裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

23日

土曜日

ハッカーの美少女

 そう、御両親がなくなって、家が零落して、荒らしにまで落ちぶれて。可哀想に。朝6時半にうわっ、と恐ろしい夢を見て目がさめる。いつまでつけても終わらない日記をつけている夢。昨日はなにしろたくさんのことがあったので、これを日記につけるのは大変だなあ、と思っていたのだが、それがストレートに夢に出た。自分の単純さにやや、呆れる。朝食はチリコンカンのレトルト、果物はイチゴ。とよのか苺だが冷蔵庫にしばらく入れっぱなしにしていたら、何か間の抜けた味になってしまった。

 ワイドショーで何とかいうコメンテーターが、“あちらの雑誌の日本版で、日本の現在の政治をワイドショー受けばかりのサーカス政治と評し、これではいかんと言っていた”と発言していた。『ニューズウィーク日本版』のことだろうが、何を言っているのか、と驚く。“これではいかん”どころか、あの雑誌の特集は“ワイドショーのおかげで国民に政治への興味が生まれ、初めて日本に“政治をわかりやすい言葉で国民に伝える”ことの大事さが認識され、また人気先行の政治は、リーダーシップを持った政治家を生む、と、むしろ大いにこれを称揚しているのだ。この論調は以前から同じことを主張している私としてはヒザをうつ思いだったが、大衆を下に見ていたい知識人連中には不興をかう説だろうし、大衆受けする政治、という記事なら否定に決まっている、という先入観で見てしまうのであろう。しかし、ロクに内容を読みもしないで、見出しの語感だけでまったく反対のことを言ってしまう人物がコメンテーターをしている番組というのも、情けないと思う。

 日記つけはじめたが、さすがに膨大になり、ヒーヒー言いながらつける。それでも日記をつける作業というのは面白くて仕方ない。中学時代から日記は間欠的につけているが、たいてい、何か書くことのやたら多かった日でザセツしている。結婚当初もずっとつけて、これは案外長く続いたが、二年目くらいから加速度がつくように仕事が忙しくなってきて、書き下ろしを始めるにいたってとうとう中断した。それから数年、日記は中断していたが、自分の仕事の範囲がどんどん広がり、売れてきた時期であったから、つけていればさぞ面白いものになっただろうと思うと残念である。そんなトビトビの日記でも読み返すと面白いし、いろいろ参考になるのは確かである。この日記はもう3年目だが、その以前から官能倶楽部のパティオに、日記代わりの書き込みを行っていたから、だいたい5年くらいはこれで続けている勘定になる。やはり読み手がいるというのが大きいな、これは。禁煙するときは周囲に吹聴しろという、アノ効果だろうか。

 母からカレーを送ってきた。さっそく昼はそれですます。仕事、煮詰まってきたので、未見のAVの整理などでウサを晴らそうとするがこれもあまり熱中できず、仕方なく外出。昨日行ったばかりの神保町で、城南古書会の即売展。城南はホコリっぽいばかりであまり濃くないからねえ、などと昨日、鶴岡とも話し合っていたのだが、まあのぞくだけのぞいてみようと思って出かけた。結果は正解で、B級実用書や研究書などの脳天気なものがかなり仕入れられて、しかも値段はいつもの半分くらい。カバンの重さがうれしい。それをかついで、会場を出る。教育会館並びにあるイタリア書籍専門の『イタリア書房』、昨日メシを食ったMさんの実家(奥さんの、だったか)だそうである。そう思うと何か急に身近に感じる。千鳥が淵近辺を九段の方へ歩く。空は曇天だが、桜はほぼ満開で、どこから見物に来たか、人の波が凄まじい。ひと休みしていたらお爺さんが話しかけてきて、えらい人だね、しかしやはり桜はここのでないとね、ここのは標準木だからね、と言った。不勉強で標準木という単語を知らなかったのでエエマアソウデスネエ、とごまかす。帰宅して調べたら、開花情報の基準になる木、とのことだった。

 買った本をパラパラ眺めながら休んでいたが、これではいかんと思い、パソコンの前に座って仕事にかかろう、と思ったとたんに電話。“眠くて眠くてさあ〜”と、永瀬唯氏から。眠くて人に電話をかけてくる人も珍しい。いろいろと雑談。と学会のこと、大学講師の職のこと、健康状態のことなど。共通の知人の著書の内容の貧しさについても、なんだかんだと。結局、最初に文筆業界に入ったときの状況で、周囲にいいブレーンがつくかつかぬかが決まる、という話。こうなると風に飛ばされる植物のタネみたいなもので、着地した場所の環境、という運に左右される。も少し向こうは話していたいようだったが、このままだと夜まで引っ張られそうだったので、途中で切る。

 6時、ひさしぶりに新宿でサウナとマッサージ。もっとも、疲れてはいるが体の具合はそう悪くもなし。整体の先生も肩こり以外は大いに調子よろしいと太鼓判を押してくれた。8時にすし処すがわらへ行き、K子と食事。サヨリ、ホウボウ、アナゴなど。旬だからと勧めてくれたトリ貝の生がうまい。あと、鯛やホウボウのアラの煮付けも。黒ビールと、フグのヒレ酒二ハイ。

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