテの団体だと思われるかも。資料ビデオ見て、おとついの残りのアヒルなど齧りつつ酒を飲む。缶ビール大(キリン)一本、『百年の孤独』ソーダ割を三バイ。1時に布団にもぐりこむ。酔ってぐずぐずと寝ている女房に文句言ったりなんだり。楽しい。